『ドライブイン蒲生』 ドライブイン現世?

 原作は芥川賞作家・伊藤たかみの小説。
 監督のたむらまさきは75歳で本作がデビュー作であるが、撮影監督として参加している作品リストを見ると、小川紳介のドキュメンタリーから始まって、相米慎二の『ションベン・ライダー』や青山真治の『EUREKA』など名作が並んでいる。
 出演は染谷将太黒川芽以。ゲストとして『ションベン・ライダー』でデビューした永瀬正敏もヤクザものみたいな父親役で登場する。
 去年の8月に劇場公開され、先月にソフト化された。

『ドライブイン蒲生』 蒲生家の姉と弟を演じた染谷将太と黒川芽以。


 娘を連れて戻ってきた蒲生家の姉サキ(黒川芽以)は、最後にもう一度だけDV夫と話をしたいと言う。アイスピックを鞄にしのばせるサキを心配し、弟トシ(染谷将太)もそれに同行する。休業中の「ドライブイン蒲生」というさびれた店を出て街道沿いを走り、夫のところへ向かう姉弟の間には、亡くなった父親の想い出が去来する。

 この作品が退屈だとしたら、人生が退屈なことの反映であるのだろう。
 ドライブインはどこかへ行く途中だから、おいしいものを出してしまっては客を長居させてしまう。だからまずいものを出さなければならない。これは「ドライブイン蒲生」の稼ぎで育ってきたはずトシの言葉である。
 また、トシは「生まれ変わったら何になりたい?」という心理テストでは“仏”と答えている。この心理テストは「今、なりたいもの」がわかるというふれこみだ。“仏”は「悟った人」ということだが、ごく一般には「死んだ人」という意味もある。トシは現世に飽き飽きして死にたいという諦念を持っているのかもしれない。もちろん彼らのようなヤンキーはそんなことを意識しないだろうが、どこかでそう感じているのかもしれないのだ。
 つまり「ドライブイン」とは現世のことなのだ。現世は誰もがたどり着くあの世までの途中であるから、そこに長居してしまうような楽しさや快楽などは差し障りのあるものになる。だからそんな現世を描くこの映画が楽しくあってはならないわけで、その退屈さは意図されたものなのだ。

 原作の舞台は大阪の淀川あたり。「食らわんか舟」とはそのあたりのものらしい。しかし、映画版では首都圏近郊の某県が選ばれている。予算とか様々な事情によるのだろうが、この潤いに欠けた風景は主題にもマッチしていると個人的には思う。
 そこは私の地元にも近い場所なのだけれど、見るべきものが何もないという意味で退屈きわまりない感じを醸し出している。『こっぱみじん』(舞台は群馬県)でも似たことを書いたけれど、あちらはまだ小高い山があって川が流れていた。一方の『ドライブイン蒲生』では街道があって、そこを車が走るだけでほかにはほとんど何もない(街道を走るシーンではほとんど風景は映されないと言ってもいい)。一応橋もあってその下には川も流れているけれど、それすら印象に残らないし、緑豊かな山すらないという殺風景な場所なのだ。葬式帰りの場面なんかはどこにでもある民家の前で撮られていて、呆れるくらい退屈な風景を見せているのだ。
 それから手法として選ばれている長回しも、主人公たちの倦怠を感じさせる時間を観客に体現させるという意味では効果的だったかもしれない。ただ、「退屈」や「倦怠」が主題とはいえ、相米慎二の長回しと比べると何か物足りないような気もする。どこがどう違うのかはうまく説明できないけれど、そういう部分にこそ映画監督の監督たる役割があるのかもしれないとも思う。

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Date: 2015.04.09 Category: 日本映画 Comments (2) Trackbacks (0)

この記事へのコメント:

PineWood

Date2015.07.23 (木) 04:09:58

倦怠感と退屈を楽しむという贅沢。音楽や映像カメラワークに惹かれ結構、時を忘れて見ていたから実際は危うさを楽しんだ…。

Nick

Date2015.07.23 (木) 22:22:48

先日、『映画長話』という蓮實重彦と黒沢清と青山真治の鼎談本を読んでいたら、この作品の監督たむらまさきのことが語られていました。話題は「ショットが撮れる」かどうかということで、たむらまさきが撮るとすべて「ショット」になると青山真治が指摘していました。わかるようなわからないような……。

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