『サボタージュ』 アーノルド・シュワルツェネッガー作品の変化球?

 政治の世界から足を洗って映画界に復帰してからも何となく遠のいていたアーノルド・シュワルツェネッガー作品だが、『ターミネーター』の新シリーズも始まるということで『サボタージュ』を。昨年11月に劇場公開され、今月DVDがレンタル開始となった。
 監督は『エンド・オブ・ウォッチ』『フューリー』デヴィッド・エアー

デヴィッド・エアー 『サボタージュ』 アーノルド・シュワルツェネッガー主演作。


 麻薬取締局(DEA)で“破壊屋”の異名を持つジョン・ウォートン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、ある仕事で麻薬組織の金をネコババし、チームの仲間と山分けしようと企む。しかし、その金は何者かに奪われ、仲間がひとりずつ消されていくことになる。

 冒頭の派手な銃撃戦のなかでもおもしろかったのが、壁を挟んでの撃ち合いだ。麻薬組織に突入しているわけだから当然なのかもしれないが、相手は壁の向こう側から見当をつけてジョンたちを撃ってくる。応戦する側もDEAに向けて発砲してくる奴は当然悪者だからという決めつけで、壁の向こう側を確認もせずに障害物を挟んでの銃撃戦となる(こうした場面は後半にも繰り返される)。かなり荒っぽいやり方だが、冒頭のスピーディな展開には引き込まれた。
 シュワルツェネッガーのアクションにキレはないし年齢的な衰えも感じるが、おびただしい血が流れる猟奇殺人の博覧会みたいな部分もあって飽きさせない。サングラスでマシンガンを構えたり、葉巻を燻らせる姿はいかにもシュワルツェネッガーらしい仕草だし、こっそり忍ばせた『RAMBO』のパロディポスターなんかもあり、マッチョなアクションスターが今より華やかだったころのファンへの目配せも忘れていないのも嬉しいところ。

 ※ 以下、ネタバレもあり。

『サボタージュ』 サム・ワーシントンとミレイユ・イーノスは一応夫婦役。

 金を横取りし、仲間を殺したのは誰か?
 考えられるのは麻薬組織の復讐か、仲間の裏切りかということ。一応謎解き(フーダニット)の体裁をとっているが、真相は映画が終わっても釈然とはしないと思う。
 仲間のトライポッドをジョンが助けに行った場面では、麻薬組織に殺されるトライポッドの過去の映像が重ね合わされる。さも誰かが真相を見てきたように描かれているが、これは残された証拠から推測されることでしかない。実はまったくの嘘であり、ここでは嘘をヌケヌケと映像化することで観客を騙している。真犯人は殺しを麻薬組織の仕業にしようと画策しているわけで、観客はまんまと罠に引っ掛かったマヌケが思い描くものを見せられているのだ。
 有名な『映画術』という本では、ヒッチコック“偽りの回想(フラッシュ・バックの嘘)”は禁じ手だと語っている。映画のなかの登場人物が嘘をつくことはよくあることだけれど、「フラッシュ・バックで語られる内容が嘘だと観客はまるっきりうけつけない」のだという。
 『サボタージュ』のこの場面は回想シーンではないのだが、過去の出来事をジョンがそのまま感じたかのように描かれているという意味では回想とよく似ている。もちろん“偽りの回想(フラッシュ・バックの嘘)”がほかの映画で皆無というわけではないけれど、その場合は真相を描いた場面を挿入して、嘘を真相で上書きするのが一般的だろうと思う。しかし、この映画では真相に興味がないと言わんばかりに、麻薬組織の連中の死体を見せるだけだから、結局のところそれが誰の仕業なのかはよくわからないままなのだ(ジョンなのか、リジーなのか)。
 ジョンが「あの金は俺が取った」と打ち明けるところも、リジーを怒らせて撃たせるつもりで言ったもので、実は嘘なのかと一瞬思ったのだが違ったようだ(前半でジョンを陥れようと挑発した同僚がいたから)。金をメキシコで賄賂に使うだけならば、仲間が殺される前に高飛びすればいいわけだから、単純にジョンの狂気がその原因ということなのだろうか。色々とデタラメな部分も多いのだが、予想を裏切る展開とも言えるわけで意外に楽しめる映画だったと思う。ラストのメキシコでの銃撃戦は自殺行為なわけで、それでも死ぬ場面までは見せなかったのは、シュワルツェネッガーが死ぬにはまだ早いということなんだろう。

 ジョンが率いるチームの面々は麻薬組織に潜入したりもするらしく、見た目も行動もならず者でサム・ワーシントン(『アバター』『ターミネーター4』)などはいいところがなかったが、その妻リジーを演じていたミレイユ・イーノス(『デビルズ・ノット』)が大活躍だった。リジーは麻薬捜査官なのにドラッグ漬けで、カーチェイスでのラリった表情はなかなか見物だった。

サボタージュ [Blu-ray]


サボタージュ [DVD]


関連記事
スポンサーサイト
Date: 2015.03.13 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (1)

この記事へのコメント:


管理人のみ通知 :

トラックバック:


>>サボタージュ from 象のロケット
ジョン・ウォートンは、“破壊屋”の異名を持つアメリカ麻薬取締局DEAのカリスマ捜査官。 彼が隊長を務めるチームは、麻薬カルテルの闇資金から1000万ドルをかすめ取り、山分けしようという作戦を立てる。 ところが、盗んだ1000万ドルが行方不明になってしまった。 当局から不正行為を疑われ処分を受けたジョンは、ようやく現場に復帰するが、今度はチームの仲間たちが、次々と残虐な殺され方をしていく…。 ... >READ

2015.03.23

プロフィール

Nick

Author:Nick
新作映画(もしくは新作DVD)を中心に、週1本ペースでレビューします。

最新記事
最新トラックバック
最新コメント
月別アーカイブ
11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03 
カテゴリ
カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

タグクラウド

広告



検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
このブログをリンクに追加する
Powered By FC2ブログ


ブログランキングに参加しました。

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

QRコード
QR