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『万引き家族』 童貞なのに父になる?

 『そして父になる』『海街diary』などの是枝裕和監督の最新作。
 カンヌ映画祭のパルム・ドール受賞作。これは日本映画としては『うなぎ』(今村昌平監督)以来21年ぶりの快挙。

是枝裕和 『万引き家族』 カンヌ映画祭のパルム・ドール受賞作。

 タイトルにあるように“万引き”をするシーンもあるけれど、中心となる元ネタとしては2010年に明らかとなった年金不正受給問題が扱われている。是枝監督は『海街diary』とか『そして父になる』のように稼ぎたいどこか(テレビ局?)からの持ち込み企画と思わしき作品をやりつつも、『誰も知らない』や本作のように社会問題を取り上げてみたりもする。
 さらにそのどちらも商業作品としてある程度成功させつつも、映画作家としてかねてからのテーマ「家族のあり方」を問う作品ともなっている。商業性と作家性の両輪をうまく回しているあたりは稀有な存在なのかもしれない。この『万引き家族』は泣かせる作品にもできたのだろうがそうはせず、冷静な目で家族の行く末を追っていく作品となっている。

 年金不正受給のような問題がメディアで取り上げられる際には、皮相だけを見て「けしからん奴らだ」という論調になりがちだ。個人的にはそういった怒りよりも、親の死を隠蔽してまでその年金を受け取り続けなければ生きていけない家族があちこちにいることが驚きだった。是枝監督は、もしかしたら実際にはこんな事情があったのかもというところに想像力を働かせてこの作品を作り出している。
 ここで登場する家族は、治(リリー・フランキー)が作品冒頭で拾ってきたリン(佐々木みゆ)を含めて6名。治が祥太(城桧吏)に教えているのは“万引き”だから清廉潔白ではないにしても、子供を冬空のベランダに放り出して省みないリンの親よりはマシな家族だろうという気にもなる。しかし実際には、この家族は偽りの家族であることが次第にわかってくることになる。

 ※ 以下、ネタバレもあり!

『万引き家族』 亜紀(松岡茉優)と信代(安藤サクラ)は拾ってきたリン(佐々木みゆ)を家族としてかわいがる。

◆なぜ偽りの家族が必要だったのか?
 息子に見えた祥太は治が拾ってきた子だし、治と信代(安藤サクラ)も夫婦ではない。祖母に見える初枝(樹木希林)と、治あるいは信代との間にも血縁関係はない。亜紀(松岡茉優)は初枝の元旦那が新しい奥さんとこしらえた子供だから、ここにも血縁関係はない。結局、6人に血のつながりは皆無ということになる。
 それではなぜ偽家族が必要なのか。亜紀は実家に居場所がなくて初枝のところで暮らしている。そのほかも似たようなもので、居場所がないからそこにいるということになるだろう。治たちが初枝の年金をあてにしているように、初枝自身も亜紀との関係を利用しているフシもあり、その絆は善意だけのものではない。しかし、たとえ偽家族がそれぞれを利用し合うような関係だとしても、祥太が語る絵本『スイミー』のエピソードではないけれど、みんなで身を寄せ合うことで生き永らえているという意味で偽家族は必要とされているのだろう。
 おもしろいのは治と信代の関係。ふたりの過去には信代の元旦那を治が殺したという事件があった。しかしそれでいて治と信代は肉体関係がなかったらしい。ふたりのセックスのあとに、治は「できたな」と驚いている。最初は「久しぶりにできた」という意味かと私は思っていたのだけれど、『キネマ旬報』金原由佳の作品評によれば、治は童貞という設定なんだとか。なぜふたりがそんな関係だったのかと言えば、治は様々なことを学ぶ機会がなかったからなんじゃないだろうか(真っ当な男女関係のことすら学ばなかった)。

◆祥太の学んだこと
 この偽りの家族が崩壊するのは、祥太が起こした事件がきっかけとなる。自分が“万引き”をするところまでは許容できた祥太も、妹のようなリンを巻き込むことはためらいがある。家族のことが外部の大人に知られてしまうと、家族の関係性そのものが崩壊してしまうというのは『誰も知らない』にもあったシチュエーションだ。
 しかし『誰も知らない』の明(柳楽優弥)には、学ぶべき大人の存在がなかった。一方で『万引き家族』の治には、“万引き”しか教えられないダメな偽りの父親だったとしても近くに大人がいた。治のような親でも反面教師になることがあるわけで、祥太は治を見てこのままではいけないということを悟ったのだろうと思う。その意味では『誰も知らない』の明よりは、『万引き家族』の祥太のほうがずる賢く生きる力を学んだということになるだろう。
 世の中には様々な家族の形がある。リンの家族は血縁関係があるけれど、共同生活は機能しておらず、リンは存在を否定されている。信代たち偽りの家族がハグによって「ここに居てもいいんだよ」とリンに教えたのとは対照的だ。どんな家族が正しいのかに答えなどないわけで、ダメな家族なら逃げ出す自由があったほうがいい。それに縛られて苦しむくらいならそれを捨てて、血縁とは別の家族のあり方を模索するのも悪くはないのだろう。

