シャマラン最新作 『ヴィジット』 今度は何が出てくるのか?
『シックス・センス』『アンブレイカブル』などのM・ナイト・シャマランの最新作。
失敗作が続いてオリジナル作品を作れなくなってしまったようで、『エアベンダー』『アフター・アース』の2作はシャマラン色が薄い作品と思えたけれど、その仕事で稼いだお金で再びシャマラン印の作品へと戻ってきたようだ。制作費が少ないことも幸いして収益の面では大成功だったらしい。

ベッカ(オリヴィア・デヨング)とタイラー(エド・オクセンボウルド)のふたりは祖父母の家を初めて訪れる。父親と駆け落ち同然で家を出て以来、ふたりの母親(キャスリン・ハーン)は一度も家には帰らなかったため、ベッカとタイラーも祖父母のことをまったく知らない。母親が彼氏との旅行を楽しむ間、ふたりは初めて会う祖父母と1週間の休暇を過ごすことになる。
シャマランは『シックス・センス』のオチがあまりに決まってしまったため、その後の作品がいまひとつというのが一般的な印象なのかもしれない。ただ『サイン』みたいな悪ノリ(?)も好きな人も多いわけで、この作品もシャマラン・ファンにはたまらない映画となっているような気もする。個人的には『サイン』の宇宙人を笑いながら楽しめるほどシャマラン・ファンではないのだけれど……。
予告編ではシャマラン本人が出てきて「あなたはすでに騙されている」などと煽っている。騙されているのは確かで、というのも予告編では「3つの約束」などと出てくるけれど、約束は「夜9時以降は部屋から出ないこと」というものしか登場しない。夕食のシーンすらないのだから、予告編の作り方は反則すれすれとも思える。
それはともかくとして、シャマラン作品だけに幽霊だとか宇宙人なんかが登場するんじゃないかと勝手に推測し、「THE VISIT」という題名すらも深読みしてしまう。この題名はベッカとタイラーが祖父母の家を訪問することを示しているだけ。ただ、地球を侵略に訪れた宇宙人を描いたテレビドラマ『V』は、「Visitor」の略だったわけでこの作品もそんな類いかと邪推してしまう。
シャマラン側もそうした観客の期待はわかっているわけで、それを利用している節もある。ベッカとタイラーが駅で祖父母と出会ったときには、ぼんやりした鏡(もしかすると水?)に映る何かを捉えたカットが一瞬だけあったりして、見えない“何か”を意識させるようになっている。
『ヴィジット』はいわゆるPOV方式で撮られている。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいに登場人物がカメラを抱えて映像を撮影しているという設定だ。だから基本的にはカメラを持つ人の姿は映らない(声は入るけれど)。ベッカが主にカメラを回して、タイラーもサブカメラを回しているのだが、カメラを撮影している人の姿が見えないのが妙に気にかかる。それを撮影している人は本当に存在するのかなんてことも疑い出すことになる。しかもベッカが鏡を見ないことがタイラーに指摘されていて、鏡に映らない存在も推測させないこともない。また、おばあさんの語るおとぎ話のなかには宇宙人が子供を誘拐して、井戸を通してどこかへ送っているといった与太話も含まれる。いったいどんなオチで驚かせてくれるのかとワクワクさせる展開となっている。

オチを楽しみにしている人も多いと思うのでそれには触れないとしても、かなり怖がらせてくれる作品になっていたと思う。夜9時を過ぎると階下で異様な音が響き、恐る恐るドアを開けて見てみると……。とにかく得体の知れない祖父母の奇行はそれだけで怖いし、唐突な登場の仕方で何度もビクついた。
屋敷の縁の下でのかくれんぼの場面では、おばあさん(ディアナ・ダナガン)は貞子とか座敷女みたいだった。ゴキブリみたいに這いずり回って怖がらせたおばあさんは高笑いをして去っていくのだけれど、去っていく後姿ではなぜかお尻が丸出しになっているという……。怖いのだけれど、ところどころに笑いが忍ばせてあるのがシャマランらしいところだろう。
一応、この映画は裏では家族の愛の物語になっている。父親が出て行ったせいでベッカは自尊心を傷つけられ、タイラーは潔癖症になってしまっている。今回の祖父母の家の訪問は、母親と祖父母の関係を探り、家族の問題を解消するためのセラピーみたいなものなのだ。それにしてもタイラーの潔癖症に対するショック療法は凄まじいもので、そっちのほうがかえってトラウマになりそう。
M・ナイト・シャマランの作品


