『孤独のススメ』 孤独な堅物男が変わるとき
ディーデリク・エビンゲという新鋭監督の撮ったオランダ映画。
ちなみに原題は「Matterhorn」。最後に登場するスイスの山のことで、邦題はちょっと内容とズレている。
この作品はロッテルダム国際映画祭ほかで観客賞を受賞しており、今年4月に日本でも劇場公開され、今月になってソフトがリリースされた。

妻を亡くし、息子とは音信不通のフレッド(トン・カス)は、孤独で単調な毎日を過ごしている。6時ぴったりに祈りを捧げて食事を採り、日曜の礼拝にも欠かさず出席する。そんなフレッドの家にテオ(ロネ・ファント・ホフ)という男が舞い込んでくるところから物語は始まる。
テオは言ってみれば白痴みたいな存在で、ほとんどしゃべることもなく、フレッドの言うことは忠実に守る。なぜかヤギの鳴きマネがうまく、それで子供たちに喜ばれたりもする。そんなテオとの共同生活によって堅物だったフレッドが少しずつ変わっていく。
テオのような純粋なキャラクターはともすればあくどいものになりそうだけれど、テオは単なる薄汚いおじさんというのがうまいところだろうか。しかもヤギのマネで子供たちに喜ばれるという描写も、それほどおもしろいとも思えないわけで、ヒゲ面のおじさんが子供たちにすり寄っていく姿は微妙……。とぼけたユーモアを感じなくもないし、子供たちがテオの純粋さを見抜いているのかもしれない。
『孤独のススメ』はLGBT映画祭などでも賞を受賞している。というのはテオとフレッドの関係がそんなふうに見えなくもないからだろう。テオはフレッドの亡くなった妻の服などを着てみたりしているうちに、フレッドが語っていた結婚というものが素晴らしいものと考えたものかもしれない。そのうちふたりは教会でふたりだけの結婚式を挙げることになるのだが、ふたりは性的関係があるわけではない。
音信不通となっているヨハンという息子は同性愛者であり、それが原因でフレッドはヨハンを追い出したまま今まで許すことができないでいる。そのことがフレッドとテオの人間的なつながりを生むきっかけでもあり、フレッドはテオと触れ合うことで息子ヨハンのことを受け入れる準備が整うことになる。
冒頭からバッハの調べがフレッドの単調な生活の音楽となっているわけだが、ラストにヨハンが「This Is My Life」を情感豊かに歌い上げて一気に涙を誘う。「This Is My Life」の歌詞もヨハンの人生そのもののようで、ヨハンとフレッドの視線が交わる場面が何とも感動的だった。いくつもの映画祭で観客賞を受賞したということも納得。
よくわからなかったのはあちこちでハエが飛び回っているところ。フレッドの家は神経質なくらいに清潔なのに、浮浪者気味のテオがいるからか何度もハエの羽音が……。フレッドとテオを巡って三角関係のようになる隣人カンプス(ポーギー・フランセ)の家にも、ハエ取り機みたいなものまで設置されているし、オランダはハエが多いのだろうか?
ちなみに原題は「Matterhorn」。最後に登場するスイスの山のことで、邦題はちょっと内容とズレている。
この作品はロッテルダム国際映画祭ほかで観客賞を受賞しており、今年4月に日本でも劇場公開され、今月になってソフトがリリースされた。

妻を亡くし、息子とは音信不通のフレッド(トン・カス)は、孤独で単調な毎日を過ごしている。6時ぴったりに祈りを捧げて食事を採り、日曜の礼拝にも欠かさず出席する。そんなフレッドの家にテオ(ロネ・ファント・ホフ)という男が舞い込んでくるところから物語は始まる。
テオは言ってみれば白痴みたいな存在で、ほとんどしゃべることもなく、フレッドの言うことは忠実に守る。なぜかヤギの鳴きマネがうまく、それで子供たちに喜ばれたりもする。そんなテオとの共同生活によって堅物だったフレッドが少しずつ変わっていく。
テオのような純粋なキャラクターはともすればあくどいものになりそうだけれど、テオは単なる薄汚いおじさんというのがうまいところだろうか。しかもヤギのマネで子供たちに喜ばれるという描写も、それほどおもしろいとも思えないわけで、ヒゲ面のおじさんが子供たちにすり寄っていく姿は微妙……。とぼけたユーモアを感じなくもないし、子供たちがテオの純粋さを見抜いているのかもしれない。
『孤独のススメ』はLGBT映画祭などでも賞を受賞している。というのはテオとフレッドの関係がそんなふうに見えなくもないからだろう。テオはフレッドの亡くなった妻の服などを着てみたりしているうちに、フレッドが語っていた結婚というものが素晴らしいものと考えたものかもしれない。そのうちふたりは教会でふたりだけの結婚式を挙げることになるのだが、ふたりは性的関係があるわけではない。
音信不通となっているヨハンという息子は同性愛者であり、それが原因でフレッドはヨハンを追い出したまま今まで許すことができないでいる。そのことがフレッドとテオの人間的なつながりを生むきっかけでもあり、フレッドはテオと触れ合うことで息子ヨハンのことを受け入れる準備が整うことになる。
冒頭からバッハの調べがフレッドの単調な生活の音楽となっているわけだが、ラストにヨハンが「This Is My Life」を情感豊かに歌い上げて一気に涙を誘う。「This Is My Life」の歌詞もヨハンの人生そのもののようで、ヨハンとフレッドの視線が交わる場面が何とも感動的だった。いくつもの映画祭で観客賞を受賞したということも納得。
よくわからなかったのはあちこちでハエが飛び回っているところ。フレッドの家は神経質なくらいに清潔なのに、浮浪者気味のテオがいるからか何度もハエの羽音が……。フレッドとテオを巡って三角関係のようになる隣人カンプス(ポーギー・フランセ)の家にも、ハエ取り機みたいなものまで設置されているし、オランダはハエが多いのだろうか?
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