 JK見学店で働く松岡茉優のいつもの笑顔とは違う役柄も印象的だったし、樹木希林のおばあさん役もさすがで毒のあることをやりつつも何となく許せてしまうあたりは独壇場だった。なかでも一番光っていたのは安藤サクラだろうか。後半警察に捕まってからの表情には憑き物が落ちて生まれ変わったような美しさがあった。

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キネマ旬報 2018年6月下旬号 No.1782


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Date: 2018.06.20 Category: 日本映画 Comments (22) Trackbacks (8)

この記事へのコメント:

まれ

Date2019.10.20 (日) 10:37:57

Nickさん、
楽しみにしてた「真実」のレビュー、ありがとうございました〜 新しいサイトにコメント書いてみましたが、やはりエラーとなってしまいましたので、こちらにやって来ました。来年まで観れませんが、内容を知って一安心⁉︎ 心置きなきなく年が越せます 笑

Nick

Date2019.11.01 (金) 01:33:24

なぜあちらではコメントがエラーになってしまうのかはわかりません。

それから「真実」ではリュディビーヌ・サニエは意外にもちょい役という感じでした。
名前は大きく出ているのですが……。

まれ

Date2019.11.11 (月) 11:58:48

リュディビーヌ情報、ありがとうございますm(__)m 彼女は何の役だったのかと気になっていました。オゾン作品に多く出演していたので、日本でも名の知れた仏俳優枠だったのか、単に是枝監督がファンだったのか?なんとなくですが、是枝監督、好みの女優さんを使う印象があるんですよね。当たり前ですけど 笑

先日、カトリーヌ・ドヌーヴ、新作の撮影中、脳内出血で緊急入院してしまいましたね。後遺症はないとのことですが、アラン・ドロンも未だ要介護状態のようで、今の医療環境で、現役ドヌーヴの76歳は、倒れるには、まだ若いと思ってしまいました。高齢になり、表舞台から消える女優さんが多い中、ずっと一線で活躍されているので、充分休まれ、復帰されるを願っています。

Nick

Date2019.11.15 (金) 00:37:08

リュディビーヌ・サニエに関してはお気に入りっぽかったですね。
だって居なくても全然成り立つくらいの役柄だったし。
せっかくだから好みの女優さんを、ということでしょうかね。

カトリーヌ・ドヌーヴ緊急入院のニュースは見ました。
『真実』でまだまだ元気な姿を見せていたのでビックリしました。
新作の撮影中だったんですね。
それだけエネルギッシュなら復帰も大丈夫なんじゃないでしょうか。

まれ

Date2019.11.24 (日) 07:24:42

やはり、監督の好みの女優さん枠でしたか・・・。是枝監督が選ぶ子役、子供らしい子もいますが、主役は美男美女ばかり。なので美男美女好き、という印象です 笑 実は「万引き家族」の安藤サクラさん起用には、売れてる女優さんが演じられないシーンがあったからかと思うと、なんとなくイヤな気持ちで鑑賞しました。でも、サクラさんの朝ドラでの活躍も相まって、脱げる”演技派”ではなく、売れっ子女優として認識され、うれしく思いました。長谷川博己さんとの夫婦役が良く、来年の大河を楽しみにしていたんですけど・・・。でも、ピンチをチャンスに!で、代役の若手女優さんがステップアップできるといいですね。

Nick

Date2019.12.02 (月) 22:08:35

>売れてる女優さんが演じられないシーンがあったから

そうだったんですね、初耳です。
というか「万引き家族」は安藤サクラがよかったわけで、
どう転ぶかわかりませんね。
断ったのが誰なのかはわかりませんが、残念がっているかもしれませんね。

まれ

Date2019.12.31 (火) 12:55:14

私の文章が拙いせいで、誤解を招いてしまいましたが、主演女優の起用基準は私の単なる”憶測”です。個人的過ぎる意見で申し訳ありませんでしたm(__)m 
偶然ですが、最近目にしたインタビュー記事では、主演は40歳くらいの女優さんを探していたそうです。偶然街で出くわした出産後の(若い)安藤さんでもいけると思い、彼女にオファーされたそうです。

