『緑はよみがえる』 緑なき白銀の世界

 『木靴の樹』エルマンノ・オルミ監督の最新作。
 この『緑はよみがえる』に合わせて『木靴の樹』のほうも全国で順次再映されているとのこと。

エルマンノ・オルミ 『緑はよみがえる』 色彩を消したような白銀の世界が続く。


 1917年のイタリア。白銀の雪に埋もれるような塹壕でイタリア軍兵士たちはオーストリア軍と対峙している。敵の姿は見えないが遠くから砲弾の音は聞こえる。司令部からは現地を知らない無茶の命令が届き、塹壕のなかの兵士たちは困惑するのだが……。

 戦争を描いた映画だが、戦闘シーンはほとんどない。それでもオペラ好きのイタリア人が朗々と声を響かせるなどしているうちに、いつの間にか戦火は近づいてきている。司令部からの命令に従って塹壕を出て雪のなかを進もうとすると、次の瞬間、どこからか銃撃されて一歩も進むことができない。次第に砲弾の音は近づきつつあり、塹壕の兵士たちは追い詰められていく。
 とても静かな映画で、演出に派手なところはない。昼間は白銀の世界、夜になると月明かりで辺り一面は幻想的に染められ、最後まで色を消したような映像が続く。これは最後のほうで引用される第一次大戦のものと思わしきモノクロの記録フィルムとシームレスにつながっていく。そんななかで月明かりに浮かび上がるカラマツが黄金色に色づく場面はとても印象的だった(題名にあるような緑はほとんど感じられない)。
 あまり目立たない主人公らしき男は「人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」と訴えかける。その訴えは真っ当なのだけれど、イタリア軍が赦すべきオーストリア軍の顔は見えないわけで、何を赦せばいいのかはよくわからないというのが正直なところ。実際の戦争は敵の姿など見えず、自分たちを追い込む司令部は伝令だけにしかその正体を見せず、わけがわからないまま兵士たちは死んでいったということなのかもしれない。
 ただ物語としてはドラマチックな部分に欠ける。ミニマリズムに徹っして塹壕のなかの兵士たちのやりとりに終始しているために、いかにも単調だったという感は否めない。76分という上映時間にも関わらず、そんなふうに感じてしまった。『木靴の樹』は3時間以上の映画だったにも関わらず一時も退屈するときがなかったと記憶しているのだが……。とりあえず、一部で現在公開中の『木靴の樹』は誰にでもお薦めできる作品であることは間違いないとだけは言えると思う。

木靴の樹 Blu-ray


木靴の樹 [DVD]


関連記事
スポンサーサイト
Date: 2016.05.07 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (3)

この記事へのコメント:


管理人のみ通知 :

トラックバック:


>>『緑はよみがえる』 イタリア・アルプスの月 from Days of Books, Films
Torneranno i Prati(viewing film) 最近でこそ第一 >READ

2016.05.19

>>「緑はよみがえる」:静かでリアルな戦場の恐怖 from 大江戸時夫の東京温度
映画『緑はよみがえる』は、タイトルから受ける印象とは全く違う、渋い渋い苦渋に満ち >READ

2016.05.21

>>- from
管理人の承認後に表示されます >READ

2017.01.04

プロフィール

Nick

Author:Nick
新作映画(もしくは新作DVD)を中心に、週1本ペースでレビューします。

最新記事
最新トラックバック
最新コメント
月別アーカイブ
04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03 
カテゴリ
カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

タグクラウド


検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
このブログをリンクに追加する
Powered By FC2ブログ


ブログランキングに参加しました。

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

QRコード
QR