『プロメテウス』 リドリー・スコット監督、久々のSF作品

 『エイリアン』『ブレードランナー』リドリー・スコット監督が、久しぶりにSFを手がけたことでも話題の作品。先行上映で3D版を鑑賞。公開は8月24日から。
 以下、作品の秘密に触れています。

リドリー・スコット 『プロメテウス』

 人類はどこから来たのか。CM等ではそんな謎が提示されてはいるものの、開巻劈頭あっさりと答えが示されてしまう。とは言うものの、この謎はおとりみたいなものだから、もったいぶって最後まで引っ張るほどの驚きもないし、当然のことなのかもしれない。明かしてしまえば、その答えとは“宇宙人起源説”みたいなものだ。≪人類の起源≫は、地球に飛来した宇宙人と判明し、映画は終わるわけではなく、その先にこそ『プロメテウス』の秘密がある。
 その秘密をどうして隠そうとするのか腑に落ちないのだが、秘密とは『エイリアン』の起源ということだ。これは『エイリアン』シリーズの最新作(前日譚)なのだ。≪人類の起源≫などとことさらに言い立ててエイリアンの存在を隠そうとするのは、もしかすると第1作目『エイリアン』と似通い過ぎているからかもしれない。
 シリーズ第1作目『エイリアン』は、宇宙船のなかにエイリアンが入り込んでからは、SFというよりはホラー映画の趣きを帯びる。キャッチコピーは「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」だった。ダン・オバノンの書いた脚本は、宇宙船のなかでのエイリアンとの対決が中心となっていたのだ(オバノン脚本の『ダーク・スター』でも、エイリアンとの「対決」というか「かくれんぼ」が登場している)。
 『プロメテウス』では、『エイリアン』の前半部分に焦点を当てて拡大したような内容になっている。ホラー的な部分よりも、作品世界の構築に重きが置かれていると言えるかもしれない。『ブレードランナー』などでも独特な世界を映像化したリドリー・スコットは、H・R・ギーガーがデザインした宇宙船と化石化した宇宙人(スペースジョッキー)のエピソードをさらに描きたくて、『エイリアン』のリブート作品めいた『プロメテウス』を製作したのだ。

 宇宙人が訪れてから気の遠くなる時間を越えて、地球のあちこちで同じデザインの壁画が発見される。科学者はそれを彼らからの招待状だと考える。その招待に応じるべく彼らの星を目指すのだが、この計画は「永遠の命」を欲したウェイランド社社長の希望からスタートしている。人類を創ったスペースジョッキーなら、いわば創造主なら、その願いを叶えてくれるだろうという希望だ。
 『エイリアン』でもアンドロイドの存在が重要だった。アンドロイドは人間に化けて乗組員たちの監視し、隠された目的(エイリアンの捕獲)を遂行する役割を負っていた。『プロメテウス』でもアンドロイドが登場する。ここではその正体は乗組員に明らかにされているが、乗組員が知らない目的を抱えているのは同じで、物語をかき回す役割を与えられている。
 スペースジョッキーが人類を創り、人類はアンドロイドを創った。スペースジョッキー⇒人類⇒アンドロイドという階層。もちろんスペースジョッキーを創ったのは誰かという部分は相変わらず残るから、そこに到れば“神”だとか“偶然”だとか何かしらあやしいものを引っ張り出さなくてはならないわけだが……。
 被造物は創造主に「どうして自分たちを創ったか」と訊ねたくなる。アンドロイドが人間にそう訊ねると、人間側は「創れたから(技術的に可能だったから)」と答えるのだが、アンドロイドは人間がそんなふうに(創造主から)答えられたら「傷つかないでしょうか」と理知的に返している。ここでのアンドロイドは傷つくほどの自省には目覚めていないように思えるが、人間はそんな答えには納得せずに問い続けることやめないだろう。
 なぜ地球に人類を誕生させたか、なぜ招待状を贈って人類を呼び寄せたか、今度はなぜ滅ぼそうとするのか。これに対する『プロメテウス』の答えは次のようになるだろう。自分たちと似たような種類の実験台(人類)をたくさん創っておいて、新たな生物兵器を使ってそれらを破壊させるための実験をし、その兵器としての機能を確認する。招待状に関して言えば、そんなものは贈っておらず、壁画の記しをそのように思い込んだのは人類の勝手な思い違いによる。どうやら創造主は被造物に思いやりなどないみたいだ。

 エイリアン誕生には複雑な経緯があり、スペースジョッキーは意図してエイリアンを誕生させたわけではないようだ(もしかしたら影で黒幕が操っているのかもしれないが)。『プロメテウス』で人類が訪れる星(LV223)は、スペースジョッキーの生物兵器製作工場だった。その生物兵器である黒い筒のなかには黒い液体が収められている。この液体に人間(男)が感染し、その感染した状態で女性と交わると、女性はイカ状の生物を身ごもる。さらにそのイカ生物が成長して、スペースジョッキーに卵を産み付けることで誕生するのがエイリアンという存在なのだ。黒い液体に感染した人間がその後どうなるかは明らかでない。感染の症状が酷くなると何かに操られているようにも見えるが、結局、途中で殺されてしまったので、感染した人間から別の生物が誕生するのか否かは不明だ。
 地球に人類を誕生させ、その後、黒い筒をばら撒いてその効果を試すというのがスペースジョッキーの当初の目的だったのかもしれない。しかし、偶然の事故がエイリアンを誕生させる。スペースジョッキーはエイリアンの価値を認め、別な星(LV426)でエイリアンの卵を大量生産させる。だがまたもや何らかの事故によってそれは頓挫してしまい、『プロメテウス』から29年後『エイリアン』で描かれるエピソードにつながるということだろうか。
 『プロメテウス』が『エイリアン』の前日譚なのか、リブートとなるのか、いまだ曖昧な部分も多い。緊張感のあった『エイリアン』に比べると、『プロメテウス』は題名や提示される謎の高尚さとは裏腹にゲテモノづくしな印象は否めないし、消化不良の箇所が多い。ラストで科学者である主人公エリザベスは地球に帰ることを拒否し、スペースジョッキーたちの故郷へと向かおうとする(≪人類の起源≫への問いに囚われているから)。続編の製作も決定しているようなので、さらに新たな世界が見られることになりそうだ。破壊されかかったアンドロイドも宇宙船の操縦のため助け出されたから、隠密行動が多いアンドロイドを操る存在なんかも明らかにされて、様々な不明部分に解決が与えられることを期待したいと思う。

追記:20日、「トニー・スコット 死去」という悲報が……
 最近でも、兄リドリーと共同で『THE GREY 凍える太陽』(現在公開中)をプロデュースしていた。次回作もあったであろうに、なぜなのだろうか?

プロメテウス [DVD]


『エイリアン』シリーズ
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Date: 2012.08.19 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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