監督作品、ほぼ全作観ているせいか、超有名女優・俳優ばかり主役に起用しているのに、この作品に限っては路線が違い、”脱げる女優”を起用した感が否めず、不快な気持ちになりました。所属事務所との関係もあり、監督や女優さんの一存では決められないとは思いますが、ならば、シーンの工夫をするなどして、既定路線の女優を起用していれば、違和感を持たなかったのにと思いました(勝手ながら!)。

でも、あの家庭環境で美人女優はそぐわないいですね・・・。であれば、安藤さんも脱がせないで欲しかったです。AVじゃないのだから、わざわざ濡れ場シーンをしっかり撮り込まなくても物語に支障は出ないと思うんですよね。女優さんを脱げる、脱げない枠で分けるのは、不快で、特に引く手あまたな監督作品なだけに、余計不快感が増しました。

脱げる、脱げない枠でいうと、ソレンティーノ監督のセレブ・パーティーにおける女性たちは、整形もあるとは思いますが本当にスタイルも良い美女ばかり。しかも、みなさん躊躇なく全裸になっているところも圧巻ですね。欧州ではヌードにそれ程重きを置いていない感じがしますね。日本の中途半端なところが不快なのかもしれません 笑

Nick

Date2020.01.09 (木) 20:04:23

「起用の仕方が」ということでしたか。
人気のある監督だけに様々な思惑がキャスティングにも影響してくるのかもしれませんね。
監督自身の意見もかなり通りそうな気もしますし、実際のところはよくわかりませんが……。
そういえば是枝監督の作品は、濡れ場的なものは多くないですね。
「幻の光」にはちょっとありましたがサラっと描かれてましたし。

海外の女優さんの裸、特にソレンティーノ作品に出ている裸は、
あまりいやらしい感じはしませんね。
堂々としすぎているからでしょうか。
「グランドフィナーレ」に出てきたモデルさんも裸が自然に見えるくらいでした。

まれ

Date2020.02.02 (日) 12:51:14

是枝監督の「空気人形」は観られましたか?最新レビュー「ロマンスドール」と同じラブドールの物語で、監督自身が「性」を思いっきり描きたかったと語っていました。ハリウッドと一緒で、大衆向けが前提ですと、作品にも制限が掛かるんでしょうね。

ご覧になったかもしれませんが、「空気人形」は日本映画ですが、主人公は韓国女優さんでした。あの役は、流石に厳しいと思いましたが、日本の女優さんで撮れないんですかね・・・。

「ロマンスドール」の添付画像の蒼井優さん、一瞬、人形に観えましたが足が人間っぽいので、ご本人かな?と思い、レビューを拝読して、曖昧さを狙ったのかも?と思いました。

監督が「真実」の撮影に関する本を出版されたと何かで知ったんで、映画を観てから読んでみようかな、と思っています。

ド・ヌーヴさん、その後、お元気になられたようです。辛辣なことをサラッと言ってしまう感じが、樹木希林さんに似ている感じがします。「歩いても、歩いても」の樹木さん役は監督のお母さんがモデルと仰っていたので、ド・ヌーヴさんにも似たものを見つけたのかもしれませんね。

ソレンティーノ作品の女性はスタイリッシュなお飾りに過ぎないのが、無味無臭なんでしょうね。主演はご老人という面白い監督なので、若い女優に”情”を持たせない感じがします。

先月ですが、ネットのCMにて強烈な教皇演ずるジョン・マルコヴィッチに目を奪われましたら、ソレンティーノ監督のTVミニ・シリーズ「The New Pope」の宣伝でした。とにかく、色鮮やかでスタイリッシュさを求めているので、ソレンティーノ監督の様式美が見えてきました 笑 ミニとはいえシリーズとなると長いので、いつ観れるかわかりませんが、マルコヴィッチの教皇、観たいです。

Nick

Date2020.02.18 (火) 00:43:48

「空気人形」はファンタジックでしたね。ラブドールが心を持ってしまうところが。
主演は韓国の女優さん(ペ・ドゥナ)だったのは、日本人だと生々しいからでしょうか。
韓国も日本も見た目はほとんど変わらない気がしますが、言葉が異なるだけでもまったく別の価値観の人のようにも思え、いろんなことが許せてしまうような……。
日本しか知らない者の意見ですが。
単にネームバリューがある人でヌード満載の役をやる人が日本人にはいなかっただけなのかもしれませんが……。

