『エイリアン:コヴェナント』 エイリアンのつくり方
タイトルの「covenant」とは「契約」の意味。

『プロメテウス』は『エイリアン』の前日譚だったわけだけれど、この作品はその続篇であり、『エイリアン』のシリーズ第1作目へとつながる作品となっている。個人的にはごちゃごちゃしていて不明点も多かった『プロメテウス』よりも『エイリアン:コヴェナント』のほうが楽しめた。
監督のリドリー・スコットは、一応の主役であるダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)にはリプリーのパロディのような格好をさせてみたりして楽しそう。前作の生き残りであるアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)にはウォルター(マイケル・ファスベンダーの二役)という瓜二つのアンドロイドを登場させて妖しい雰囲気で戯れてさせてみたりもする。『悪の法則』ほどではなくとも、それなりに嫌な気持ちになるラストも好みだった。


冒頭はアンドロイドのデヴィッドと、それを生み出した創造主たるウェイランド(ガイ・ピアース)との会話となっている。創造主はデヴィッドにその力関係を見せつけようとしているのだが、その雲行きはあやしい。創造主と被造物の関係がこの作品のキモとなってくる点で『ブレードランナー』にも似通ってくる(『ブレードランナー』では、被造物であるレプリカントが創造主たるタイレル博士を殺すことになる)。
前作『プロメテウス』では、人類の創造主がエンジニア(=スペースジョッキー)と呼ばれる宇宙人だったということが明らかになった。エンジニアは人類を創造し、人類はアンドロイドを創造した。『コヴェナント』ではそうした関係性のなかにエイリアンの存在も位置づけることになる。
『プロメテウス』ではエイリアンはエンジニアが生物兵器として生み出したものであることは示されてはいるものの、『エイリアン』に登場したような完成態のエイリアンはまだ登場していなかった。『コヴェナント』ではエンジニアの星に到着したデヴィッドが様々な実験を経て、エイリアンを進化させていったことが語られる(エンドクレジットのなかには「The Selfish Gene(利己的な遺伝子)」と記載があったような気がするから進化論的な考えは前提となっているのだろう)。創造主である人間に「創造すること」を禁じられたはずのアンドロイド・デヴィッドが創造主になるのだ。
思えば『エイリアン』シリーズの前四部作はエイリアンの退化の過程だったように思えなくもない。リドリー・スコットはこのシリーズの創造主でもあるわけだが、以後の作品の監督はそれぞれその時の旬の監督が担当することになった。雑誌のインタビューでは、『エイリアンVSプレデター』で『エイリアン』シリーズは燃え尽きてしまったなどとも語っているようだ。創造主としては複雑な想いもあったのだろう。
シリーズの最終章に位置づけられる『エイリアン4』では、リプリーの遺伝子を受け継いだエイリアンが登場することになるのだが、その姿はグロテスクな失敗作にしか見えなかった。リドリーは新たに前日譚をつくることで、燃え尽きてしまった完成態エイリアンを再創造させたかったのだろう。
実はこのシリーズの次作の製作も噂されているようで、その作品は『プロメテウス』と『コヴェナント』の間の話になるのだとか。今さら時間を遡って何を描くのかは謎だけれど、意外と楽しみな気もする。
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『エイリアン』シリーズ


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