『聖杯たちの騎士』 人生は解けないパズル
『天国の日々』『トゥ・ザ・ワンダー』などのテレンス・マリック監督の最新作。
原題は「Knight of Cups」で、通常「カップの騎士」などと呼ばれるタロットカードの1枚のこと。

この作品もテレンス・マリックの自伝的なものを含んでいるらしい。『ツリー・オブ・ライフ』にも描かれていた弟の死や頑固な父親といった背景は、この作品とも共通しているようにも感じられる。妙に曖昧な言い方にならざるを得ないのは、物語がはっきりとわかるようなものではないから。すべてが過去から振り返ったイメージのように展開していくのも『ツリー・オブ・ライフ』以来、より一層徹底化してきている。
主人公リック(クリスチャン・ベイル)はハリウッドで成功した脚本家という設定になっていて、夜な夜なパーティー三昧で過ごしていても物足りないのか「ここではないどこか」を求めて彷徨っていく。タイトルにもあるようにリックは騎士とされていて、女性が求めるべき宝(=聖杯)とされている。
そのようにして出会う女性が6人いて、現れては消えていく。最後の女性を演じるのがナタリー・ポートマンで、それによってリックが新たなスタートを切るつもりになったということでは、彼女によってリックは救われたということなのかもしれない。

ナレーションはリックに対して「聖杯を探索するために遣わした」などと言っているのだから、語り部となっているのは神なのかもしれない。そして神に祈るようなリックのつぶやきや、女性との想い出の時を中心にして、エマニュエル・ルベツキの撮影した美しい映像が展開していく。
監督独自のスタイルがあるというのはいいのかもしれないけれど、どの作品も同じようなものに見えてしまう気もする。『聖杯たちの騎士』のなかでも、海辺でリックが女性と戯れるイメージも、パーティーで前後不覚に陥ったりホテルにふたりの女性を招いていちゃつくという怠惰な生活も、すべてが同じような美しいイメージのなかに収まってしまうのはどうなのかとも思う。
というわけでエンターテインメントを求める人は遠慮したほうが無難な作品で、上映開始後15分くらいで退出した観客もいた。さすがに早すぎるだろうとそのときは思っていたのだけれど、多分15分観ても2時間観てもあまり変わりがないとも言える。すでにその時点で弟の死とか父親の存在のことは示されていて、あとは代わる代わる新しい女優が登場してくるだけだから。中盤のケイト・ブランシェットとか最後のナタリー・ポートマンには出会えないけれど……。
「人生は解けないパズル」なんてセリフがどこかにあったような気もするのだけれど、どういう文脈だったかは忘れた。ちょっと前(昨年末)に観た作品だからかもしれないし、緩急のないイメージ展開に夢見心地だったのかもしれない。そんな人生訓がピッタリとはまるかどうかわからないけれど、スッキリした気分になる作品ではないような気がする。






原題は「Knight of Cups」で、通常「カップの騎士」などと呼ばれるタロットカードの1枚のこと。

この作品もテレンス・マリックの自伝的なものを含んでいるらしい。『ツリー・オブ・ライフ』にも描かれていた弟の死や頑固な父親といった背景は、この作品とも共通しているようにも感じられる。妙に曖昧な言い方にならざるを得ないのは、物語がはっきりとわかるようなものではないから。すべてが過去から振り返ったイメージのように展開していくのも『ツリー・オブ・ライフ』以来、より一層徹底化してきている。
主人公リック(クリスチャン・ベイル)はハリウッドで成功した脚本家という設定になっていて、夜な夜なパーティー三昧で過ごしていても物足りないのか「ここではないどこか」を求めて彷徨っていく。タイトルにもあるようにリックは騎士とされていて、女性が求めるべき宝(=聖杯)とされている。
そのようにして出会う女性が6人いて、現れては消えていく。最後の女性を演じるのがナタリー・ポートマンで、それによってリックが新たなスタートを切るつもりになったということでは、彼女によってリックは救われたということなのかもしれない。

ナレーションはリックに対して「聖杯を探索するために遣わした」などと言っているのだから、語り部となっているのは神なのかもしれない。そして神に祈るようなリックのつぶやきや、女性との想い出の時を中心にして、エマニュエル・ルベツキの撮影した美しい映像が展開していく。
監督独自のスタイルがあるというのはいいのかもしれないけれど、どの作品も同じようなものに見えてしまう気もする。『聖杯たちの騎士』のなかでも、海辺でリックが女性と戯れるイメージも、パーティーで前後不覚に陥ったりホテルにふたりの女性を招いていちゃつくという怠惰な生活も、すべてが同じような美しいイメージのなかに収まってしまうのはどうなのかとも思う。
というわけでエンターテインメントを求める人は遠慮したほうが無難な作品で、上映開始後15分くらいで退出した観客もいた。さすがに早すぎるだろうとそのときは思っていたのだけれど、多分15分観ても2時間観てもあまり変わりがないとも言える。すでにその時点で弟の死とか父親の存在のことは示されていて、あとは代わる代わる新しい女優が登場してくるだけだから。中盤のケイト・ブランシェットとか最後のナタリー・ポートマンには出会えないけれど……。
「人生は解けないパズル」なんてセリフがどこかにあったような気もするのだけれど、どういう文脈だったかは忘れた。ちょっと前(昨年末)に観た作品だからかもしれないし、緩急のないイメージ展開に夢見心地だったのかもしれない。そんな人生訓がピッタリとはまるかどうかわからないけれど、スッキリした気分になる作品ではないような気がする。
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