『ヴェノム』 話せばわかる奴
“ヴェノム”というキャラはマーベル・コミックスのキャラクターだが、『マーベル・シネマティック・ユニバース』のシリーズとは別物らしくMCUを知らなくても楽しめる。

スパイダーマンの宿敵だというヴェノムというキャラの単独作品。
ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)はライフ財団についての噂を聞き、財団社長のドレイク(リズ・アーメッド)にインタビューを試みる。実はライフ財団は宇宙からやってきた生命体を利用して人体実験をしていたのだ。
この人体実験は、人間が宇宙で生きていくためにシンビオートと呼ばれる地球外生命体を体に取り入れ進化しなければならないという、かなり異常な考えに基づいている。実際には、宇宙からやってきたシンビオート自身が人間に寄生しなければ地球上では生きていけないわけで、彼らにとっても都合がいい。そして、エディはたまたまシンビオートに寄生されてしまうことに……。
『遊星からの物体X』とか『SF/ボディ・スナッチャー』のように、外側はそれまでと同じで中身は別物になるというわけでなく、寄生した人間のなかでもうひとつ別の意識が働いているという設定。『ザ・ホスト 美しき侵略者』あたりと似ていることからしてもちょっとコミカルになる要素があるわけで、『ヴェノム』にも意外と笑える部分もある。ただ、エディの体からちょっとだけ顔を出したヴェノムが、エディとしゃべっているあたりは『寄生獣』の新一とミギーともそっくりで既視感が著しい。
ヴェノムがエディを気に入ったのは、似た者同士だから。ヴェノムはシンビオートのなかでは負け犬だったらしい。エディも正義を気取るジャーナリストではあるけれど、近所の強盗はこっそりやり過ごすし、隣の部屋の騒音にも文句を言うことすらできない。それでもヴェノムと共生するようになってからは地球上では無敵の存在となり、エディ自身も気分がよくなり、ヴェノムのほうも居心地がよくなったらしい。
ヴェノムはあんな顔をしているけれど、「話せばわかる奴」というのが意外と言えば意外。悪なのか何なのかよくわからなかった。『寄生獣』のミギー曰く「私の仲間たちはただ食っているだけ」というわけで、別に悪意のようなものは感じられなかった。
ヴェノムが大暴れするあたりはそれなりに楽しめるけれど、盛り上がりには欠けたという印象。オマケ映像があったので一応最後まで席を立つことはなかったけれど、エンドロールがやけに長く感じた。
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