ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 『少年と自転車』

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 冒頭の逃走シーンからも『ロゼッタ』を思い起こさせる。その暴れっぷりとかあきらめが悪そうなところも似ている。『ロゼッタ』では彼女が歩き回るシーンが重要だった。『少年と自転車』では自転車のシーンが、少年の行動の中心となり様々な感情を表現している。消えた自転車を取り戻した少年(シリル)は、それまでの駄々のこね様とうって変わって楽しそうに庭を走り回る。里親になったサマンサと自転車で並走するシーンは、明るい陽光とともに幸福感に満ちている。たとえば『晩春』でも、自転車のシーンは楽天的で明るい光に満ちていた。ふたりが並んで自転車を走らすという構図は、幸せの条件の何かしらを含んでいるのかもしれない。
 それから『少年と自転車』では、チラシにもあるように、覗き見のシーンが登場する。これは学校(?)から逃げ出すために、先生の様子を覗き見ているシーンだ。シリルは父親を探しにいくために、逃げ出す必要があったのだ。『ロゼッタ』でも覗き見は印象的に使われている。『息子のまなざし』でも、主人公が自らの敵(息子を殺した犯人)に出会うシーンとして覗き見があった。ダルデンヌ監督の映画では、覗き見は物語を駆動させるきっかけになっているようだ。

 シリルがロゼッタの男の子版だとしても、異なる部分も多い。ロゼッタは友達を裏切ってしまうが、シリルは裏切られる側に立たされる。シリルは保護者であるはずの父親からは見放され、大事な自転車は売り払われる。そんな父の代わりなのか、薬の売人が近づいてくると、シリルは彼を信じて罪を犯す。結局は売人に騙されたことを知って、改めて父親の元に赴いても、さらに拒絶されてしまう。騙され裏切られて戻るところのないシリルも、ようやくいつもそばに居てくれた里親サマンサの存在の大切さに気づくのだ。
 ロゼッタは現実に直面していたから、最後まで逡巡しつつも裏切ることを選んだ。常に歩き回っていたロゼッタが街角でもの思いに耽るのも、そんな葛藤があったからだ。そして犠牲を払っての選択が意味をなさなかったからこそ、最後のドラマが生まれた。
 少年はまだ現実を知らない。それはもちろん年齢によるものだろう。だがシリルは裏切られることで現実を知ることになる。そして現実の厳しさを学ぶとともに、希望の光をも見出すのだ。

 『ロゼッタ』では見守ってくれる誰かが存在しなかった。カメラは常にロゼッタのそばを離れなかったから、観客こそがロゼッタを見守る存在だったと言えるかもしれない。『少年と自転車』では、見守ってくれる誰かが映画のなかにサマンサとして登場する。だからカメラはシリルの姿を離れ、サマンサの心配そうな様子や苦悩をも描く。
 ラストでシリルは自分の犯した罪の報復を受ける。朦朧としながらもサマンサへ向けて自転車を走らせる姿は力強いものがあった。初めて使われた音楽もシリルのために奏でられる。「音楽があれば、彼の苦しみを少し和らげることができるのではないかと思ったんです」と監督は語る。これまで社会の底辺の人間を描いてきたからか、どことなく暗い印象が強かったダルデンヌ映画だが、まだ年若い少年シリルには希望を与えたかったのだろう。

http://eigato.com/?p=8247
(↑ 上記参照しました。)

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Date: 2012.04.07 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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