『デス・ウィッシュ』 ヴィジランテからグリム・リーパーへ
チャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』(マイケル・ウィナー監督)のリメイク。

強盗たちに愛する妻(エリザベス・シュー)を殺され、娘(カミラ・モローネ)も昏睡状態にされたポール・カージー(ブルース・ウィリス)は、頼りにならない警察の仕事に業を煮やし、自らの手で悪党を懲らしめることを決断する。
設定はオリジナルの『狼よさらば』(1974年)と同様だが、主人公の職業が建築技師から外科医に変更されていたり、SNSでの動画拡散など現代に合わせた改変もなされている。
きっかけとなる強盗事件の描写はオリジナル版のほうがえげつないし、リメイク版は弟のフランク(ヴィンセント・ドノフリオ)とのやり取りもあって、暗い話の割にはどこかちょっと微笑ましい感じもする。あまりに激辛にしすぎると受け入れられないという判断からか、かなりマイルドな味付けになっていて(イーライ・ロス監督だけに一部ゴア描写はあるけれど)、ブルース・ウィリスが活躍するヒーローものとして楽しめる作品となっていたと思う。

オリジナルは西部開拓民が持っていたような自警主義(ヴィジランティズム)が、現代においても必要なんじゃないか、そんな問題提起を意図していた部分もあるが、リメイク版ではあまりそうした側面は感じられない。自警主義を強く打ち出すことは銃社会を推進することになるわけで、銃社会への嫌悪感に対しての配慮が働いているかもしれない。
だからオリジナルのポール・カージーがアマチュア刑事(ヴィジランテ)と呼ばれていたのに対し、リメイク版のポールは死神(グリム・リーパー)と呼ばれている(SNSで拡散された動画でポールがフードを被っていたからだろう)。そして、自警主義というよりも私的な怨みを晴らす方向に展開することでカタルシスのある話になっている。ラストの秘密兵器が通販番組なんかでも売っているお薦めの品だというのも笑わせるところ。
ブルース・ウィリスのポール・カージーは、一気に街のヒーローに祭り上げられた動画を見てちょっと嬉しそうで、あまり悲壮感はない。銃など持ったことがないという設定なのに、初めて銃を構えるシーンがやけに決まってしまうのは、『ダイ・ハード』シリーズなんかで銃の扱いに慣れているブルース・ウィリスだから仕方ない。
タイトルの『デス・ウィッシュ』は「死の願望」を意味するのだと思われるが、オリジナル版のチャールズ・ブロンソンには自殺願望めいたものを感じさせる部分もあるけれど、リメイク版では昏睡状態だった娘も回復して「めでたし、めでたし」というスッキリしたラストだった。
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