失敗作が続いてオリジナル作品を作れなくなってしまったようで、『エアベンダー』『アフター・アース』の2作はシャマラン色が薄い作品と思えたけれど、その仕事で稼いだお金で再びシャマラン印の作品へと戻ってきたようだ。制作費が少ないことも幸いして収益の面では大成功だったらしい。

ベッカ(オリヴィア・デヨング)とタイラー(エド・オクセンボウルド)のふたりは祖父母の家を初めて訪れる。父親と駆け落ち同然で家を出て以来、ふたりの母親(キャスリン・ハーン)は一度も家には帰らなかったため、ベッカとタイラーも祖父母のことをまったく知らない。母親が彼氏との旅行を楽しむ間、ふたりは初めて会う祖父母と1週間の休暇を過ごすことになる。
シャマランは『シックス・センス』のオチがあまりに決まってしまったため、その後の作品がいまひとつというのが一般的な印象なのかもしれない。ただ『サイン』みたいな悪ノリ(?)も好きな人も多いわけで、この作品もシャマラン・ファンにはたまらない映画となっているような気もする。個人的には『サイン』の宇宙人を笑いながら楽しめるほどシャマラン・ファンではないのだけれど……。
予告編ではシャマラン本人が出てきて「あなたはすでに騙されている」などと煽っている。騙されているのは確かで、というのも予告編では「3つの約束」などと出てくるけれど、約束は「夜9時以降は部屋から出ないこと」というものしか登場しない。夕食のシーンすらないのだから、予告編の作り方は反則すれすれとも思える。
それはともかくとして、シャマラン作品だけに幽霊だとか宇宙人なんかが登場するんじゃないかと勝手に推測し、「THE VISIT」という題名すらも深読みしてしまう。この題名はベッカとタイラーが祖父母の家を訪問することを示しているだけ。ただ、地球を侵略に訪れた宇宙人を描いたテレビドラマ『V』は、「Visitor」の略だったわけでこの作品もそんな類いかと邪推してしまう。
シャマラン側もそうした観客の期待はわかっているわけで、それを利用している節もある。ベッカとタイラーが駅で祖父母と出会ったときには、ぼんやりした鏡(もしかすると水?)に映る何かを捉えたカットが一瞬だけあったりして、見えない“何か”を意識させるようになっている。
『ヴィジット』はいわゆるPOV方式で撮られている。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいに登場人物がカメラを抱えて映像を撮影しているという設定だ。だから基本的にはカメラを持つ人の姿は映らない(声は入るけれど)。ベッカが主にカメラを回して、タイラーもサブカメラを回しているのだが、カメラを撮影している人の姿が見えないのが妙に気にかかる。それを撮影している人は本当に存在するのかなんてことも疑い出すことになる。しかもベッカが鏡を見ないことがタイラーに指摘されていて、鏡に映らない存在も推測させないこともない。また、おばあさんの語るおとぎ話のなかには宇宙人が子供を誘拐して、井戸を通してどこかへ送っているといった与太話も含まれる。いったいどんなオチで驚かせてくれるのかとワクワクさせる展開となっている。

オチを楽しみにしている人も多いと思うのでそれには触れないとしても、かなり怖がらせてくれる作品になっていたと思う。夜9時を過ぎると階下で異様な音が響き、恐る恐るドアを開けて見てみると……。とにかく得体の知れない祖父母の奇行はそれだけで怖いし、唐突な登場の仕方で何度もビクついた。
屋敷の縁の下でのかくれんぼの場面では、おばあさん(ディアナ・ダナガン)は貞子とか座敷女みたいだった。ゴキブリみたいに這いずり回って怖がらせたおばあさんは高笑いをして去っていくのだけれど、去っていく後姿ではなぜかお尻が丸出しになっているという……。怖いのだけれど、ところどころに笑いが忍ばせてあるのがシャマランらしいところだろう。
一応、この映画は裏では家族の愛の物語になっている。父親が出て行ったせいでベッカは自尊心を傷つけられ、タイラーは潔癖症になってしまっている。今回の祖父母の家の訪問は、母親と祖父母の関係を探り、家族の問題を解消するためのセラピーみたいなものなのだ。それにしてもタイラーの潔癖症に対するショック療法は凄まじいもので、そっちのほうがかえってトラウマになりそう。
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