ありふれた難病もの?『わたしたちの宣戦布告』と、その他新作DVDレヴュー

 TSUTAYAでは新作はまとめて借りると安い。ということで、TSUTAYAの新作の棚からセレクトしたものをまとめてレビュー。

『ダイ・ハード/ラスト・デイ』
 観る前から酷そうな予感。でも借りてしまう。やはり予想に違わぬ出来といったところか。

『言の葉の庭』
 新海誠監督作品。46分の中編。雨の場面の写実性がすごい。雨に濡れたウッドデッキとか、緑に囲まれた湖面の様子はアニメとは思えないほどリアル。それに比べ物語があまりに妄想的。

『クラウド・アトラス』
 突っ込みどころも多いが3時間充分に楽しんだ。1849年から2144年までの6つ時代のエピソードが同時平行的に描かれる。手記・音楽・映画・宗教が各エピソードをつないでいるが、輪廻があまり重要な役割を果たしてない気もする。わざわざ大物俳優たちに変装させて何役もやらせたのに……。


『わたしたちの宣戦布告』 ロメオとジュリエットは恋に落ちる

『わたしたちの宣戦布告』

 映画が観終わってから知ったことだが、ジュリエット役のヴァレリー・ドンゼッリこそこの映画の監督である。そして監督の現実のパートナーはロメオ役のジェレミー・エルカイムであり、最後に登場するのはふたりの本当の子どもであり、難病というのも事実のようだ。この映画は現実をもとにしてつくられているが、ドキュメンタリー的な手法はとられていない。自分たちの悲劇を追体験させるわけではなく、もっと客観的に映画として観客に提示することが意識されている。

 物語は、ロメオとジュリエットというカップルが出会い、アダムという息子が生まれ、そのアダムに難病が見つかるということに尽きる。まだ若い夫婦はその病気に対して、親など家族の助けも借りながら戦っていくことになる。どこにでも転がっていそうな難病ものの映画なのだ。
 ふたりは悲劇の主人公だが同情を買おうとはしていない。あくまで前向きである。ナレーションは状況を説明することはあっても、そのときの感情には触れず、やや客観的に事態を突き放して見ている。そして、ふたりがナレーションを交互に請け負うことで、ふたりの物語だということも伝わってくる。この映画はラブストーリーでもある。

 もう一度言うが、映画の題材としてはありふれている。もちろん現実にそんなことが自分に降りかかってきたとしたら、到底“ありふれている”などとは言えないような状況だ。主演を務めたふたりにもそれは同様だろう。素晴らしいのはそんな事態にもめげずにそれを映画にしたことではなく、その体験をありふれた難病ものにしなかったところだ。こうした題材がお涙頂戴的な退屈な作品になりがちなのは、わざわざ例を挙げるまでもないのではないだろう。

 芸術表現というものは“内容”と“形式”に分けて考えることができる。(*1)これは「何を伝えるか」と「いかに伝えるか」と言い換えることもできる。この映画は“内容”においてはありふれているけれど、「いかに伝えるか」という“形式”の部分で優れている。この映画はありふれた物語をうまく見せる点で成功しているのだ。
 『わたしたちの宣戦布告』では、音楽は主役のひとりだと言ってもいい。ミュージカルのようにふたりが歌う場面もあるが、音楽が台詞以上に“内容”を伝える役割を果たしているのだ。たとえばふたりの出会いはどこかのクラブでのパンクミュージックをバックに描かれるし、アダムに脳腫瘍と判明した場面では、ビバルディの「四季」が劇的な効果を生んでいる。
 ふたりはパンクを聴いて弾けるような若者であるが、何の因果かふたりの間にできた息子がごくまれにしかない難病を抱えるという悲劇の主人公でもある。そうしたことを説明的ではなく、情感を伴う音楽でもって感じさせるのだ。
 これらの場面では音楽が高まりより台詞も消える。しかし凡庸な言葉を連ねるよりも、音楽がより多くを伝えてくれる。出会いの場面ではシェクスピア劇の主人公たちに重ねた冗談から始まり、ふたりでクラブを抜け出し、何度もデートを重ね、やがて子どもが生まれるまでテンポよい編集で見せてしまう。また脳腫瘍が判明した場面では、その悲劇がふたりの周囲の家族たちに次々に伝えられ、驚きと悲しみが広がっていく場面を、やや過剰とも感じられるクラシックに合わせてうまく表現している。こんな場面を普通に描こうとすれば、よほどうまい役者が演じるなら別だが、妙に空々しく思えることも多いはず。しかし、この映画ではそうしたキモとなる重要な場面を、音楽と編集によってすんなりとそれを受け容れさせてしまうのだ。そして最後は厳しい現実に涙するよりも、何かに宣戦布告するような前向きな気持ちになるんじゃないだろうか。
 ちょっと褒めすぎたが、目立たない作品だが拾い物だと思う。ヴァレリー・ドンゼッリはこれが長編第2作目だというが、今後も楽しみな監督だ。

(*1) 「すべて芸術は絶えず音楽の状態に憧れる。」という有名な言葉は、音楽だけが“内容”と“形式”が一致しているということらしい。なるほど含蓄がある。

わたしたちの宣戦布告 [DVD]


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Date: 2013.07.18 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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