『秘密 THE TOP SECRET』 映画のあとはマンガをお楽しみください?
脚本には高橋泉、大友啓史、LEE SORK JUN、KIM SUN MEE。
原作は清水玲子の同名人気コミック。
キャストは生田斗真、岡田将生、吉川晃司、松坂桃李、 大森南朋、栗山千明、椎名桔平など。

人の脳をスキャンすることで、見ていた記憶を映像化してしまうという画期的な捜査手法が開発されたという設定の作品。「人の記憶を勝手に覗いていいのか」という問題もあるのだが、この『秘密 THE TOP SECRET』の設定では脳をスキャンするときは頭蓋骨を切り取って脳を露出させ機械を埋め込む作業がいるために、死んだ人にしか使えないものらしい。
だから冒頭から『ハンニバル』的な結構なえげつない場面が展開されたりもするので、グロいのが苦手な人はちょっと要注意かも。スキャンする映像も被害者が殺される場面だったり、殺人鬼が大量殺人を行っている瞬間とかが再現されることになるわけで陰惨な描写が続く。スキャン映像を見る側も頭にオウムのヘッドギアみたいな機器を装着させるのは、そうした映像を見た人があまりにおぞましくて狂っていくあたりをオウムの洗脳のイメージと重ねているのかもしれない。
人の記憶を映像化するというシステムが本当に開発されたらスゴいことだけれど、映画の回想シーンというものはすべてがそんな映像なわけで、この作品では一応スキャンした映像にはぼんやりした感じのエフェクトがなされていたりもする。
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』のドキュメンタリー映画監督が映像に「客観性などない」と語っていたように、死者の脳をスキャンした映像は死者の主観的な記憶が再現されることになり、恐怖によって見える幻覚すらも映像化されてしまう。だから未だに捜査の証拠としては認められていないのだという。幻想が映像化されるのならば、当然のごとく夢だって映像化されるわけで、そんな展開もあり得たのかもしれない。あれこれとおもしろそうな題材は揃っているにも関わらず、脚本の出来がどうにもよくないために混乱していたように感じられた。
物語の中心となるのは連続殺人鬼の貝沼(吉川晃司)と薪室長(生田斗真)の関係にあるのだが、そこになぜか絹子というサイコパスの事件も絡んでくる。原作ではどうやら別のエピソードだったらしいのに、映画では無理やり結びつけようとしたために、長くて人が殺されるばかりのまとまりに欠けるものになってしまったようだ。
映画版だけを観た人にとってはよくわからない部分も多かったと思う。薪室長がなぜかタートルネックめいたものをシャツの下に着ているのだが、結局最後まで説明はない。最後の場面ではそのタートルネックを脱いでいて、何か変化があったはずなのだが知らんぷりを決めこんでいるのだ。
マンガがとてもおもしろいから、そっちでそのあたりは補ってくださいということなのだろうか。たしかにマンガの宣伝としては効果ありだと思うのだが、色々と評判を下げることになった人も多いんじゃないだろうか。ちなみにマンガは新シリーズとして現在も連載中だとか。
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