『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』 なぜ彼だけに彼女が見えるのか?
『素晴らしい一日』などのイ・ユンギ監督の最新作。
主演は日本でも人気者らしいキム・ナムギルで、劇場は彼目当ての女性客ばかりだった。共演は『哭声/コクソン』のチョン・ウヒ。

保険会社の調査員をしているイ・ガンス(キム・ナムギル)は、ある事故の調査中にほかの人には見えない女性の姿を見てしまう。それは彼が調査していた事故の被害者であるタン・ミソ(チョン・ウヒ)という女性の霊だった。
霊といってもタン・ミソは死んではおらず、交通事故で意識不明の状態にある。実はタン・ミソは視覚障がい者であり、事故の当日遠くの街まで出かけ、しかも白杖を持たない状態で車にはねられていた。なぜ彼女はそんな場所へと出かけて行ったのか、なぜ白杖を持っていなかったのか。イ・ガンスは事故の加害者の示談に持ち込みたいという意向もあって、タン・ミソのことを詳しく調べることになる。
タン・ミソ本人は意識不明だから本来は代理人との交渉になるはずが、なぜかイ・ガンスの目の前にタン・ミソ本人の生霊が現れてしまう。となれば、本人に事故の詳細を聞けばいいわけだけれど、話は急には進まない。タン・ミソの霊はなぜか目が見えるらしく、病院内を歩き回って初めて見る世界の様子を楽しんでいるようで、イ・ガンスは次第に彼女のペースに乗せられていくことになる。それにしてもなぜイ・ガンスだけに彼女の霊が見えるのだろうか?
※ 以下、ネタバレあり! 結末にも触れているので要注意!!

この作品の設定では、個々の霊というものはなく、霊そのものはたったひとつのものなのかもしれない。それが生きている人それぞれに分有されていて、その人が亡くなるとまた元のひとつの霊へと戻っていく……。
イ・ガンスには病気で亡くなった妻ソンファ(イム・ファヨン)がいて、その境遇はタン・ミソとよく似ている。だからかどうかはわからないのだけれど、ふたりの霊はつながっているようでもある。というよりはタン・ミソの霊とかソンファの霊という個々の霊というよりも、ひとつの霊が別の姿を見せているという解釈すらできるように描かれているのだ。
タン・ミソとソンファの過去が語られるうちに、それまでタン・ミソの姿をしていた霊がソンファの姿に変わっていく。タン・ミソが初めてイ・ガンスの姿を見たのは、ソンファが瀕死の状態になったときである。これもソンファの霊とタン・ミソの霊は同じものという証拠なのではないか。
霊が現れるのはこの世に未練があるからで、この作品でもタン・ミソはイ・ガンスに頼みごとをすることになる。しかもソンファの霊とタン・ミソの霊はふたりで協力し合い、イ・ガンスを妻の死から立ち直らせた上に、さらに新たな仕事を成就させることになる。多分、ふたりの霊はスッキリと成仏できたんじゃないだろうか。
タン・ミソとソンファのエピソードはなかなか哀しいエピソードで泣かせる話だった。イ・ユンギ作品は、たとえば『愛してる、愛してない』では、男女が別れを切り出したあとの微妙で繊細な時間をじっくりと描いていた。そうした作品と比べると、この作品は色々と詰め込んでエンターテインメントを目指しているようにも思え、詰め込みすぎで大味になった感も……。視覚障がい者の事故と不治の病というダブルパンチはかなりヘビーで、片方だけでも胃もたれしそう。それでも霊となって登場するチョン・ウヒのキャラには妙に無邪気な明るさがあって、それがこの作品を救っているように思えた。

主演は日本でも人気者らしいキム・ナムギルで、劇場は彼目当ての女性客ばかりだった。共演は『哭声/コクソン』のチョン・ウヒ。

保険会社の調査員をしているイ・ガンス(キム・ナムギル)は、ある事故の調査中にほかの人には見えない女性の姿を見てしまう。それは彼が調査していた事故の被害者であるタン・ミソ(チョン・ウヒ)という女性の霊だった。
霊といってもタン・ミソは死んではおらず、交通事故で意識不明の状態にある。実はタン・ミソは視覚障がい者であり、事故の当日遠くの街まで出かけ、しかも白杖を持たない状態で車にはねられていた。なぜ彼女はそんな場所へと出かけて行ったのか、なぜ白杖を持っていなかったのか。イ・ガンスは事故の加害者の示談に持ち込みたいという意向もあって、タン・ミソのことを詳しく調べることになる。
タン・ミソ本人は意識不明だから本来は代理人との交渉になるはずが、なぜかイ・ガンスの目の前にタン・ミソ本人の生霊が現れてしまう。となれば、本人に事故の詳細を聞けばいいわけだけれど、話は急には進まない。タン・ミソの霊はなぜか目が見えるらしく、病院内を歩き回って初めて見る世界の様子を楽しんでいるようで、イ・ガンスは次第に彼女のペースに乗せられていくことになる。それにしてもなぜイ・ガンスだけに彼女の霊が見えるのだろうか?
※ 以下、ネタバレあり! 結末にも触れているので要注意!!

この作品の設定では、個々の霊というものはなく、霊そのものはたったひとつのものなのかもしれない。それが生きている人それぞれに分有されていて、その人が亡くなるとまた元のひとつの霊へと戻っていく……。
イ・ガンスには病気で亡くなった妻ソンファ(イム・ファヨン)がいて、その境遇はタン・ミソとよく似ている。だからかどうかはわからないのだけれど、ふたりの霊はつながっているようでもある。というよりはタン・ミソの霊とかソンファの霊という個々の霊というよりも、ひとつの霊が別の姿を見せているという解釈すらできるように描かれているのだ。
タン・ミソとソンファの過去が語られるうちに、それまでタン・ミソの姿をしていた霊がソンファの姿に変わっていく。タン・ミソが初めてイ・ガンスの姿を見たのは、ソンファが瀕死の状態になったときである。これもソンファの霊とタン・ミソの霊は同じものという証拠なのではないか。
霊が現れるのはこの世に未練があるからで、この作品でもタン・ミソはイ・ガンスに頼みごとをすることになる。しかもソンファの霊とタン・ミソの霊はふたりで協力し合い、イ・ガンスを妻の死から立ち直らせた上に、さらに新たな仕事を成就させることになる。多分、ふたりの霊はスッキリと成仏できたんじゃないだろうか。
タン・ミソとソンファのエピソードはなかなか哀しいエピソードで泣かせる話だった。イ・ユンギ作品は、たとえば『愛してる、愛してない』では、男女が別れを切り出したあとの微妙で繊細な時間をじっくりと描いていた。そうした作品と比べると、この作品は色々と詰め込んでエンターテインメントを目指しているようにも思え、詰め込みすぎで大味になった感も……。視覚障がい者の事故と不治の病というダブルパンチはかなりヘビーで、片方だけでも胃もたれしそう。それでも霊となって登場するチョン・ウヒのキャラには妙に無邪気な明るさがあって、それがこの作品を救っているように思えた。
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