『懲罰大陸★USA』 容赦ない政府批判の声を

 『傷だらけのアイドル』で知られるピーター・ワトキンス監督のフェイク・ドキュメンタリー。その衝撃的な内容に公開当時(1971年)、4日で公開が打ち切りになったという作品(テレビで放映されたこともないとのこと)。日本での公開ももちろん初めて。
 原題は「PUNISHMENT PARK」

ピーター・ワトキンス 『懲罰大陸★USA』 砂漠でのゲームは警官たちの訓練も兼ねている。


 1970年、アメリカ政府は政府転覆を企てる破壊分子とみなした者たちを一方的に拘束していく。彼らはほとんど理由もなしに逮捕され、裁判を受けさせられ、懲役刑とされることになる。しかし、もうひとつの選択肢もある。それは懲罰公園と呼ばれる砂漠でのゲームに参加することだった。

 これは偽のアメリカの姿であるが、いかにもドキュメンタリー風に撮られている。アメリカ政府は自分たちの政治体制を疑わず、何も隠すべきことなどないという判断から、撮影スタッフが入ることが許され一部始終を撮影しているという設定なのだ。
 この作品は拘束された破壊分子たちが受ける裁判の様子と、その後の懲罰公園でのゲームが交互に描かれる。裁判の場面では矯正集団638と名付けられたグループが裁かれ、懲罰公園では矯正集団637グループがゲームに参加している。その両方を同時進行で描いていく。矯正集団に連番が付されているのは、これまで600を超えるグループが同じ裁きを受けているということだろう。
 懲罰公園でのゲームは単純だ。砂漠のなかを85キロほど先にあるアメリカの旗が掲げられたゴールまで辿り着けばいい。ただコースを外れてはならないし、一定時間を越えると警官たちが後を追うことになる。そして捕まってしまえば、長い長い懲役刑に服することになるというのだが……。

 ※ 以下、ネタバレもあり!

 ゲームに参加した反体制側の者たちが次第にいくつかのグループに分かれていくのは、同時期の日本の新左翼が細かい主義の違いによって分裂していく様子にも思われた。「暴力的にならないと政府は動かない」としてある場所に留まって体制側と戦うべきだと考えるグループもあれば、ゴールに辿り着く可能性があるのならば先を急ぐべきだと考えるグループもある。暴力に訴えるのが気が引けるのも確かだが、体制側の決めたルール(つまり懲罰公園でのゲーム)のなかで生きていくことが本当に彼らの勝ちになるのかといった疑問も生まれてくる。
 しかも政府は嘘つきである。中間地点に用意されているはずの飲み水はないし、警官たちが暴力は使わないというのもあくまで彼ら反体制側が指示に従えばという条件付きである。さらに政府側はそれまでのルールを変更する権力までを握っているわけで、反体制側に勝ち目はないのかもしれない。
 政府が嘘つきだとか、ゲームのルールを変更する権力を握っているという指摘は、アメリカだけではなく今の日本にも当てはまることだろう。この映画の直接的な訴えは裁判の場面によく表れている。設定自体にリアリティがあるとは言えないけれど、裁判場面での体制側と反体制側のやりとりはとても熱を帯びたものになっている。40年以上前の映画だけれど、未だ古びていないメッセージがあったと思う。



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Date: 2015.09.03 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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