「空気人形」はラブドールが心を持つわけですが、「ロマンスドール」で目標とされていたのも亡くなってしまう蒼井優そのものを作り出すことでした。
実際に蒼井優そっくりのラブドールが作られるわけですが、顔なんかも本当にそっくりで、ちょっと気味が悪いくらいでした。
ロダンが彫刻を発表したときは、あまりに精巧すぎて人間から型を取ったんじゃないかと言われたようです。
ラブドールもそんなふうにして製作したら、今以上に精巧なものができるのかもしれませんが、映画のなかでは彫刻を作るようにして製作していました。

カトリーヌ・ドヌーヴはご無事だったようで何よりですね。主演作を撮っていたみたいで、それがどうなるのかが気になるところです。かつてはお人形さんみたいな女優さんでしたが、今ではいい意味で貫録がありますね。ちょっとのことでは動じなさそうなイメージです。


ソレンティーノ監督のテレビシリーズなんてあるんですね。そう言えば『LORO 欲望のイタリア』
もテレビシリーズを編集したものだったみたいですね。ジョン・マルコヴィッチの教皇というのは確かに興味をそそられますね。

まれ

Date2020.03.14 (土) 11:11:08

「空気人形」はファンタジックという言葉がピッタリですね。見るに堪えない場面もありますが、ぺ・ドゥナさんの可愛らしさと役の純粋さが印象深い作品でもありました。ファンタジーに昇華せずには観れない作品と思うと、韓国の女優さんを起用したのは正しかったかもしれないですね。今なら、世界的にも話題になる作品ではないかと思ったりも・・・。

「ロマンスドール」は実在の人物を模写し、制作してましたが、映画「エクス・マキナ」を思い出し、亡くなった人の姿をしたAIロボットは、残された人の悲しみを埋めてくれる一方、現実世界から切り離されてしまうと思うと、良いのか悪いのか・・・。ロボットはあくまでもロボットの域を超えて欲しくないとは思いつつ、「インターステラー」では、箱型ロボットに心を動かされてしまい、生き物のような反応をされると、人間の脳は相手が生き物だと勘違いしてしまうのでしょうね。”人間らしさ”がロボットに対して感情を持たせる事になるなら、なんとも不思議です 笑

ロダンの彫刻、そんな逸話があったとは知りませんでした。つくづく芸術家のインプットとアウトプット能力の高さを思い知らされます。Nickさんのレビューも感じたことを的確な表現で書かれており、同じような高さを感じます。

ドヌーヴさん、退院はされたものの、息子役のブノワ・マジメルさん曰く、撮影中の映画への復帰は今年の春か夏が目途ということで、回復にはもう少し時間が掛かるようでした。仰る通り、若い頃はお人形のようですよね。

『Loro 欲望のイタリア』はテレビ・シリーズだったんですか! 内容的には国内向けと言われれば、そうですよね。

私が見た『The New Pope』のCMではマルコヴィッチがフォーカスされていましたが、前作の『The Young Pope』のジュード・ローも出演しているので、こちらから観ないと、面白さが半減してしまうと思うと、いつ観れるのか・・・。
というより、今はイタリアにおける一日も早い収束と復活を祈らずにはいられません。

Nick

Date2020.04.04 (土) 01:04:23

 『ロマンスドール』は限りなく人に近い外見を作ることには成功したわけですが、やはりそこに心は宿らなかったようです。人工知能は外見はともかくとして、心があるかのように見せるものだと思います。『エクス・マキナ』は外見も兼ね備えているわけで、人間そのもののようにも見えますね。
 人工知能の能力を測るテストにチューリングテストというものがあるようですね。これは質問をして返ってきた答えが「人間的かどうか」を測るもののようです。人工知能を搭載したロボットがその頭というか中身でどんな計算がされるのかわかりませんが、返ってきた答えだけで判断しているわけで、その中身の部分はブラックボックスみたいに思えます。
 これは人間の心と同じなのかもしれません。自分に心があることは誰も疑いませんが、他人の心のなかを覗き見ることはできないわけで、他人が自分と同じような心を持っていると推測しているにすぎないわけですから。
 だからロボットの中身の人工知能が精巧になるにつれて、ますます人間のような何かに思えるようになるんでしょう。ロボットが実際に心を持つのか否かは別にして、人間の側は「人間らしい」答えを返してくれる相手に対して感情移入してしまうんでしょうね。
 どこかで書いたかもしれませんが永井均という哲学者の本には、そうしたテーマが取り上げられることが多いですね。

 パオロ・ソレンティーノには『The Young Pope』というテレビシリーズがあるんですね。初めて知りました。しかも今度の『The New Pope』のほうはウィキペディアの日本版には記載もありませんね。とても参考になる情報ありがとうございます。とはいえ日本で観られるのは遠い先かもしれませんが。
 コロナウイルスの関係ではイタリアどころか世界中がヤバいことになっているみたいですね。日本でも連日その報道ばかりです。本当になるべく早く収束してほしいものです。

