『はなればなれに』 ゴダール×アントニオーニ×その他諸々

 小津安二郎の研究者だという下手大輔監督のデビュー作品。
 製作年度は2012年で、海外の映画祭や東京国際映画祭などでは上映されたらしい。昨年4月に劇場公開され、今月になってDVDも登場した。今回、私が観たのは86分版だが、100分版もごく一部で公開されたらしい。

はなればなれに

 題名からもわかるようにゴダールの『はなればなれに(Bande à part)』を意識している。本家がそうだったように下手監督版『はなればなれに』にも筋らしい筋はないし、女ひとり(城戸愛莉)と男ふたり(斉藤悠中泉英雄)の三角関係の話であるのも同じ。そんなふうに要約してもあまり意味はないという点でも本家とよく似ている。偶然出遭った3人がいつの間にか仲良くなり、車で走り出すと舞台はたちまち伊豆大島になっていて、閉館した旅館を借りてしばしの共同生活を送ることに……。

 とにかくシャレている。ファッション誌から抜け出たような登場人物たちは騒ぎ回っていても汗なんかかきそうにないし、やる気なさげなのに妙に楽しそうにも見える。そんなスカした姿にちょっとイラッとさせられるところもあるのだけれど、そうした雰囲気が好きな人がいるというのも想像がつく気もする。
 それはともかくとして、この作品は様々な作品の引用からできているようだ。ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』、アントニオーニの『欲望』、エドワード・ヤンの『恐怖分子』とか諸々。ほかにも「どこかで観たような」と思わせる場面があるから、映画史に詳しい人はにんまりするかもしれない。地層が見える崖を3人が支えるシーンは、思い出せなくて調べてみると長谷川和彦の『太陽を盗んだ男』だった(こちらのサイトで監督がインタビューに答えている)。

 ゴダール作品が好きとは到底言いかねるけれど、『はなればなれに(Bande à part)』はとても楽しい作品だったと思う。特に有名なダンスシーンは、ダンス自体も楽しそうなのだけれど、賑やかな音楽が消えて登場人物の声が入ってくるところも斬新だった。この場面は、タランティーノの『パルプ・フィクション』のトラボルタとユマ・サーマンのダンスシーンに影響を与えているし、ほかにもハル・ハートリーの『シンプルメン』のそれはあからさまにパクっている(でも個人的には好き)。
 この下手監督版『はなればなれに』でも暮れかけた空のもとで登場人物たちが踊り狂うところがあって、この場面はやはり楽しい。踊るというよりもノリきれてなくてただデタラメに身体を揺らしているだけだけれど、そのあたりのゆるい感じもよかった。
 主人公3人の間に闖入してくる女子高生役を演じていたのは『こっぱみじん』『恋に至る病』我妻三輪子。『恐怖分子』風の写真の被写体となっているのは松本若菜。パン屋の主人役では諏訪太郎なども登場して、脇も意外と賑やかだった。



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Date: 2015.05.23 Category: 日本映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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