ベルトルッチの最新作『孤独な天使たち』と、初期3作品『殺し』『革命前夜』『ベルトルッチの分身』

孤独な天使たち スペシャル・エディション [DVD]


 ベルトルッチという名前はもちろん知っていたけれど、初めて観たベルトルッチの映画は『ラストエンペラー』『シェルタリング・スカイ』あたりだったし、『暗殺の森』みたいな誰が観ても傑作という作品を撮った“巨匠”というイメージばかりが大きかった。今回、初期の3作品を観ると、そんなイメージとはちょっと異なる印象。
 単に映画史に疎いというだけなのだが、初期のベルトルッチがこんなにヌーベルバーグ、特にゴダールに傾倒していたとは……。昨年公開された最新作の『孤独な天使たち』(先月DVDが発売)でもラストシーンは、トリュフォーの『大人は判ってくれない』にオマージュを捧げたようなシーンだったけれど、ベルトルッチがキャリアの初めからこんなにヌーベルバーグを意識していたとは知らなかった。

殺し [DVD]


 パゾリーニの原案による処女作『殺し』は、橋の下で遺体となって見付かった女を巡る物語。黒澤明の『羅生門』のように、様々な人の証言を並列的に描いていく。それらの登場人物がたまたま一同に会する夜の公園の場面では、手前に控える容疑者のひとりのアップから始まって、彼が眺める公園で離合集散する他の容疑者たちを遠景で描写していく。これらをワンカットの長回しで捉えていて、ベルトルッチの映像に対するこだわりが感じられる。

革命前夜 [DVD]


 『革命前夜』はとてもよかった。今回の初期3作品のなかでは一番好み。このDVDには特典映像としてベルトルッチ本人や、撮影のヴィットリオ・ストラーロ、音楽のエンニオ・モリコーネなどのインタビューもあり、興味深い話も多い。(*1)原作は『パルムの僧院』だとされているが、ベルトルッチがインタビューで語るところでは、単に登場人物の名前を借りただけだとか。
 主人公のファブリツィオは、ブルジョアだが革命を夢見る共産党員。多くの夢がそうであるように、この映画でも革命の夢は果たされず、元のブルジョアの世界へと戻っていくことになる。冒頭に婚約者の姿が教会内部の彫刻と重ね合わせて紹介されている。結局、ファブリツィオは革命が象徴する何かよりも、教会が象徴する堅固な世界を選ぶことになる。
 ファブリツィオは婚約者ではなく、叔母に惹かれているのだが、そんな禁断の恋は長くは続かない。ありがちな現実回帰的な展開よりも、禁断の恋に対し「時よ、止まれ」と叫びたくなるような瞬間が称揚されているところがいい。叔母と甥の恋が祝福されることはないだろうし、彼らが若い時もそれほど長くは続かない。そんなことはわかりきっているからこそ「ずっとこの瞬間にとどまっていたい」などと思いを馳せるわけで、ロマンチシズムが過ぎるきらいはあるが、そんな意味でとても若々しい魅力がある作品だと思う。
 “革命前夜”というタイトルは、革命を夢見るような心象のなかでしか生きられないというファブリツィオたちの姿を表現していて、禁断の恋に対し「ずっとこの瞬間にとどまっていたい」と願う心象ともマッチしている。恐らく、本当に革命が起きてしまったり、恋愛が成就して結婚という制度になることは望ましいことではないのだろう。
 『革命前夜』の本筋とはずれるのだが、最初のほうで主人公の友人が自殺する(この俳優は『殺し』にも容疑者役で出ていた人だと思う)。その友人がモリコーネの音楽に合わせて自転車で曲芸のようなものを披露する場面は、何度観てもいい場面だと思う。また、叔母役を演じたアドリアーナ・アスティはとても美しい。インタビューでベルトルッチはこの作品で彼女と恋に落ちたと語っているが、アドリアーナ・アスティの表情を捉えた場面はアップが多く、ベルトルッチの惚れ込み具合がよくわかる。(*2)

(*1) たとえばフェリーニとかアントニオーニなどのイタリア映画界のビッグ・ネームからの影響なんかについても語られている。

(*2) ウィキペディアなどには記されていないが、ベルトルッチはアドリアーナ・アスティと一時は結婚していたらしい。去年亡くなられた映画評論家の梅本洋一あるところにそんなことを書いていた。


ベルトルッチの分身 [DVD]


 『ベルトルッチの分身』は、昨年劇場で公開された初期3作のうちで最も目玉となる作品なのだと思う。というのは、この作品は今まで日本では公開されていなかったから。“巨匠”という名前が似合うベルトルッチというイメージだったが、この作品はもろにゴダール風で、ゴダールの映画の多くがよくわからないのと同じく、この作品もわからない部分も多い。
 “分身”がテーマとなるということで、鏡や影を使ってその分身を表現していくのだが、同時に主人公とその分身(演じるのは同一人物)が登場する場面もある。詳細な技術的側面は知らないが、画面を分割して撮影しているようで、中央で分割された見えない境界線のなかに主人公が消えてゆくという奇術のような場面があったりしてそれなりに楽しめる。
 それにしてもコッポラ『コッポラの胡蝶の夢』あたりではゴダールをかなり意識しているようだし、ゴダールという存在は映画界において大きいのだなあと改めて思う。一部の例外を除いてゴダール作品をまっとうに楽しめたことがない観客なのだけれど、もう一度観直してみようかなどとちょっと思う。
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Date: 2014.01.13 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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