まれ

Date2020.04.09 (木) 14:02:18

以前、黒柳徹子さんがアイボを持っている(?)と仰っていて、ロボット犬を飼ってることに驚きました。でも、『インターステラー』のいかにもなロボットに不覚にも感情移入した自分を発見し、相手と意思疎通ができた時点で、脳は”相手が生命体だと思うのかもしれない”と思いました 笑 

”心”と表現すると、人間や動物しか持たないような気がしますが、植物を含めた生物一般も人間には感じ取れない、または理解できない”意識”を持っていないと生命を維持できずないと思い、では、その元となるのは?と考えると、やはり、脳や生命体を作動させる電気信号だと思えるんですよね。なので、細かな意思疎通ができる精密なAIは心を持っているような”気がする”のではないかと。

私の中での機械と生命体と大きく違う点は、身体的痛みを感じない機械ならば、壊れても、故障しても修理可能なので嘆くことはない、と思える点ですかね 笑 『インターステラー』のロボットがブラックホールへ落ちていった時は一瞬つらくなりましたが、彼は壊れても痛くないんだし、別れる辛さを感じないか、感じても、そういうモノだと機械処理できるのだと思い、心を持ち直しました 笑 主人公が自らブラックホールへ落ちていった時は流石に涙が出掛かりましたが、ブラックホールの未知数を考えると、もしかして、帰還?なんて思っていたら、やはり、無事でした。その姿を見て、あのロボットが出てくると予想が付きました 笑 怨恨などではない残虐な犯罪を犯す人間の脳は、人間の脳としては機能障害を持っていると思えてしまいます。脳科学者の中野信子さんの『サイコパス』という著書に、サイコパスはエリートにも多く、外科医や投資家等に必要な資質でもあると書かれており、確かにと思いました。昔、スパイの実録本を読み、スパイになるにはある程度の資質は必要でも、訓練でなれると書いてあり、スパイになるというより、幼児期の体験や教育の大切さを感じました。

『ロマンスドール』は観てませんが、人形に心を見出すか否かは、その人の脳のありようなのではないかと。確か、江戸川乱歩の小説で、人形に恋してしまった男性の話があり、西欧でも、美しい人形に憑りつかれた話もあったりしますよね。では、可愛がっていた猫の剥製に抱く感情は?と問うと、剥製より、猫にそっくりなぬいぐるみやアクセサリーが欲しいかも・・・笑 そういえば、お骨をダイアに加工するという企業があり、お値段が高額でしたが、身内ならアリかもと思ったのを思い出しました 笑

永井均氏の著書リストを見ました。面白そうなタイトルが多いですね。ただ、哲学書は読んだことがないんですよね(以前、別のレビューのコメントにて勝手にカムアウトしましたが 笑)。なぜ、読んでいないのか?と自問すると、多分、頭を複雑に使う本が苦手なんだと思います 笑 でも、面白そうなので、一冊、読んでみようと思っていますm(__)m

まれ

Date2020.04.09 (木) 15:00:32

『二人の教皇』が話題になっていた頃、Nickさんのコメントにて『ローマ法王の休日』という映画の存在も知った気がしますが、ナンニ・モレッティ監督作だったのを先日知りました!ゆっくり見る余裕がなく、録画しながら流し見していましたら、監督がジャーナリストとして出演しており、枢機卿がダンスを踊りだしたりと、心温まる印象で、ソレンティーノ監督の教皇シリーズとは違う面白さがありました。近い内に鑑賞予定です。

『The Young Pope』はWowowで『ヤング・ポープ 美しき異端児』というタイトルで放映され、ソフト化されていますが、ミニとはいえシリーズなので鑑賞時間は544分、なかなか手が出せません 笑 マルコヴィッチ出演の続編『The New Pope』の撮影は昨年中に終了とされており、CMのヴェネチアでのシーンが印象的で、今年だったら・・・と。

映画等で見た美しいイタリアを思い出すと辛くなるので、暫くは北イタリア映画は観れそうにありません。それでも、ピークは過ぎたようなので、少し安堵しています。どの国も大変なのですが、わけがわからない内に人々が感染し、現場の人々の一生懸命さが逆に仇になってしまった姿を見て、イタリアは歴史的にも隣国からの侵略の地であり、常にフロントラインに晒されている印象です。それは日本の原爆や震災も一緒で、そんなところも心惹かれる国なのかもしれません。

