『古都』 京都人の自信のほどがうかがえる作品

 川端康成原作の『古都』は過去に二度映画化されているが、今回はさらにその続きの物語も含めて現代風にアレンジされている。
 監督はYuki Saito。ハリウッドで映画製作を学んできた人物らしい。名前は某女性タレントっぽいけれど恐らく男性。

Yuki Saito 『古都』 佐田千重子(松雪泰子)と舞(橋本愛)。京都の観光名所が色々登場する。


 京都で古くから続く呉服店を切り盛りしているのは佐田千重子(松雪泰子)。周囲は次第に新築マンションなどが立ち並ぶようになり、京都の街並みも変わりつつある。そんななか千重子が呉服店存続にこだわるのは、彼女が佐田家にたまたま拾われた捨て子だったから。次の世代を担うかもしれない舞(橋本愛)は現在就職活動中で、家を継ぐよりも自分の可能性を試したいと考えているのだが……。

 原作は読んだことがないのだが、1980年の市川崑版の『古都』だけは観ることができた(1963年の中村登版も評判がいいらしい)。この作品は生き別れた双子の物語で、一方の千重子は名家のお嬢さんとして育てられ、他方の苗子は北山杉を育てる苦労人として育っていく。たまたま縁があって祇園祭の日に出会ったふたりだが、身分の違いなどもあって一晩だけ一緒に過ごしただけで別れることになる。
 今回の現代版『古都』では、生き別れた双子の話も回想シーンとして描きつつも、中心となるのはそれぞれの娘たちの話となる。千重子の娘・舞(橋本愛)と、苗子の娘・結衣(成海璃子)は互いのことを知らない。それぞれ人生の岐路にあり、舞は社会へ出ることを望んで家業を継がせたい母親と対立し、結衣は絵画を学びにフランスへ留学したものの壁にぶち当たることになる。

 もともと川端康成の原作の意図は、変わりつつある京都の姿を残すことにあったらしい。この作品でも京都自体が主役となっている。回想シーンのくすんだ色の紅葉が、現代へと移行するとともに赤く色づいていき、鴨川を自転車で疾走する舞の姿からそのまま京都の情景を上空から捉えるという連なりには、京都そのものが主役であるという意識が表れていたと思う。
 ただ市川版と比べてしまうと、京都の町屋のなかの陰影がほとんど感じられなかったようにも思える。とはいえ、すでにもう町屋自体がなくなりつつあって、残ったものも外国人観光客のツアールートになっているとなると、変わりつつある京都を捉えているとも言えるのかもしれない。

『古都』 舞(橋本愛)はほんまもんの帯を締めて日本舞踊を舞う。

 もともと捨てられた子であった千重子は恵まれた生活があったものの佐田家の存続というものに縛られることになり、それは娘の舞にも受け継がれる。一方で貧乏暮らしだった苗子には比較的自由があり、その娘の結衣も特段何かに縛られることはない。それでも舞と結衣に共通するのは、自分が何をしたいのかがまだわかっていないということ。
 こんなことは若いうちには誰にでもあることなのだけれど、これに関しての舞の父親(伊原剛志)の説明がふるっている。京都人は「ほんまもん」に囲まれて「ほんまもん」を見抜く力がある。しかし目が肥えているからこそ、かえって自分で何をすればいいのかわからなくなる……。
 ほとんど傲慢スレスレの理屈なのだが、それだけに京都人の自信のほどがうかがえる。「ほんまもん」などわからない田舎もんとしては皮肉も言いたくなのだが、そんな皮肉すらも京都人のほうが堂に入っているわけでちょっと太刀打ちできそうにない。

 とにもかくにもこの作品にはそんな「ほんまもん」が様々登場する。京都自体が「ほんまもん」なのだろうし、パフォーマンスを披露する書道の先生だとか、お茶だとか日本舞踊だとか、京都が世界に誇る「ほんまもん」を見せてくれる。東山魁夷の絵画「北山初雪」から着想されたらしき帯もそうした「ほんまもん」のひとつだろう。
 最後はその帯を締めた橋本愛がフランスで日本舞踊を披露する。長い髪をアップにして舞を見せる橋本愛がとても凛々しくて見惚れた。セーヌ川沿いに着物で佇むという構図はよくわからないけれど……。

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Date: 2016.12.11 Category: 日本映画 Comments (0) Trackbacks (1)

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>>古都 from 象のロケット
佐田千重子は京都室町に代々続く佐田呉服店を継いで20年。 経営は楽ではないが、夫・竜助共々、ゆくゆくは一人娘・舞に後を継いでもらいたいと思っている。 だが就職活動中の舞は、自分が何をやりたいのかが分からずにいた。 一方、千重子の双子の妹・中田苗子は、京都のはずれの北山杉の里で夫と林業を営んでいる。 一人娘の結衣はパリで絵画を勉強中だが、何を描くべきなのかが分からずにいた…。 ヒューマンドラマ。 >READ

2016.12.16

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