『私たちのハァハァ』 女子高生というブランドだけで何とかなる?
監督は『アフロ田中』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』などの松居大悟。
『自分の事ばかりで情けなくなるよ』でもクリープハイプというバンドを取り上げていた松居監督。今回はクリープハイプ・ファンの女子高生を主人公にしたロードムービーとなっている。
主演の4人中3人は素人みたいなものらしいが、皆、とても自然だった。井上苑子はメジャーデビューしたてのシンガーソングライターらしく、弾き語りの見せ場もある。

「次のライヴも」とメンバーに誘われたからと言って、北九州から東京まで自転車で走破しようというのは無謀な試みだ。それでもクリープハイプが大好きな4人の女子高生は意外にも簡単に旅をスタートさせる。
リーダーというより盛り上げ役のさっつん(大関れいか)、ギターをかついだ家出少女の一ノ瀬(井上苑子)、クリープハイプのボーカル尾崎世界観が好きで堪らない文子(三浦透子)、みんなと一緒にいたくて参加したけれど途中までは冗談だと思っていたチエ(真山朔)。彼女たちの無謀さは単に無知なだけなのかもしれないが、意外にも事はスムーズに進む。いい加減疲れ切って自転車を乗り捨ててヒッチハイクへと移行するけれど、着実に目的地へと近づいていく。
これは女子高生というブランドを彼女たちが無自覚に信じているからなのかもしれない。松居大悟作品『男子高校生の日常』では、若くて何の経験もなく頼りなさげな男子高校生たちと比べ、女子高生たちは妙に自信に満ちていて何でも許されるものと理解しているようだったが、それと同じだろう。自転車で夜通し走って朝を迎えるのも、知らない街の公園で野宿するのも楽しいし、途中からはあっけらかんと知らない男(池松壮亮も登場)の車に乗り込み、金が尽きればキャバ嬢の真似事をして稼いだりして無謀な試みを現実化していく。
※ 以下、ネタバレもあり!

松居監督の映画はその主人公が男の場合、異性に対する凝り固まった考えが笑わせる。『アフロ田中』や『スイートプールサイド』では男が抱く妄想がどんどん突っ走っていくところがよかった。それに対して『私たちのハァハァ』の女子高生はもっと現実的かもしれない。
たとえばファンでもその本気度は人それぞれだから、クリープハイプに一番夢中になっている文子の暴走でけんかが生じたりもする。文子の尾崎愛は妄想だけれど、女の子同士の濃密なコミュニケーションはそれをこじらせるほどの隙を与えない。気まずくなって口を利かなくともLINEのやりとりで何となく仲直りしてしまうわけで、男同士の冷淡さが男の妄想をこじらせ拡大させてしまうのとは大きな差異があるのだ。
そんな意味ではこの作品はほどよい青春映画には収まっているのだが、突き抜けたところがない分ちょっと寂しい気も。松居監督の女性崇拝妄想(願望?)が、女の子が主人公になると妙な品のよさを見せてしまうのかもしれない。彼女たちのハァハァ(興奮? 胸の昂ぶり?)がそれなりの失望を味わうことになるというのも多くの人の共感を得やすい部分ではあると思うのだけれど、もっと壊してみてもよかったんじゃないかとも……。
個人的な好みとしては橋本愛が主役を演じた『ワンダフルワールドエンド』なので、そんなことも思った。『ワンダフルワールドエンド』も女の子たちの話だけれど、思いもよらない場所へとたどり着いてしまう話だったから。





『自分の事ばかりで情けなくなるよ』でもクリープハイプというバンドを取り上げていた松居監督。今回はクリープハイプ・ファンの女子高生を主人公にしたロードムービーとなっている。
主演の4人中3人は素人みたいなものらしいが、皆、とても自然だった。井上苑子はメジャーデビューしたてのシンガーソングライターらしく、弾き語りの見せ場もある。

「次のライヴも」とメンバーに誘われたからと言って、北九州から東京まで自転車で走破しようというのは無謀な試みだ。それでもクリープハイプが大好きな4人の女子高生は意外にも簡単に旅をスタートさせる。
リーダーというより盛り上げ役のさっつん(大関れいか)、ギターをかついだ家出少女の一ノ瀬(井上苑子)、クリープハイプのボーカル尾崎世界観が好きで堪らない文子(三浦透子)、みんなと一緒にいたくて参加したけれど途中までは冗談だと思っていたチエ(真山朔)。彼女たちの無謀さは単に無知なだけなのかもしれないが、意外にも事はスムーズに進む。いい加減疲れ切って自転車を乗り捨ててヒッチハイクへと移行するけれど、着実に目的地へと近づいていく。
これは女子高生というブランドを彼女たちが無自覚に信じているからなのかもしれない。松居大悟作品『男子高校生の日常』では、若くて何の経験もなく頼りなさげな男子高校生たちと比べ、女子高生たちは妙に自信に満ちていて何でも許されるものと理解しているようだったが、それと同じだろう。自転車で夜通し走って朝を迎えるのも、知らない街の公園で野宿するのも楽しいし、途中からはあっけらかんと知らない男(池松壮亮も登場)の車に乗り込み、金が尽きればキャバ嬢の真似事をして稼いだりして無謀な試みを現実化していく。
※ 以下、ネタバレもあり!

松居監督の映画はその主人公が男の場合、異性に対する凝り固まった考えが笑わせる。『アフロ田中』や『スイートプールサイド』では男が抱く妄想がどんどん突っ走っていくところがよかった。それに対して『私たちのハァハァ』の女子高生はもっと現実的かもしれない。
たとえばファンでもその本気度は人それぞれだから、クリープハイプに一番夢中になっている文子の暴走でけんかが生じたりもする。文子の尾崎愛は妄想だけれど、女の子同士の濃密なコミュニケーションはそれをこじらせるほどの隙を与えない。気まずくなって口を利かなくともLINEのやりとりで何となく仲直りしてしまうわけで、男同士の冷淡さが男の妄想をこじらせ拡大させてしまうのとは大きな差異があるのだ。
そんな意味ではこの作品はほどよい青春映画には収まっているのだが、突き抜けたところがない分ちょっと寂しい気も。松居監督の女性崇拝妄想(願望?)が、女の子が主人公になると妙な品のよさを見せてしまうのかもしれない。彼女たちのハァハァ(興奮? 胸の昂ぶり?)がそれなりの失望を味わうことになるというのも多くの人の共感を得やすい部分ではあると思うのだけれど、もっと壊してみてもよかったんじゃないかとも……。
個人的な好みとしては橋本愛が主役を演じた『ワンダフルワールドエンド』なので、そんなことも思った。『ワンダフルワールドエンド』も女の子たちの話だけれど、思いもよらない場所へとたどり着いてしまう話だったから。
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