Nick

Date2020.04.19 (日) 21:27:36

脳科学的に見れば「脳や生命体を作動させる電気信号」が、
自分の意識を生み出しているということなんでしょうね。
電気信号が意識を生むのだとすると、
機械に意識が生まれてもいいんじゃないかという気にもなります。
とはいえ、実際にAIが意識を持つまでには至っていないようですね。
『エクス・マキナ』のAIなんかも意識を持っているように見えますが、
人間から見ると「そういう気がする」というだけなんでしょうね。
人は色々な物に愛情を抱いたり執着したりもしますが、
それも「その人の脳のありよう」ということなら納得できる気がします。
たとえば『キャスト・アウェイ』の主人公は無人島生活のなかで、
バレーボールにウイルソンと名前を付けて友達のように接していました。
これはたまたまバレーボールに付いた血が顔のように見えたからでしたね。

「お骨をダイアに加工する」技術があるんですね。
そこまでして一緒にいたいという気持ちになるものなんですね。
私自身はまだ身近にそうした機会に接することなくきているのでピンと来ないのですが……。

Nick

Date2020.04.19 (日) 21:33:06

『ヤング・ポープ 美しき異端児』は調べたらツタヤにも置いてあるみたいですね。
残念ながら家の近くのツタヤにはないみたいですが。
日本で出ている情報を見ると、
なぜか監督に関してはほとんど触れられてないみたいですね。
テレビシリーズだからでしょうかね。
ソレンティーノ監督の作品がこんなところに埋もれていたとは知りませんでした。
そのうち観てみたいと思います。

意外なところに日本とイタリアに共通点があるようですね。
私なんかはよく知らないので、
母親に対する意識が似ているみたいなことくらいのイメージしかないのですが。
『若者のすべて』でも南北の格差が取り上げられていましたが、
具体的にはよくわかりませんでした。
『若者のすべて』で描かれるのはミラノでしたが、
イタリアは北側のほうが豊かなんですね。
日本に住む外国オンチとしては、
地中海に接しているほうが温暖で住みやすそうに思ってしまいます。

まれ

Date2020.05.08 (金) 12:44:18

先日、生命体の元は電気信号ではないかと書きましたが、思考等は電気信号に支配されているかもしれませんが、”意識・心”というのは、信号を超えるモノなのでは?と思っています。亡くなっても意識は残っているような・・・。気の持ちようといえば、それまでですが 笑

ノーラン監督の『メメント』、予想より早くに鑑賞しました。しかしながら、鑑賞直前に”映画の流れは逆行している”という余計な情報が入ってしまって、そう思いながら観ていたので、驚かされるべき箇所が薄れてしまって、ちょっと残念でした 笑 ただ、ラストで復讐が終わったことをメモしないことで、この先も復讐劇を糧に生きていこうと決めた主人公に違和感を抱きました。

というのも、今後も復讐をし続けようという悪い考えは”持って生まれた”彼の性格の一部にしか思えなかったんですよね。事故後の彼は必死で記憶を失う事への対処をしながら妻殺しの犯人を追い続けており、その”真摯に”生きている人間が、悪の道である終わらない復讐ゲームを思いつくのだろうか?と。

”思い付き”というのは脳内に蓄積された事柄が電気信号によって繋がる場合と、”ひらめき”のように、ランダムに行き交う信号のゆらぎ的なもので、それが”意識”や”心”なのかも?と考え、意識や心は”記憶”が大元でも、刻まれた記憶自体ではなく、記憶の曖昧さや”無意識下”のランダムな神経細胞(=電気)の繋がりや、そこからの波のようなものではないかと。

ロボットに全く同じ記憶をプログラムし、脳内の曖昧さやゆらぎという不確かさを発生させるまで設定できたとしても、その”ゆらぎ”はオリジナルと同じ風に発生するかは確約できないと思うんですよね。実際、そこまで繊細なロボットが必要なのか?というのも問題すよね 笑 

”永遠の命”が目的なら、わからないでもないですが、人間も経験や年齢を重ねると人は変わりますから、『テセウスの船』のように見た目は同じでも、中身は変わるものだと考えると、”意識”を持たせるロボットになんの意味があるのやら・・・。実用というより、”意識”への飽くなき研究ですかね。

『エクス・マキナ』では、助けてくれた主人公を置きざりにしたのは、”助ける”という考えをロボットなので持ち合わせていなかったのか、自分を製作した人間と同じ=敵と見做されたのか、容赦なく置いていった姿はロボット的に見えました。とはいえ、人間でも、今は助けてくれても、秘密を知っていて、後から邪魔になるかもと思い、置いてく場合もありますね。

