『さらば復讐の狼たちよ』 チアン・ウェン監督・主演の中国歴代1位のヒット作

 チアン・ウェン監督・脚本の第4作目。出演はチアン・ウェン、チョウ・ユンファグォ・ヨウなど。中国では『レッド・クリフ』を超え、歴代1位の興行収入を稼ぎ出した作品。先月DVDが発売になった。

『さらば復讐の狼たちよ』 邦題やポスターの印象と異なりユーモアの要素が多い

 チョウ・ユンファが主演だし、邦題も香港ノワールあたりを思わせるが、『男たちの挽歌』などをイメージするとちょっと調子が狂うかもしれない。『さらば復讐の狼たちよ』は男くさい映画ではあるが、香港ノワールとはほど遠く、ユーモアの要素が多分に盛り込まれた作品だからだ。その辺のイメージの違いなのか、日本での評判はあまり芳しくないようだ。チョウ・ユンファは街のボスとその替え玉の2役で楽しませてくれるが、やはりこの映画は監督も務めるチアン・ウェンの作品と言えるかもしれない。


 時代は1920年、馬に引かれた列車が山賊たちによって襲撃される。赴任先に向かっていた県知事マーは、山賊たちの頭領“アバタのチャン”に脅され、もうけ話を持ちかける。マーは県知事になれば荒稼ぎができるとチャンをそそのかすのだ(もともとマーは県知事の地位を金で買ったのだった)。偽県知事となったチャンとその書記として金策を練るマーは、ホアンという独裁者が牛耳る鵝城の街へと乗り込んでいく。


 “アバタのチャン”を演じるのが、『紅いコーリャン』(チャン・イーモウ監督)以来、中国を代表するスターであるチアン・ウェン。独裁者ホアンには香港映画界のスター、チョウ・ユンファ。対立する二人の間で生き残りを図るマーには、『活きる』(チャン・イーモウ監督)のグォ・ヨウ
 山賊チャンのやっていることは略奪だが、奪った金を貧しい民衆に配る“義の人”でもあり、県知事マーの目的は金もうけだし、それに対立するホアンは独裁者という構図。「正義vs悪」という単純な構図ではないようだ。ストーリーも混沌としていて、対立し合っていても正々堂々と闘うことはなく、策を弄し、騙し合い、一時は相手方に取り入ってみたりと複雑な様相を呈する。

 『さらば復讐の狼たちよ』は中国映画ということもあり、中国文化に関してほとんど知らない私には意味不明のところも多い。例えば、冒頭に登場する“馬列車”とは、その音韻がマルクス・レーニン主義を示しているのだとか。ほかにも中国社会を風刺しているものと推測される場面も多く、中国ではそこが受けたのだとか。(*1)
 『男たちの挽歌』のようなカッコいいアクションはないが、主役3人の騙し合いが楽しい。二大スターの間に入ってあたふたしているようで、意外と頭のキレるマーを演じたグォ・ヨウが笑わせる。

『さらば復讐の狼たちよ』 多彩なキャラクターが登場するが、なかでもグォ・ヨウ演じるマーは秀逸

 西部劇を思わせる襲撃シーンなど、光が溢れる撮影がいい。(*2)また、チアン・ウェンの過去の作品とは異なり、ハリウッド的な素早い編集もあり飽きさせない。CGの場面はかなり安っぽいが、それもこの映画のユーモアへのアプローチとも言えるかもしれない。これはシリアスドラマというより、中国という国へのあてこすりを楽しんでほしいということなのだろう。
 チアン・ウェン監督作品の『太陽の少年』『鬼が来た!』はどちらもよかった(第3作『陽もまた昇る』は未見)。『鬼が来た!』は戦争が題材だし、初恋ものでもある『太陽の少年』においても、中国という国の状況は牢固として登場人物たちに影響をもたらしている。『鬼が来た!』は中国では上映禁止となったというし、中国では映画に対する検閲などが未だに厳しいのだろうか? 暗喩的な手法で国を風刺するのはやはりそういう国状があるのだろう。チアン・ウェンは監督として、まったく過去作とはタイプの異なる映画を作り上げ、しかも大ヒットさせてしまった。今後も気になる監督だ。

(*1) ラストではチャンが生き残るが、山賊の仲間たちは「楽しいけど一緒だと疲れる」と悪びれる様子もなく去っていく。独りとなったチャンの姿に中国社会の何らかの立場が象徴されていそうな気もするのだけれど……。

(*2) 撮影監督はチャオ・フェイ。公式ホームページのデータによれば、中国屈指の撮影監督だとか。フィルモグラフィを見ると、ティエン・チュアンチュアン、チャン・イーモウ、チェン・カイコーという中国の大物と組んでいるし、ウディ・アレン作品もある。
 私自身は最近のチャン・イーモウ作品からは遠ざかっているのだが、赤を基調にした画面が印象的だった『紅夢』はチャオ・フェイ撮影だったようだ。なるほど中国屈指というのもまんざら誇張でもないのかも。


チアン・ウェンの監督作品など
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Date: 2013.04.07 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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