『ウィッチ』 すべてを脱ぎ捨て自由な森へ
ロバート・エガースの初監督作品。サンダンス映画祭で監督賞を受賞するなど評判になった作品。
『スプリット』のアニヤ・テイラー=ジョイの主演作。

舞台は1630年のアメリカ・ニューイングランド。篤い信仰心のためにコミュニティを追放されることになったウィリアム(ラルフ・アイネソン)とその家族たちは、ゲートで区切られた安全な場所を離れ、森の近くの荒地に住むことになる。長女トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が赤子のサムを相手に「いないいないばあ」で遊んでいると、サムは本当に消えてしまう。森に住む“何か”のせいなのか家族に不運なことが続いていくと、次第にトマシンは魔女ではないのかという疑いをかけられることになる。
人が森を切り開きゲートで周りを囲い群れて住んだりするのは、外敵から身を守るために助け合う必要があるということなんだろう(それだけ森のなかは恐ろしい)。清教徒たちの信じる神がそれぞれのコミュニティごとに罪を量るわけではないとは思うのだけれど、コミュニティのなかで不幸が起きると罪を犯した人が探されることになる。信仰に厳格すぎるウィリアム一家はコミュニティにとってかえって目障りだったのか、理由をつけて追放されることになってしまう。
同じことはウィリアム一家の内部でも生じる。新居を構えた森のそばで不幸が続くと、誰かが神に背いた(悪魔と契約した)から一家に災いがもたらされたということになり、その原因として魔女が生み出されることになる。まだ無邪気な双子は除かれるとして、母親からの寵愛を受ける長男ケイレブにも問題はない。そうなるとケイレブの視線に気づいても、それをもてあそぶ程度には成熟しつつあるトマシンは危険な存在と見なされやすいのかもしれない。
森のなかに住んでいる人のなかには、コミュニティから魔女として追放されたふしだらな女たちもいたのだろう。原題は「The VVitch」。「W」ではなく「V」がふたつ。「Vitch」という綴りが「bitch」と発音が似ているのかどうかはよくわからないのだけれど、『ウィッチ』はビッチが救済される映画のようにも思えた。信仰でかんじがらめの生活からすべてを脱ぎ捨てて自由な森へ行こうと誘う作品なのだ。


この作品はトマシンが魔女とされていく過程をじっくり見せていくというもので、ホラー映画というジャンルに分類されるものの、モンスターが暴れまわったりするようなものではない。得たいの知れない森の恐ろしさは次第にウィリアム一家を追いつめていき、森からやってくるウサギやカラスすら魔女の使いのようにも思えてくる雰囲気を醸し出している。飼っている黒山羊の禍々しさも特筆すべき点だろう。
ミレーの絵画風なカットとか、ろうそくの灯で撮影された宗教画のような場面など、丁寧な画づくりはとても好感が持てるし、静かに緊張感を高めていくサウンドもいい。物語の展開には驚くようなものはないかもしれないけれど、何度も見たいと思わせるような良品に仕上がっているんじゃないかと思う。
出演陣ではこの作品のあと『スプリット』へとジャンプ・アップすることになるアニヤ・テイラー=ジョイが出色。当時19歳だったというアニヤ・テイラー=ジョイは意外に幼くも見える部分もあるのだけれど、弟の視線を集めてしまう白い胸元が血で赤く染まるあたりにエロスを感じさせる。魔女に魅せられ熱に浮かされるように事切れる弟ケイレブを演じたハーヴィー・スクリムショウの熱演も見どころ。


『スプリット』のアニヤ・テイラー=ジョイの主演作。

舞台は1630年のアメリカ・ニューイングランド。篤い信仰心のためにコミュニティを追放されることになったウィリアム(ラルフ・アイネソン)とその家族たちは、ゲートで区切られた安全な場所を離れ、森の近くの荒地に住むことになる。長女トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が赤子のサムを相手に「いないいないばあ」で遊んでいると、サムは本当に消えてしまう。森に住む“何か”のせいなのか家族に不運なことが続いていくと、次第にトマシンは魔女ではないのかという疑いをかけられることになる。
人が森を切り開きゲートで周りを囲い群れて住んだりするのは、外敵から身を守るために助け合う必要があるということなんだろう(それだけ森のなかは恐ろしい)。清教徒たちの信じる神がそれぞれのコミュニティごとに罪を量るわけではないとは思うのだけれど、コミュニティのなかで不幸が起きると罪を犯した人が探されることになる。信仰に厳格すぎるウィリアム一家はコミュニティにとってかえって目障りだったのか、理由をつけて追放されることになってしまう。
同じことはウィリアム一家の内部でも生じる。新居を構えた森のそばで不幸が続くと、誰かが神に背いた(悪魔と契約した)から一家に災いがもたらされたということになり、その原因として魔女が生み出されることになる。まだ無邪気な双子は除かれるとして、母親からの寵愛を受ける長男ケイレブにも問題はない。そうなるとケイレブの視線に気づいても、それをもてあそぶ程度には成熟しつつあるトマシンは危険な存在と見なされやすいのかもしれない。
森のなかに住んでいる人のなかには、コミュニティから魔女として追放されたふしだらな女たちもいたのだろう。原題は「The VVitch」。「W」ではなく「V」がふたつ。「Vitch」という綴りが「bitch」と発音が似ているのかどうかはよくわからないのだけれど、『ウィッチ』はビッチが救済される映画のようにも思えた。信仰でかんじがらめの生活からすべてを脱ぎ捨てて自由な森へ行こうと誘う作品なのだ。


この作品はトマシンが魔女とされていく過程をじっくり見せていくというもので、ホラー映画というジャンルに分類されるものの、モンスターが暴れまわったりするようなものではない。得たいの知れない森の恐ろしさは次第にウィリアム一家を追いつめていき、森からやってくるウサギやカラスすら魔女の使いのようにも思えてくる雰囲気を醸し出している。飼っている黒山羊の禍々しさも特筆すべき点だろう。
ミレーの絵画風なカットとか、ろうそくの灯で撮影された宗教画のような場面など、丁寧な画づくりはとても好感が持てるし、静かに緊張感を高めていくサウンドもいい。物語の展開には驚くようなものはないかもしれないけれど、何度も見たいと思わせるような良品に仕上がっているんじゃないかと思う。
出演陣ではこの作品のあと『スプリット』へとジャンプ・アップすることになるアニヤ・テイラー=ジョイが出色。当時19歳だったというアニヤ・テイラー=ジョイは意外に幼くも見える部分もあるのだけれど、弟の視線を集めてしまう白い胸元が血で赤く染まるあたりにエロスを感じさせる。魔女に魅せられ熱に浮かされるように事切れる弟ケイレブを演じたハーヴィー・スクリムショウの熱演も見どころ。
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