『キャスト・アウェイ』、ありましたね、懐かしい。随分昔の研究結果ですが、一人暮らしの人はぬいぐるみ等に「ただいま」等、声をかけると精神衛生上良いと言ってました。ムリに笑うのも心のに良いというのと同じ効果かもしれませんね。今は、身体を動かすことで脳が活性化されると言われているので、納得ではありますね。とはいえ、自発的に笑みや笑いを作るのは苦労しますが・・・。

まれ

Date2020.05.08 (金) 13:00:34

私がやっとのことで『ローマ法王の休日』を鑑賞し終わった頃に、544分の『ヤング・ポープ』を鑑賞されていたとは!恐れ入りましたm(__)m 笑 早速、レビューを拝読しまして、町山氏が以前仰ってましたが、幼児虐待事件が明るみにならなければ、当時のアメリカ・キリスト教会のトップがべエディクト16世の後を継いだ可能性が高いと言っていたのを思い出しました。予想通り”野望”渦巻くドラマ、マルコヴィッチの『The New Pope』が始まる前に、観たいものです。というより、どちらもソフト化されてから、まとめて・・・なんて言ってるので、なかなか観れないんですけどね 苦笑 

『ローマ法王の休日』はモレッティ監督らしい皮肉や笑いのある作品でしたが、枢機卿やスイス衛兵の衣装はソレンティーノ監督ではなくても、色のコントラストや細かい刺繍、組紐など、全てにおいてスタイリッシュでした。2000年近く、常に洗練され続けた世界なんですよね。モレッティ監督はジャーナリストではなく、精神科医として出演し、枢機卿達がダンスなど踊って陽気な映画に観えましたが、実は、一人の聖職者が教皇という責務を担う重さを描きたかった作品に思えました。イーストウッド監督と似ていて、いつも、監督らしい信条がある作品のような気がしました。

たまたま読んでいた中世後期の歴史本のインノケンティウス3世は、当時、37歳で教皇に選ばれたそうで、世襲ではないにしても、この若さで・・・と、現在の教皇との年齢差に驚かされました。当時は聖職者とはいえ俗世界の王のような立場で、いつ侵略されるかわからないと考えると、英知のみならず、若さも必要だったんでしょうね。日本の天皇とは違い、神に”選ばれし者”の脆弱さでしょうね。

まれ

Date2020.05.08 (金) 13:20:32

『若者のすべて』 まさかのレビュー、ありがとうございます!Nickさんの解釈、なるほどと新鮮な気持ちで拝読しました。私は、先ずは、アラン・ドロンのお洒落なセーターに目が行ってしまい(笑)、監督お気に入りのドロンを誰もが好きになるような人物に描いたにでは?という斜め目線(笑)と、産業革命に伴い、マフィアや悪徳資本家が牛耳っていて、土地が持てないと生きていけず、冬が厳しい北で暮らさざるを得なくなった南の民へのオマージュ的作品のような気がしました。以前、オルミ監督の『定職』を観て、産業の発展がなければ、大半の人達が土地を耕し、農作業従事者として暮らしをしていたのかと、それまで考えもしなかった事を知り、ほんの半世紀前なのに、随分と世の中は変わったと感慨深くなりました。中世からルネサンスにかけては、Nickさんの仰る通り、アルプスを隔てた南北の生活はあまりにも違く、中でも南イタリアは北方の民から楽園のように思われていたと歴史物にも記載されてました。今では、ドイツやフランス、スイス等、アルプスの北側の方が工業的にも発展しているわけですが・・・。これもオルミ監督の最初の長編作品『時間は止まった(直訳』からの印象ですが、アルプス山脈の険しさは尋常ではなく、その代わり、水力発電用のダムがいくつも建設されているんですよね。映画はそのダム建設に関わった老人と若者のお話でした。発電所が建設できたのが北イタリア発展の大きな理由なのかもしれないと思いました。ただ、後に知りましたが、イタリア王国が成立した当時、サルディーニャ王国の王が初代の王となった為、長年外国の支配下に置かれ、疲弊していた南イタリアは放置され、格差が是正されないまま、現在に至ってしまったと、何かで読みました。南の人は怠け者という印象がありますが、様々な国の支配下に置かれ続け、でも、気候の良さでなんとか生きていける為、マフィアのように長年住み続けた力のある被支配階級による組織が活動していても、不思議はないと思いました。

『テセウスの船』、ドラマ化を知りまして、面白いタイトルだったので、ネットであらすじを読み、最終回だけ電子書籍を購入して読みました 笑 タイトルの付け方が上手だと思いましたがドラマは犯人が違ったんですよね。ドラマが始まる前に読み、ドラマ自体は観ていなかったので詳細を忘れてしまいましたが、マンガを読まれた方にも楽しる内容というのは悪くないとはいえ、タイトルの意味が生かされてないのは残念ですね 笑 

