『リヴ&イングマール ある愛の風景』 ベルイマン作品のDVD化を!

 題名の通り、リヴ・ウルマンイングマール・ベルイマンとの関係について語ったドキュメンタリー。監督のディーラージ・アコルカールは、リヴ・ウルマンの自伝を読んで感動し、自ら手紙を出してこの企画を実現させた。

『リヴ&イングマール ある愛の風景』

 他人の想い出などわざわざ映画にするほど価値があるとは思えないけれど、その想い出が世界的に重要な人物と密接な関わりがあるとなれば話は別だ。前々回に取り上げた『愛しのフリーダ』のフリーダ・ケリーの場合は、その重要人物とはビートルズだった。この『リヴ&イングマール ある愛の風景』のリヴ・ウルマンの場合は、それはイングマール・ベルイマンという映画監督だ。もしかすると一般的な知名度はビートルズほどではないかもしれないが、映画の世界ではベルイマンという名前はゆるぎない。
 『愛しのフリーダ』にしても、『リヴ&イングマール ある愛の風景』にしても、作品としての出来が際立っているとは思えない。インタビューを中心に構成されたオーソドックスなドキュメンタリーである。ただそんな出来とは別に、その取材対象そのもの(その間に特定の媒介者はいるが)への興味のほうが先に立つわけで、そうなると見逃すわけにはいかない。私にとってベルイマンはそんな対象だ。

『ある結婚の風景』は、リヴとベルイマンの関係が反映されている?

 『リヴ&イングマール ある愛の風景』では、たとえば撮影中の演出法とか、ベルイマン的な「神の沈黙」といったテーマなど、そうした彼の映画論に関して一切触れられない。アコルカール監督が意図したのは、あるいはリヴが関心を持っていたのは、偉大な映画監督としてのベルイマンではなく、リヴと愛し合ったイングマールというひとりの男との関係のほうなのだ。
 だからこの映画では、そんな偉大な監督のイメージとは異なる様子が垣間見られる。撮影中にリヴとカメラに向かってじゃれあうような姿もある。どちらかと言えば重く陰鬱な印象のある彼の作品群からは見えてこない愛嬌のある姿だ。また、けんかしたふたりがまるでキューブリック『シャイニング』みたいに、浴室の扉を挟んでいがみ合うエピソードも語られる。結局はベルイマンがぶち破った扉の穴からスリッパだけが浴室に入り込み、リヴと互いに笑いあって仲直りしたらしい。結末だけは微笑ましいが、実際にはなかなか過酷な状況で、『ある結婚の風景』の激しいけんかを想起させる。というよりも、リヴとの関係が先にモチーフとしてあったから、『ある結婚の風景』のような作品ができたのだろう。
 アコルカール監督はリヴのインタビューとベルイマン作品の一場面をコラージュしていく。リヴがベルイマンとのコンビで生み出した『仮面/ペルソナ』『狼の時刻』『恥』『沈黙の島』『叫びとささやき』『ある結婚の風景』『秋のソナタ』『サラバンド』といった作品が度々引用されるのだ。実際に彼らが結婚生活のなかで感じていたことが、映画に反映しているのだろう(あるいはそんなふうに編集されているのだろう)。
 たとえば『ある結婚の風景』は一番わかりやすい。『ある結婚の風景』は結婚生活の愛憎劇を描いたものだが、それには実際に一度は愛し合ったものの別れてしまったふたりの関係が透けて見える。その約30年後の続編であり遺作となった『サラバンド』に至っても、リヴとイングマールの関係は続いている。映画のなかでリヴ・ウルマンとエルランド・ヨセフソンが演じた役柄と同じように、親しい友人として大切な存在となっているのだ。そしてベルイマンの臨終には、リヴは『サラバンド』の台詞と同じように、何だか呼ばれた気がしてベルイマンのもとに駆けつけたのだという。今度は、ベルイマンが映画として創作したものが、現実でもくり返されることになったということだ。そのくらいふたりの関係は創作活動と密接に結びついていたということかもしれない。

 この映画の主な舞台はスウェーデンのフォール島である。もちろんフォール島はベルイマンの居住地であり、『フォール島の記録』などでも舞台になった場所だ(残念ながら観てないが)。島の風景を捉えた映像は美しい。砂浜から海を捉えたシーンでは雲間から陽光が射し、『冬の光』の一場面をイメージさせる。
 また、この映画では日本未公開の『沈黙の島』(原題は『情熱』)の映像なども登場する(観たことがないから推測だが)。マックス・フォン・シドーがリヴ・ウルマンに斧を振り上げる物騒な場面など、夫婦関係のいざこざが描かれているようだ。カラーの映像もスヴェン・ニクヴィストらしい色合いと思える。日本では観る機会がないのが何とも残念だ。『狼の時刻』『恥』はようやくDVDが出たが、まだまだ未発売の作品も多い。この際だから、ぜひともソフト化を期待したいものだ。

イングマール・ベルイマンの作品
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Date: 2013.12.19 Category: イングマール・ベルイマン Comments (0) Trackbacks (0)

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