『タクシー運転手 約束は海を越えて』 韓国の負の歴史を描くエンタメ作
監督は『映画は映画だ』などのチャン・フン。
1980年5月の光州事件を題材としており、韓国では1200万人を超える大ヒット作となった。

光州事件とは、1980年5月18日から27日にかけて光州市を中心として起きた民衆の蜂起(ウィキペディアより)。民主化を求める市民のデモに対し、軍はそれを暴動として銃でもって鎮圧した。今では韓国の負の歴史として知られ、『ペパーミント・キャンディー』『光州5・18』などの映画にも描かれてきた。
しかし当時は、政府側が厳しい情報統制をしていたために、光州市がそんな状況になっていることは、韓国国内でもあまり知られてはいなかったようだ。それを世界へと伝えることになったのが、東京で特派員をしていたドイツ人の記者ユルゲン・ヒンツペーター。彼はソウルへと渡り、タクシー運転手を雇って光州へと向かい、のちに光州事件と呼ばれることとなる惨劇の状況を発信することになる。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、ユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)を乗せて光州まで赴き、事件を垣間見ることとなったタクシー運転手キム・マンソプ(ソン・ガンホ)の目を通して描かれていく。キム・マンソプは娘とふたりで暮らすしがない労働者。家賃も払えず、娘の靴も買ってやれない状況から抜け出すために、光州までの運転を買って出ることになる。

チャン・フン監督の作品では、立場の異なる登場人物がぶつかり合いながらも行動を共にしていくうちに互いを理解するようになる。たとえば『義兄弟 SECRET REUNION』では、「韓国の諜報員」と「北朝鮮の工作員」という相容れない立場のふたりが、いつの間にかに仲間になっていく。
今回の『タクシー運転手 約束は海を越えて』でも、そうしたテーマは共通している。労働者代表として現実的なキム・マンソプに対して、反政府運動という理想に燃える大学生(リュ・ジュンヨル)がおり、外国から来て事件を世界に伝える使命を帯びるドイツ人記者がいる。キム・マンソプは大学生には勉強しろと説教を垂れ、ドイツ人記者には韓国語がわからないからとバカにした言葉を投げかけたりもする。そんな立場の異なる登場人物たちは、光州事件という現場を体験するうちに少しずつ互いのことを分かり合うようになる。
あくまでも主役はキム・マンソプであり、演じるソン・ガンホの親しみやすいキャラが作品を引っ張っている。最初は金目的だった仕事も、生来の困った人のことを放っておけないという気質が次第に顔を出し、銃弾飛び交う戦場さながらの現場を走り回ることになる。
137分という上映時間をあまり感じさせないほど楽しませる作品だった。とはいえ、事実をもとにした作品にしてはやり過ぎの感もある。2016年に亡くなったというユルゲン・ヒンツペーターは、生前彼が世話になったタクシー運転手を捜し求めていたらしいのだが、結局見つからなかったとのこと(映画が大ヒットした後になって見つかった)。その分、この作品はかえって自由に作れた部分があるのかもしれず、光州事件の悲惨な状況を描きつつもエンターテインメントに徹している。そのあたりが韓国では大ヒットとなった理由だろうか。
それはともかくとして、チャン・フンという自分の弟子が大ヒット作を生み出したことに対して、かつての師匠キム・ギドクはどんなことを思っているのだろうか(監督として資質が違うから関係ないのかもしれないけれど)。ちょっと前には女優に対する暴行事件が不名誉な話題になってしまったキム・ギドク。一応は新作の話なども出ているようだけれど、今までだって韓国での評判がよろしくないのに余計に立場が悪くならなければいいのだけれど……。






1980年5月の光州事件を題材としており、韓国では1200万人を超える大ヒット作となった。

光州事件とは、1980年5月18日から27日にかけて光州市を中心として起きた民衆の蜂起(ウィキペディアより)。民主化を求める市民のデモに対し、軍はそれを暴動として銃でもって鎮圧した。今では韓国の負の歴史として知られ、『ペパーミント・キャンディー』『光州5・18』などの映画にも描かれてきた。
しかし当時は、政府側が厳しい情報統制をしていたために、光州市がそんな状況になっていることは、韓国国内でもあまり知られてはいなかったようだ。それを世界へと伝えることになったのが、東京で特派員をしていたドイツ人の記者ユルゲン・ヒンツペーター。彼はソウルへと渡り、タクシー運転手を雇って光州へと向かい、のちに光州事件と呼ばれることとなる惨劇の状況を発信することになる。
『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、ユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)を乗せて光州まで赴き、事件を垣間見ることとなったタクシー運転手キム・マンソプ(ソン・ガンホ)の目を通して描かれていく。キム・マンソプは娘とふたりで暮らすしがない労働者。家賃も払えず、娘の靴も買ってやれない状況から抜け出すために、光州までの運転を買って出ることになる。

チャン・フン監督の作品では、立場の異なる登場人物がぶつかり合いながらも行動を共にしていくうちに互いを理解するようになる。たとえば『義兄弟 SECRET REUNION』では、「韓国の諜報員」と「北朝鮮の工作員」という相容れない立場のふたりが、いつの間にかに仲間になっていく。
今回の『タクシー運転手 約束は海を越えて』でも、そうしたテーマは共通している。労働者代表として現実的なキム・マンソプに対して、反政府運動という理想に燃える大学生(リュ・ジュンヨル)がおり、外国から来て事件を世界に伝える使命を帯びるドイツ人記者がいる。キム・マンソプは大学生には勉強しろと説教を垂れ、ドイツ人記者には韓国語がわからないからとバカにした言葉を投げかけたりもする。そんな立場の異なる登場人物たちは、光州事件という現場を体験するうちに少しずつ互いのことを分かり合うようになる。
あくまでも主役はキム・マンソプであり、演じるソン・ガンホの親しみやすいキャラが作品を引っ張っている。最初は金目的だった仕事も、生来の困った人のことを放っておけないという気質が次第に顔を出し、銃弾飛び交う戦場さながらの現場を走り回ることになる。
137分という上映時間をあまり感じさせないほど楽しませる作品だった。とはいえ、事実をもとにした作品にしてはやり過ぎの感もある。2016年に亡くなったというユルゲン・ヒンツペーターは、生前彼が世話になったタクシー運転手を捜し求めていたらしいのだが、結局見つからなかったとのこと(映画が大ヒットした後になって見つかった)。その分、この作品はかえって自由に作れた部分があるのかもしれず、光州事件の悲惨な状況を描きつつもエンターテインメントに徹している。そのあたりが韓国では大ヒットとなった理由だろうか。
それはともかくとして、チャン・フンという自分の弟子が大ヒット作を生み出したことに対して、かつての師匠キム・ギドクはどんなことを思っているのだろうか(監督として資質が違うから関係ないのかもしれないけれど)。ちょっと前には女優に対する暴行事件が不名誉な話題になってしまったキム・ギドク。一応は新作の話なども出ているようだけれど、今までだって韓国での評判がよろしくないのに余計に立場が悪くならなければいいのだけれど……。
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