Nick

Date2020.05.18 (月) 21:02:22

『メメント』はダメでしたか。
余計な情報が入ると驚きが半減してしまうことはありますね。
「時間処理の仕方」云々ということもネタバレだったかもしれません(すみません)。
でも、何も説明しないと興味を引くもの難しいですね。
「何も言わずに観ろ」っていう言い方では説得力に欠ける気がしますし。

それから『メメント』のラストはスッキリする感じではなかったですね。
最初の目的は敵討ちだったのかもしれませんが、
それがいつの間にかズレてしまって、
生きること自体が目的化して復讐をでっち上げるという……。
そんなふうにしか生きられなくなってしまったという点では悲劇なのかもしれません。
主人公は記憶の連続性が保てないわけで、
そうなるとアイデンティティもあやしいものになってくるわけですが、
だからといって復讐が目的と化すというのは極端だったかもしれませんね。

ほかのところのコメントで「ひらめきが起こるのは脳にゆらぎがあるから」とも指摘されてましたが、
そうなると人工知能にはそんな「ひらめき」とかは難しそうですね。
「ゆらぎ」ってものが人工的に作り出せるものなのかはわかりませんが、
作り出せたとしてもすでに決まっているものであってゆらいでいるものには思えません。
「ひらめき」というものもひらめこうと思ってもひらめかなさそうですよね。
普段の生活で「ひらめき」を得るような機会もそうそうありませんし。

Nick

Date2020.05.18 (月) 21:04:36

『ヤング・ポープ』はコロナ禍の影響ですね。
急に仕事の関係が暇になってしまったという……。
新作映画が公開されていたら、
まるで義務みたいにそれに追われてしまうわけですが、
それがないためにしばらくはゆっくり古い映画なんかを観ることもできます。

『ローマ法王の休日』は観れてませんが、
写真で見ると赤が基調となった衣装になってますね。
『ヤング・ポープ』のジュード・ロウはほとんど白装束でした。
仕事を離れた時の普段着すら白のパンツに白パーカーといういで立ちでした。
ジュード・ロウが演じたピウス13世というキャラは40代という設定だったと思いますが、
かつてはそんなに若い教皇が居たんですね。
そんな若くしてカトリックの頂点に立つというのは大変な重圧のように思えますが、
昔の人は今の人よりももっと成熟しているようにも感じます。

『ヤング・ポープ』はバチカン内の枢機卿たちの権力闘争の側面もあるわけですが、
一方でカトリックの教えを守るために葛藤している部分も垣間見えます。
『ヤング・ポープ』でも幼児虐待事件も扱われていますが、
真摯に信者や神のことを考えている聖職者もいるということなのかもしれません。
実際のバチカンがどうなのかはよくわかりませんが、
とりあえずは続編もどうなるか楽しみにしています。
それからリュディビーヌ・サニエも重要な役で登場してまして、
『真実』はチョイ役でしたから久しぶりな感じもしました。

Nick

Date2020.05.18 (月) 21:07:07

『若者のすべて』に関しても、時間ができたので今回改めて観ることができました。
今回のレビューも勝手な解釈に過ぎないわけですが、
ヴィスコンティ自身もドストエフスキーの『白痴』に言及していたみたいですし、
まったくの見当違いではないのだろうと思います。

それからまれさんにご指摘いただいたシモーネの同性愛疑惑(?)に関しても確認しました。
あのテレビに映る意味あり気な映像はやはり意図があってのことなんでしょうね。
謎めいた映像でした。
また、シモーネに金を貸していたヤクザ者は、
シモーネのボクシングパンツを見て、
「紫のパンツなんか、女しか着ないぞ」みたいな言い方をしていました。
直接的な同性愛の描写ではないですが、
そのあたりにも同性愛が仄めかされているように思えました。
ふたりの関係にそんなあやしいものがあるというのは、
指摘されなければまったく気づかないところでした。

イタリアの歴史に関してはまったく不案内なので、
『若者のすべて』も南北格差の問題など理解できてない部分も多いのだろうと思います。
まれさんは、エルマンノ・オルミ監督の作品も色々ご覧になってますね。
多分日本では『定職』『時間は止まった』という作品は観ることは難しそうですね。
私自身はようやく『聖なる酔っぱらいの伝説』を観ることができましたが、
不思議な余韻の残る映画でした。
去年亡くなってしまったルトガー・ハウアーの在りし日の姿も堪能しました。

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