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『私の20世紀』 嬉しい誤算

 『心と体と』などのイルディコー・エニェディの1989年の監督デビュー作。本作は第42回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞した。

イルディコー・エニェディ 『私の20世紀』 リリ(ドロタ・セグダ)とドーラ(ドロタ・セグダの二役)は生き別れになるのだが……。


 1880年のハンガリー・ブダペスト。ある女性が双子を授かる。リリ(ドロタ・セグダ)とドーラ(ドロタ・セグダの二役)と名付けられたふたりはやがて孤児となり、引き離されることになってしまう。そして、20年後の1900年、リリは革命家となり、ドラは詐欺師となってブダペストに再び現れることに……。

 モノクロ作品なのだが光の使い方がとてもうまい。冒頭は1880年のニュージャージーはメンロパークでの光のパレードの様子。エジソンが発明した白熱電球を宣伝するための見世物なのだが、木に花が咲くようにぼんやりとした光が闇のなかに浮かび上がる様子は幻想的。カラー作品で同じことをやってもこれほど印象的にはならなかっただろうと思わせるほど、モノクロの映像が映える作品だったと思う。
 タイトルは20世紀の歴史を振り返るものを想像させるのだが、「私の」とわざわざ断りを入れているだけにごく一般的な歴史などは描かれない。エジソンの電球から始まった本作は、そうした光をスクリーンに投影することで誕生することになった映画というものが念頭に置かれているようにも思える。つまりはイルディコー・エニェディ監督にとっての20世紀とは映画の世紀だったということなのだろう(映画誕生100周年は1995年だったけれど)。明確にそうした映画史を振り返ることはないのだが、初期のサイレント作品の引用がなされているし、『上海から来た女』(オーソン・ウェルズ監督)のミラーハウスのシーンをそっくり真似たりもしている。
 ただ本作がおもしろいのは映画史への目配せみたいな部分ではなく、ある意味ではデタラメな語り口だろうか。星空から語りかけてくる声とか、なぜか唐突にしゃべるチンパンジーが登場したり(単に監督が動物好きなんだろう)、ほとんど意味不明とも思える自由な展開がとても楽しいのだ。

『私の20世紀』 ドロタ・セグダがとても魅力的だった。ミラーハウスの場面は『上海から来た女』っぽい。

 本作ではリリとドラとさらにその母親役という三役を演じたドロタ・セグダがとても魅力的だった。男に色目を使う詐欺師のドラと、革命に燃える堅物のリリ。ふたりの心の声が響いてくるところもいいのだが、溜息とか「うふふ」としか表現できないような様々な音の表現がとてもかわいらしかった。
 私はイルディコー・エニェディ『心と体と』を昨年のベスト10を入れるほど気に入ったのだが、世間でそれほど評判になっていたとも思えなかった。それにも関わらず急に監督デビュー作『私の20世紀』が4Kレストア版となって登場したのは嬉しい誤算だった。それともどこかで誰かが評価していたのだろうか?
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Date: 2019.03.31 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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