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『グッバイ・ゴダール!』 ゴダールも妻から見ればただの男

 監督・脚本は『アーティスト』ミシェル・アザナヴィシウス
 原作は、ジャン=リュック・ゴダールの2番目の妻アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説。アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝と謳いつつも、この映画は彼女の目を通したゴダールが描かれていくことになる。

ミシェル・アザナヴィシウス 『グッバイ・ゴダール』 ゴダールを演じるルイ・ガレルと、アンヌ・ヴィアゼムスキー役のステイシー・マーティン。

 『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』などでヌーベルバーグの旗手なったジャン=リュック・ゴダール。ゴダールがアンヌ・ヴィアゼムスキーと結婚していたのは、商業映画とは別の方向性を模索していた時代。
 この時期、フランスでは5月革命などと呼ばれた出来事が起き、世界的にも反体制運動が盛り上がっていた。日本では学生運動が最後の盛り上がりを見せた時期として記憶されている。ゴダールはそんな時代のなかで商業映画など撮ってはいられないと考えたのか、政治的な作品へと移行していく。
 ただ、この作品はそうした事実をもとにしつつもコメディ作品に仕上がっている。ゴダール(ルイ・ガレル)は再三再四眼鏡を壊されるドタバタを演じることになるし、アンヌ(ステイシー・マーティン)はゴダールとヌードの必要性について論じながらまったく不必要なオールヌード姿を披露することになる。そんなわけでゴダールを知らなくてもそれなりに楽しめる作品となっていたと思う。もちろんゴダール作品に対するオマージュにも溢れているし、無声映画『裁かるるジャンヌ』にふたりの台詞を重ねたてみたりといった映像と音のコラージュもゴダールのそれを意識しているのだろう。

『グッバイ・ゴダール』 『勝手にしやがれ』っぽい? ステイシー・マーティンがとてもかわいらしくアンヌを演じる。

 ゴダールは「政治映画を撮る」のでなく「映画を政治的に撮る」のだと言っていたのだとか……。なかなか含意のありそうな言葉で映画評論家ならここから様々な論を組み立てることもできるのかもしれないのだけれど、凡人にとっては煙に巻かれたような気にもなる言葉でもある。本作でもゴダールは若者たちの集会で革命について訴えかけるけれど、その言葉は若者たちには通じてはいなかったようだ。道化のようにも見えるゴダールだが、本作に登場するゴダールはアンヌ・ヴィアゼムスキーが見たゴダールということになるからかもしれない。
 アンヌは哲学科の学生でもあり、ノーベル文学賞を受賞したフランソワ・モーリアックの孫という由緒正しい家柄とはいえ、その当時は19歳の女の子である。難しい政治の話よりファッションのほうに興味があるわけで、政治のほうに傾斜していくゴダールとは離れていくことになるのは当然だったのかもしれない。
 時代の寵児として騒がれたゴダールも妻から見ればただの男。才能には溢れているけれど、ちょっとお騒がせで困った男でもあるのだ。しかも嫉妬に駆られたのか自殺未遂騒動まで引き起こすことに……。ゴダールの神話は多いけれど、本作はそんな映画作家を描くというよりは、ひとりの男の悲喜劇を描いた作品ということなのだろう。

 ゴダールを演じたルイ・ガレルは薄くなった頭髪まで再現してゴダールっぽく成りきっている。一方で、アンヌ・ヴィアゼムスキーが主演した『中国女』ステイシー・マーティンによって再現されているけれど、特段本人に似せようとは思っていないようで髪形すら合っていない。何となくゴダールの最初の妻アンナ・カリーナのほうに似ているようにも思えた。とは言うもののステイシー・マーティンはゴダールのミューズとしての魅力はとてもよく体現していたんじゃないだろうか。アブノーマルな女の子を演じた『ニンフォマニアック』のときとは違って、どちらかと言えば等身大の女の子をハツラツと演じているのが印象的だった。
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Date: 2018.07.17 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (3)

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2018.07.18

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映画『グッバイ・ゴダール!』は、予想以上に面白かったです。ゴダールの2番目の妻だ >READ

2018.08.20

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2018.09.05

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