『ビフォア・ミッドナイト』 まだまだ人生は続く(と期待したい)

 イーサン・ホークジュリー・デルピー主演の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』『ビフォア・サンセット』に続く第3作目。監督は、『スクール・オブ・ロック』『バーニー/みんなが愛した殺人者』なども撮っているリチャード・リンクレイター

リチャード・リンクレイター監督 『ビフォア・ミッドナイト』 シリーズ3作目の舞台はギリシャ。

 基本的なフォーマットは前2作と同じである。第1作目はウィーン、第2作目はパリ、今回はギリシャを舞台に、ふたりの男女が飽きもせずに語り合う様子を、長回しや移動撮影などでひたすら追い続ける。ただ前作からは9年、第1作目から数えれば18年の時間経過がある。その分、そこに映る主人公たちの姿も変ってくれば、語られる内容もかつてとは違ったものとなる。ロマンチックだった前2作から比べれば、かなり現実的な話だった。

 小説家のジェシーは三つの小説を書いているらしく、1作目が『this time』、2作目が『that time』と題されているらしい。第1作目『this time』は『ビフォア・サンライズ』の出来事を記したわけで、それがきっかけで9年後にセリーヌと再会することになった。2作目『that time』の小説はその再会のこと(つまり『ビフォア・サンセット』)を記したものだろう。そうだとすれば三作目の小説は、この映画『ビフォア・ミッドナイト』に描かれるようなことが書かれているものなのかもしれない。3作目の題名は長すぎて覚えられないと友人たちに文句を言われるような複雑な題名で(私も忘れた)、そこで描かれているのは主に“時について”だとジェシーは語っていた。だから、この『ビフォア・ミッドナイト』で描かれているのも、そうした“時について”のようなものなのかもしれない。ランチでの最後の話が象徴的で、ジェシーはそれを「過ぎ去る時のために」と乾杯をして場をまとめる。

 ※ 以下、ネタバレあり。

『ビフォア・ミッドナイト』 長回しのドライブシーン。子供たちの寝顔がかわいい。

 前作では、9年ぶりに再会したふたりの夕暮れまでの数時間を描いたわけだが、ジェシーがアメリカに戻ってしまったのか、飛行機の時間を逃してセリーヌとの時間を過ごしたのかは謎として残された。『ビフォア・ミッドナイト』はそれから9年後で、ふたりのその後が判明する。ジェシーとセリーヌとの間には双子の女の子が居て、結婚はしていなくともパートナーとして長い時間を過ごしてきたものらしい。
 リアシートに寝顔のかわいい娘たちを乗せて、家族4人でのドライブのシーンがある。15分くらいは続く長回しの間も、ジェシーとセリーヌはのべつ幕なししゃべりまくる。おしゃべりなのは相変わらずだが、ただ彼らが歳をとったように、話題はそれまでのロマンチックなものとはほど遠い日常的なあれこれだ。
 ふたりの関係性の変化は色々とあって、たとえばホテルまでの長い散策の場面。第1作目の似たような場面ではかなりの密着度だったわけだが、今回の映画では一度だけ手をつなぐ場面はあるが、すぐにそれを離してしまう。ただ、ふたりの関係は冷え切っているわけではない。会話は途切れることがないし、息も合っているのだけれど、さすがにもうベタベタする頃は過ぎたということだろう。それから、突然の出会いあるいは再会の緊張が解けない前2作とは違い、ふたりの間は狎れきった部分もあり、下ネタも多く、そうしたこともごく日常的なものになっているようだ。

 終盤ではふたりの間にけんかも巻き起こる。長年連れ添った分だけ色々と溜まったものもあり、過去の出来事を掘り返しては相手を責め、売り言葉に買い言葉で次第に収拾がつかなくなる。きっかけはジェシーの前妻との息子のことだが、要するに男と女の関係が生み出す問題であり、これは第1作目の映画でも「永遠に繰り返されるテーマだ」と宣言されていて、今回も簡単に決着とはいかないようだ。
 実はこのけんかだが、その前にはちょっとしたベッドシーンがある。セリーヌは胸をはだけ、ジェシーはズボンを脱いで、いよいよという状態だったのだが、そこへ突然の電話が来てけんかになってしまう。セリーヌはおっぱい丸出しでけんかを始めるものだから、ふたりにとってはそれなりに深刻な場面なのかもしれないけれど、それを傍から観ている側としては笑ってしまう。
 ジュリー・デルピーは身体を張って、深刻になりがちな場面を滑稽な味を付け加えている。前作からイーサン・ホークとともに脚本にも参加しているジュリー・デルピーだけに、意気込みというものも違うのだろう。加えておけば、ジュリー・デルピーは体つきも結構な貫禄が出ているようで、ここでも身体を張ってテーマである“時の流れ”を体現しているようにも見えなくもない。誤解のないようにさらに加えれば、相変わらずとても綺麗なのだけれど、第1作目あたりと比べればということである。
 ラストでは次作につながるようなものはなかった。出会いがあり、再会があって、今回その後のふたりを描いてしまったわけで、人生における重要なエピソードは網羅しているような気がしないでもない。チラシにも最終章などと記されてはいるけれど、ここまでやったのだし、せっかくだからまだまだ続編を観たいと思う。

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Date: 2014.01.26 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (1)

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パリに住む小説家の夫ジェシーと、環境運動家の妻セリーヌは、双子の娘たちと共にギリシャの海辺の街でバカンスを過ごしている。 一緒に夏休みを過ごしアメリカ・シカゴの前妻の元へ帰って行った息子ハンクの成長を案じ、シカゴへの引っ越しを提案するジェシーに反発するセリーヌ。 彼らは友人たちの計らいで子どもたちを預け、ホテルで久しぶりに2人だけの時間を過ごすことになったのだが…。 旅先でのラブ・ストーリー... >READ

2014.01.26

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