『ピーターラビット』 小気味いいスラップスティック
監督は『ANNIE/アニー』などのウィル・グラック。
声の出演はピーターにジェームズ・コーデンのほか、3姉妹役にはマーゴット・ロビー、デイジー・リドリー、エリザベス・デビッキ。

そのキャラクターは誰でも知っているピーターラビット。原作となっている絵本は世界中で出版され、『ピーターラビットのおはなし』をはじめとして24作品があるらしい(このサイトを参照)。
淡い色彩で描かれたその絵は牧歌的な印象を感じさせるのだが、今回の実写版映画はそのイメージとはちょっと違う(原作絵本を読んだわけではないので推測だが)。とはいえ、お父さんウサギがウサギパイにされてしまったという怖いエピソードは原作通りらしいし、それなりに原作に基づいているのかもしれない。
原作のほんわかとしたイメージのピーターの部分もちょっとだけはあるのだけれど、映画版のピーターはかなりのわんぱくでいたずら好き。近所のマクレガー家の庭に侵入しては作物を荒らす憎たらしい表情は、マクレガーおじさん(サム・ニール)やその跡を継いだトーマス・マクレガー(ドーナル・グリーソン)にとっては害獣以外の何者でもない。それでいて動物好きのビア(ローズ・バーン)にはかわいらしい人畜無害な表情を見せて愛嬌を振りまくことも忘れない。
そして物語の中心となってくるのは、マクレガー家の庭を巡っての命懸けの闘いだ。気持ちよさそうにさえずるスズメたちの歌がいつも途中で遮られ、ピーターたちの大騒ぎが始まるように、この作品は徹底的にスラップスティック・コメディのほうを狙っているのだ。テンポよく小ネタを繰り出して、95分の上映時間をダレることもなく一気に見せる監督ウィル・グラックの手腕はなかなかのものだったと思う。

ただ、いささかやり過ぎの感もあって、ピーターはトーマスをアナフィラキシー・ショックでホントに殺しかけるし、爆弾によってビアの家を半壊させたりもする(やられる側に回るトーマス役のドーナル・グリーソンの狂いっぷりも楽しい)。ピーターは途中で親戚のベンジャミンにすら愛想を尽かされそうになるのだけれど、その後、きちんと謝罪するところが憎めないところ。
ピーターたちの悪ふざけと同様に製作陣のいい意味でのいい加減さもあって、ラスト・ミニット・レスキューを無駄に長引かせないために「ダイジェストをお楽しみください」といった感じで済ませていて、とてもまとまりがいい作品になっている。特段ピーターラビットを知らなくても、ウサギ好きじゃなくても十分に楽しめる。
野生動物たちのキャラの描き分けも見事だったのだけれど、特にニワトリの台詞が笑えた。朝っぱらからとち狂ったように泣き叫ぶニワトリは確かにあんなことを言ってそうな気がする。
![]() |

![]() |

![]() |

![]() |

- 関連記事
-
- 『ゲティ家の身代金』 じいさんたち頑張る
- 『ピーターラビット』 小気味いいスラップスティック
- 『タクシー運転手 約束は海を越えて』 韓国の負の歴史を描くエンタメ作
この記事へのコメント: