福士蒼汰主演 『江ノ島プリズム』 ちょっとチープでちょっと切ないタイムトラベル

 福士蒼汰を主役に据えたアイドル映画である。(*1)妙に彼の裸が登場するのもファンサービスなのは明らかだし、フィニイ・アプローチという名目でシャンプーをさせたりするのも単にシャワーシーンを入れたかったのだろう。そういう意味でアイドル主演の青春映画の側面もあるのだけれど、タイムトラベルものとして楽しい映画だ。
 脚本は小林弘利と吉田康弘。監督は脚本も兼ねている『キトキト!』吉田康弘。その他の出演者は野村周平、本田翼、未来穂香など。

『江ノ島プリズム』 三人の幼なじみ。左から野村周平、福士蒼汰、本田翼。


 修太と朔とミチルは、幼なじみでいつも一緒だった。身体が弱い朔が心臓発作で亡くなるまでは……。
 その2年後、修太(福士蒼汰)は朔の葬式に行き、形見分けとしてタイムトラベラーになるためのおもちゃの時計をもらう。修太は冗談半分でその時計をつけて過去へのタイムトラベルを願うと、そこには2年前に死んだはずの朔(野村周平)の姿があった。そして、その日は朔が心臓発作で亡くなる前日だった。

 タイムトラベルものが人気なことの理由のひとつは、誰でも一つや二つの後悔を抱えているからだろう。この映画でも、修太は朔の死を悔やんでいる。2年前、留学するために日本を離れることになるミチル(本田翼)からの手紙を朔へ渡したこと、たまたま朔の自転車を借りてしまったこと、この2点が朔の死を導いたと修太は感じているのだ。朔はミチルを見送るために無理をして駅まで走り、心臓発作を起こしたからだ。修太は自分が手紙を届けなければ、あるいは自転車を借りたりしなければ、朔は生きていたのではないか、そんな後悔を拭い去ることができずにいた。だからタイムトラベラーになったチャンスを活かし、過去を変え、朔を救うために奔走する。


 ※ 以下、ネタバレもあり。

『江ノ島プリズム』 右がタイム・プリズナーとなった女学生を演じた未来穂香。

 『江ノ島プリズム』は全体的には『時をかける少女』からの影響が大きい。まだ恋愛からはほど遠い3人の関係は筒井康隆の原作に似ているし、ミチルが世話焼きで母性的な存在なのも原作を意識しているのかもしれない。また、『江ノ島プリズム』がアイドル映画であるのは、原田知世というアイドルを生んだ大林宣彦版の映画(1983年)を受け継いでいるとも言えるし、自転車の故障が重要な役割を果たすのは細田守版のアニメ(2006年)を感じさせる。そのほかにも様々なタイムトラベルものの作品への目配せが楽しませてくれる(個人的には『ふりだしに戻る』のジャック・フィニイへの言及にくすぐられた)。

 タイムトラベルの瞬間は、このジャンルの映画では見せ場とも言える。たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では改造したデロリアンがその役目を果たしたし、アニメ版『時をかける少女』では、少女はかけるというよりも、空を跳び頭から転げ落ちることで時空を跳び越えることになる。この映画ではタイムトラベルのための装置はおもちゃの時計なのだが、それは必ず江ノ電のなかで使用され、江ノ電がトンネル入り、そこから出ることで時間を移行するという設定になっている。
 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な描写にもあるように、トンネルの向こう側は別世界というイメージは一般的に共有されているだろう。この映画でも、江ノ電でトンネルを抜けることが時間をさかのぼる装置の役目を果たしている。おもちゃの時計と同様にかなり子供っぽくてチープな装置だが、湘南を舞台にした作品だけにそれなりの必然性もあるし、予算が少なくてもちょっとした工夫でSFをやってしまおうという心意気はいいと思う。ちなみに福士蒼汰は“仮面ライダー”シリーズの出身らしいが、「仮面ライダー電王」では電車型のタイムマシンが登場するらしいから、そのあたりのパロディでもあるのかもしれない(時計の構え方は仮面ライダーの変身ポーズみたいだし)。

 さて物語の主眼は、朔を救うことができるかどうかにある。修太は何度も時間をループして過去を変えようとする(だからこの映画はループものでもある)。しかし過去を変えることには危険も伴う。加えてこの映画が『時をかける少女』の影響下にあることからも、結末に関してはある程度予想がつくかもしれない。その結末があまり愉快なものでないとしても、それは抱えていた後悔を拭い去るための決断だ。それによって別の後悔が生じたとしても、自ら選び取った分だけの納得があるのかもしれない。

(*1) 映画館の観客には、福士ファンと思わしき女性以外にも、中学・高校くらいの男子グループも見られた。TVドラマやCMなど活躍している本田翼ファンや、時に囚われた古風な女学生を演じた未来穂香ファンにもアピールするアイドル映画なのだろう。

福士蒼汰の作品など

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Date: 2013.08.13 Category: 日本映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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