『ザ・ギフト』 やってはいけないことをやってしまう男
『ブラック・スキャンダル』でも役者としていい味を出していたジョエル・エドガートンの監督としてデビュー作。
ジョエル・エドガートンは『奪還者』や現在公開中の『ジェーン』(ナタリー・ポートマン主演)の脚本も手がけているらしくなかなかの才人である。

サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)はサイモンの故郷に戻り新居を構える。久しぶりに戻った故郷でサイモンとロビンはサイモンの同級生と名乗るゴード(ジョエル・エドガートン)と出会う。その場は社交辞令的にあいさつを交わしたものの、サイモンはゴードのことをよく覚えていない。しかし、ゴードはサイモンの新居に贈り物を届けるようになり……。
ゴードの贈り物攻撃はそれだけでも不気味である。贈り物には必ず返礼がなされなければならないということは社会において根本的なものだからで、ゴードは贈り物の見返りに何を求めているのだろうかということが気になってくる。
『ザ・ギフト』は典型的なサイコスリラーといった感じで始まる作品で、こうした作品では後半になるとモンスターが馬脚を露わして暴れ出しという展開になりそうなものだが、そんなふうには進まないのがうまいところ。エドガートン監督自身が手がけた脚本がよくできていて、結末には「なるほど」と唸ることになるだろうと思う。

ゴードは迷惑な隣人であることは確かなのだが、それに対するロビンの神経質な反応もちょっと過敏でもある。ロビンの強迫観念がゴードをモンスターだと思い込ませているのかとも思わせる(ロビンはびくついていて物音などにも過剰に反応するものの、結局はほとんど何も起きない)。
そんな強迫的なロビンの調査が見出すのは、旦那であるサイモンのほうがモンスターであったという事実だ。サイモンは人を蹴落としてでものし上がろうとする人間で、現在の仕事でも他人を追い落とすことで成功を勝ち取ろうとしている。ゴードはサイモンから酷い仕打ちを受け、人生を棒に振ったと考えているのだ。
しかしサイモンがモンスターだと判明しただけでは終わらない。実は最後の贈り物はすでに仕掛けられているのだが、観客はもちろんのことサイモンもロビンもそれを知らない。
ゴードは最初にサイモンに接触したときに聖書の言葉を示している。「彼は穴を掘って、それを深くし、おのれの作った穴に落ち込む」というもので、言ってみれば自業自得ということだろう。それでもそう言いつつもゴードは悔い改める機会をも与えている。ゴードが「いいことは悪いことから生まれる」という意味不明な言葉をサイモンに投げかけていたのは、過去にいじめはあったけれどサイモンが態度を改めゴードに謝罪するならば許すということだったのだろう。しかしサイモンはそれを無視することになる。
ゴードがやったことは一番やってはいけないことのように見えて、実は何もしていないという意味ではスマートだった(不法侵入とかはしているけれど)。それでも最後の贈り物を受け取ったサイモンはことあるごとにイヤな気持ちになるだろうことは推測されるわけで、仕返しとしても決まっている。ゴードのことを気にかけていたロビンの胸のつかえも取れたであろうし、スッキリしないのはサイモンだけで意外に丸く収まったような気もする。
ジョエル・エドガートンは『奪還者』や現在公開中の『ジェーン』(ナタリー・ポートマン主演)の脚本も手がけているらしくなかなかの才人である。

サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)はサイモンの故郷に戻り新居を構える。久しぶりに戻った故郷でサイモンとロビンはサイモンの同級生と名乗るゴード(ジョエル・エドガートン)と出会う。その場は社交辞令的にあいさつを交わしたものの、サイモンはゴードのことをよく覚えていない。しかし、ゴードはサイモンの新居に贈り物を届けるようになり……。
ゴードの贈り物攻撃はそれだけでも不気味である。贈り物には必ず返礼がなされなければならないということは社会において根本的なものだからで、ゴードは贈り物の見返りに何を求めているのだろうかということが気になってくる。
『ザ・ギフト』は典型的なサイコスリラーといった感じで始まる作品で、こうした作品では後半になるとモンスターが馬脚を露わして暴れ出しという展開になりそうなものだが、そんなふうには進まないのがうまいところ。エドガートン監督自身が手がけた脚本がよくできていて、結末には「なるほど」と唸ることになるだろうと思う。

ゴードは迷惑な隣人であることは確かなのだが、それに対するロビンの神経質な反応もちょっと過敏でもある。ロビンの強迫観念がゴードをモンスターだと思い込ませているのかとも思わせる(ロビンはびくついていて物音などにも過剰に反応するものの、結局はほとんど何も起きない)。
そんな強迫的なロビンの調査が見出すのは、旦那であるサイモンのほうがモンスターであったという事実だ。サイモンは人を蹴落としてでものし上がろうとする人間で、現在の仕事でも他人を追い落とすことで成功を勝ち取ろうとしている。ゴードはサイモンから酷い仕打ちを受け、人生を棒に振ったと考えているのだ。
しかしサイモンがモンスターだと判明しただけでは終わらない。実は最後の贈り物はすでに仕掛けられているのだが、観客はもちろんのことサイモンもロビンもそれを知らない。
ゴードは最初にサイモンに接触したときに聖書の言葉を示している。「彼は穴を掘って、それを深くし、おのれの作った穴に落ち込む」というもので、言ってみれば自業自得ということだろう。それでもそう言いつつもゴードは悔い改める機会をも与えている。ゴードが「いいことは悪いことから生まれる」という意味不明な言葉をサイモンに投げかけていたのは、過去にいじめはあったけれどサイモンが態度を改めゴードに謝罪するならば許すということだったのだろう。しかしサイモンはそれを無視することになる。
ゴードがやったことは一番やってはいけないことのように見えて、実は何もしていないという意味ではスマートだった(不法侵入とかはしているけれど)。それでも最後の贈り物を受け取ったサイモンはことあるごとにイヤな気持ちになるだろうことは推測されるわけで、仕返しとしても決まっている。ゴードのことを気にかけていたロビンの胸のつかえも取れたであろうし、スッキリしないのはサイモンだけで意外に丸く収まったような気もする。
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