『華氏119』 マイケル・ムーアの懸念するところ
『ボウリング・フォー・コロンバイン』『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』などのマイケル・ムーア監督の最新作。
タイトルはジョージ・W・ブッシュを扱った『華氏911』を意識したもの。「119」というのは、トランプ大統領が勝利したのが2016年11月9日だったから。

『華氏911』がブッシュ大統領の再選を阻止するための映画だったので、『華氏119』はトランプ大統領に「NOを突きつける作品」となるのだろうと予想していたのだけれど、トランプ大統領を直接叩く作品にはなっていなかった。
マイケル・ムーアはすでに『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』という作品を撮っているようで、この作品は日本未公開なので私は観ていないけれど、トランプ大統領が誕生する直前に民主党のヒラリーを応援しようというものだったらしい(だからこっちの作品のほうがトランプ叩きを意図していたのだろう)。結局、その意図もむなしくトランプ大統領が誕生したわけだけれど、一体なぜこんな事態になってしまったのかとマイケル・ムーアは問いかけることになる。
まずは選挙人制度というアメリカの選挙制度は、実際の得票数が少ないほうが大統領になってしまうことが多いことからしてもおかしいんじゃないかという点が指摘される。それから民主党のダメなところも糾弾される。民主党の候補者選びではヒラリーではなく、バーニー・サンダースのほうが優勢だったのにも関わらず、一部地域だけ勝ったヒラリーが大統領候補となってしまう。これによって、人によっては選挙そのものに対してやる気を失ってしまう場合もある。
日本で無党派と呼ばれる人が多いのは知っているけれど、アメリカでも選挙に対して無関心な人が多いらしい(ニュースでは支持者たちの熱狂的な姿しか見ないけれど)。今回の大統領選ではトランプが獲得したのが6300万票で、ヒラリーが6600万票なのに対し、投票しなかった人は1億人もいたというのだ。つまり、一部の極端な人たちによってアメリカが動かされてしまうことにもなるということだ。だからこそ投票しなかった人を動かそうというのが『華氏119』の意図するところということになる。
マイケル・ムーアの懸念は全面的にもっともだと思うし、後半の新しい変革の波の話は感動的でもあったのだけれど、今回の作品はちょっと強引に感じられるところもあった。トランプの声にヒトラーの映像を合わせる部分にもよく表れているけれど、映画は編集によってどんな意味内容を持たせることも可能になる。
スナイダー州知事のエピソードなどはマイケル・ムーアの日々の活動の一環としては意義あることだと思うけれど、無理やりトランプに結び付けている感がしなくもなかった(スナイダー州知事の引き起こした水質汚染は信じられないくらい酷いけれど)。ちょっと強引でも訴えるべきことだという判断だったのかもしれないし、現実に中間選挙では民主党の女性議員たちが躍進したとも聞くから、この作品は一定の役割は果たしたとも言えるのかもしれない。トランプ大統領再選の阻止とまで行くのかどうかはわからないけれど……。



タイトルはジョージ・W・ブッシュを扱った『華氏911』を意識したもの。「119」というのは、トランプ大統領が勝利したのが2016年11月9日だったから。

『華氏911』がブッシュ大統領の再選を阻止するための映画だったので、『華氏119』はトランプ大統領に「NOを突きつける作品」となるのだろうと予想していたのだけれど、トランプ大統領を直接叩く作品にはなっていなかった。
マイケル・ムーアはすでに『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』という作品を撮っているようで、この作品は日本未公開なので私は観ていないけれど、トランプ大統領が誕生する直前に民主党のヒラリーを応援しようというものだったらしい(だからこっちの作品のほうがトランプ叩きを意図していたのだろう)。結局、その意図もむなしくトランプ大統領が誕生したわけだけれど、一体なぜこんな事態になってしまったのかとマイケル・ムーアは問いかけることになる。
まずは選挙人制度というアメリカの選挙制度は、実際の得票数が少ないほうが大統領になってしまうことが多いことからしてもおかしいんじゃないかという点が指摘される。それから民主党のダメなところも糾弾される。民主党の候補者選びではヒラリーではなく、バーニー・サンダースのほうが優勢だったのにも関わらず、一部地域だけ勝ったヒラリーが大統領候補となってしまう。これによって、人によっては選挙そのものに対してやる気を失ってしまう場合もある。
日本で無党派と呼ばれる人が多いのは知っているけれど、アメリカでも選挙に対して無関心な人が多いらしい(ニュースでは支持者たちの熱狂的な姿しか見ないけれど)。今回の大統領選ではトランプが獲得したのが6300万票で、ヒラリーが6600万票なのに対し、投票しなかった人は1億人もいたというのだ。つまり、一部の極端な人たちによってアメリカが動かされてしまうことにもなるということだ。だからこそ投票しなかった人を動かそうというのが『華氏119』の意図するところということになる。
マイケル・ムーアの懸念は全面的にもっともだと思うし、後半の新しい変革の波の話は感動的でもあったのだけれど、今回の作品はちょっと強引に感じられるところもあった。トランプの声にヒトラーの映像を合わせる部分にもよく表れているけれど、映画は編集によってどんな意味内容を持たせることも可能になる。
スナイダー州知事のエピソードなどはマイケル・ムーアの日々の活動の一環としては意義あることだと思うけれど、無理やりトランプに結び付けている感がしなくもなかった(スナイダー州知事の引き起こした水質汚染は信じられないくらい酷いけれど)。ちょっと強引でも訴えるべきことだという判断だったのかもしれないし、現実に中間選挙では民主党の女性議員たちが躍進したとも聞くから、この作品は一定の役割は果たしたとも言えるのかもしれない。トランプ大統領再選の阻止とまで行くのかどうかはわからないけれど……。
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