クロエ・グレース・モレッツ主演のリメイク版 『キャリー』 やっぱり……

 スティーブン・キング原作で1976年にブライアン・デ・パルマが映画化した作品『キャリー』のリメイク。今回は『ボーイズ・ドント・クライ』のキンバリー・ピアースが監督で、主役のキャリーには『キック・アス』クロエ・グレース・モレッツ

クロエ・グレース・モレッツ主演のリメイク版 『キャリー』

 別段リメイクをオリジナルと比較しなくてもいいのかもしれないが、オリジナルの『キャリー』はとても好きな映画なので、どうしても比べてしまうのは仕方ない。というよりも今回のリメイク自体がかなりオリジナルの影響下にあるから、比べられるのは必然的かもしれない。たとえばキャリーが初潮の血に驚いてシャワー室から出てくるシーンではまったく同様の構図で撮られているし、ほとんど独自性を感じられないのだ。それでいておどろおどろしい感じは失われているし、ラストの惨劇はCGの進歩のために多少大掛かりにはなっているが、全体的に新味に欠ける。だからなぜわざわざリメイクを製作したのか首を傾げざるを得ない。同じ内容をヘタに撮るというのでは意味がないような……。

 オリジナルと明確な違いは、当たり前だけれど、役者が違うところ。オリジナルに登場した若者たちは結構な出世をした。作品が多くの観客に支持されたということだろうし、彼ら(彼女ら)が演じた役も魅力的だった。シシー・スペイセクはその後アカデミー主演女優賞も獲得したし、ジョン・トラボルタは紆余曲折はあったが今もなお第一線で活躍中だ。ナンシー・アレンはデ・パルマ夫人になったし、最後まで生き残るスーを演じたエイミー・アーヴィングはスピルバーグと結婚した。ともに別れてしまったけれど、これだってある意味出世だろう。
 今回のバージョンでは、それぞれのキャラクターが魅力的とも思えなかった。トミー役はちょっと子どもっぽい印象だったし、クリス役も憎たらしいだけだった(オリジナルのナンシー・アレンはエロかったけれど)。母親役のジュリアン・ムーアまずまずだと思うが、どちらかと言えばやはりオリジナルのパイパー・ローリーが強烈だと思う。
 そして、キャリー役のクロエ・グレース・モレッツはちょっと健康的すぎるし、いじめられっ子にしては可愛らしすぎる。シシー・スペイセクは痩せぎすでそばかすだらけの顔がいかにもそれらしかった。そのキャリーがプロムで見違えるようになるというのがミソだったわけだが、クロエ版ではドレスで巻き髪にしたキャリーはキャバ嬢みたいで初々しさに欠ける。惨劇のあとで血だらけのキャリーは、クロエの肩が張っているから女子プロレスラーみたいにも見えなくもない。いかんせんミスキャストだった気がするが、多分『キック・アス』の続編では適役のヒット・ガールとして再び楽しませてくれるんじゃないだろうか。

リメイク版『キャリー』 豚の血を浴びせられて血だらけのキャリー

 監督のキンバリー・ピアースは女性であり、『ボーイズ・ドント・クライ』では性同一性障害の女性(見た目は男性)を描いていた。今回の『キャリー』も冒頭は出産シーンが追加され、母と娘の女同士の関係が強調されるのかと思えば、それも中途半端に終わった気がする。ただ女の子たちの関係がわかりやすくなってはいる。キャリー対いじめっ子の関係だけではなく、いじめた側もさらにキャリーに恨みを抱く者と、改悛して罪を償おうとする者の違いが明確になっている。ラストでは、改悛したスー(演じたガブリエラ・ワイルドは、スタイルが抜群で顔も可愛らしい)はすっかり立ち直ってしまう。この能天気な展開がオリジナルと明らかに違う点だろうか。オリジナルのラストみたいな“びっくり”がなかったというのも残念。もちろん同じことをやっても敵わないからだろう。オリジナルの“びっくり”は、何度観ても震え上がってしまうくらいだし。
 デ・パルマの最新作『パッション』は分割スクリーンなどもあって楽しんだのだが、それほどいい出来だとは思えなかった。というのは過去の作品のセルフパロディみたいに感じられるところが多かったからだが、それでも後半の夢なのか現実なのかあやふやになっていくあたりは魅せられた。やっぱり何だかんだ言っても「デ・パルマはいいなあ」と思い直したような今回のリメイクでした。

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 ↑ この特別編は監督やスタッフ・役者のインタビューなどが満載。デ・パルマは「おそらく『キャリー』ほど、僕が映像の概念に時間を割いた作品はないだろう」と振り返っている。ほかにも分割スクリーンについてとか、ラストでなぜ石の雨が降ってくるのかなどについても語られている。
 今回のリメイク版『キャリー』でも石の雨で家が潰されることになっているのだが、その伏線となるはずの幼少期のエピソードがないからちょっと意味不明とも言える。
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Date: 2013.11.10 Category: 外国映画 Comments (2) Trackbacks (0)

この記事へのコメント:

ブリ

Date2014.03.26 (水) 20:17:11

ですよねー。やはりデ・パルマ版ですよ!
オリジナル独特の「哀しさ」が微塵も感じられなかったし。クロエちゃんとジュリアン・ムーアの為にあるような作品でした。
ジュリアンは狂信的なママになりきってたけどパイパー・ローリーには叶わないでしょう(すぐにトランス状態になるわ。笑いながら包丁持って階段降りるわ)。

Nick

Date2014.03.27 (木) 23:28:06

オリジナル独特の「哀しさ」は、やっぱりシシー・スペイセクの存在でしょうか。クロエ版はあまりに健康的でちょっと違和感がありました。

パイパー・ローリーが階段を降りてくるところ、よかったですね。
笑いながら十字を切ったりして、すごく楽しそうにすら見える。そのあとキリストみたいに磔にされるわけですが、それでも恍惚としているというのが……。


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