『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 見たことのない映像/どこかで見た映像
原作はピエール・クリスタンとジャン=クロード・メジエールによるバンド・デシネ『ヴァレリアンとローレリーヌ』。

冒頭、デビッド・ボウイの「Space Oddity」に合わせ、1975年のアポロ号のカプセルとソ連のソユーズとのドッキングする実際の映像が登場する。それから時代は流れに流れ、様々な種類のエイリアンたちと人間たちが握手する様子が描かれる。そして、その後のパール人の惑星の見たこともない映像へと続いていくあたりはなかなか快調で、ここまでほとんど台詞らしい台詞もなく映像だけで見せていく。(*1)
どこかの政府の連邦捜査官という肩書きの主人公ヴァレリアン(デイン・デハーン)とその相棒ローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)のやり取りは賑やかで、ラブコメ風の味わいもある。SF的ガジェットも盛りだくさんで、拡張現実の世界での鬼ごっことか、巨大なエネルギー入っている真珠とか、何でもコピーしてしまう生き物など、その設定が十分に活かされているとは思えないけれど、とにかく色々と詰まっていて楽しめる作品となっている(やや上映時間が長いけれど)。

先ほどは“見たこともない映像”などと書いたのだけれど、その一方でどこかで見たことのあるように感じられる部分も多々ある。原作であるバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)『ヴァレリアンとローレリーヌ』は、あの『スター・ウォーズ』にも影響を与えた作品と言われているらしく、確かに『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』に登場するクリーチャーは、『スター・ウォーズ』のそれとよく似ているのだ。
実際には『スター・ウォーズ』がその漫画から掠め取っていたとしても、「先にやった者勝ち」のところもあって、世界的に有名になったのは『スター・ウォーズ』のほうが先だから、『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』はその亜流のようにも見えてしまう部分はある。金をかけているだけあってパール人の惑星の映像は見事なのだけれど、パール人自体は『アバター』の影響も明らかだし、リュック・ベッソンは自分が子供のころに夢中になった漫画を純粋に映画化したいという一心だったのかもしれない。
とにかく物語などあって無きが如しで、ビジュアルがすべてという作品。相棒ローレリーヌの危機に際し、ヴァレリアンはそんなことを忘れたかのように、リアーナ演じるバブルのポールダンスを堪能するという脱線ぶり。しかもその脱線のほうが本筋よりもおもしろかったりもするから困ったもの。そう言えば『フィフス・エレメント』でも、本筋ではない宇宙人のオペラのシーンが一番印象に残っている。これもリュック・ベッソンらしいと言えるのかもしれない。
(*1) 『最後の戦い』というベッソンの長編デビュー作品は、全編台詞なしの作品だった。個人的にはこの作品がベッソンのなかでベストなんじゃないかとも思う(観てない作品も多いけれど)。若かりし頃のまだ洗練されてない感じのジャン・レノも登場する。
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