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『インターステラー』 スペオペか? 本格的SFか?

 クリストファー・ノーラン監督の最新作。
 主演はマシュー・マコノヒー。共演にはアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マット・デイモン、マイケル・ケイン、ジョン・リスゴー、ケイシー・アフレックなどと豪華である。

クリストファー・ノーラン 『インターステラー』 169分という長尺だが魅せられた。

 3時間近い上映時間だが、それだけの分量でも足りないくらいのものを盛り込んでいる。
 この映画を勝手に3つに分ければ次のようになるかもしれない。第1章「地球滅亡と部屋の幽霊」、第2章「惑星探査」、第3章「その先へ」。“インターステラー”とは、星と星との間の移動のことらしい。この映画では地球という星を捨てて、別の星を探すことがテーマとなっている。

 舞台は地球が砂嵐に覆われた近未来。かつてはNASAでパイロットをしていたクーパー(マシュー・マコノヒー)だが、地球そのものの危機でNASAは廃止され、今は農業をしている。食糧不足で誰もがかつての仕事をあきらめ、日々のサバイバルに励んでいるのだ。
 そんなクーパーの娘マーフ(マッケンジー・フォイジェシカ・チャステイン)の部屋では、本棚から本が突然落ちるという奇妙な現象が生じている。マーフはそれを幽霊の仕業だとするが、クーパーはそれが何かの座標を示すこと突き止め、その場所へ赴くと、すでに解体されたはずのNASAが活動していた。クーパーは“何か”に導かれてそこにやってきたのだ。そして地球に滅亡が近いことを知り、人類存続のため宇宙へ飛立つことを決意する。

 ※ 以下、ネタバレも。

『インターステラー』 クーパーとマーフの親子。演じるのはマシュー・マコノヒーとマッケンジー・フォイ(子役)。

 惑星探査を題材にしていてもノーランのリアリティの追求は徹底していて、第2章の水の惑星や氷の惑星をCGに頼らずアイスランドで撮影したらしく、荒涼とした風景は別の惑星らしい雰囲気を醸し出していてよかったと思う。
 ただそのあとの展開は結構な飛躍を見せる。柳下毅一郎は雑誌『映画秘宝』で、ノーランは自分のやっていることを理解しておらず、『インターステラー』はスペースオペラなのに、それを本格的SFと勘違いしているといった旨を記している。
 たしかに本格的SFというには危なっかしい部分を含んでいると思う。ノーランの『ダークナイト』3部作では、漫画の世界をリアルな描写で描いていたわけだが、この『インターステラー』は『2001年宇宙の旅』のような本格的SFを目指している部分もあるけれど、時空を超えた冒険という漫画チックな部分もあるからだ。
 『インターステラー』は『2001年宇宙の旅』からの影響が大きい。『2001年宇宙の旅』は、ごく簡単にまとめれば「人類の進化」ということになる。その章立ては3つに分れていて、「人類の夜明け」⇒「木星使節」⇒「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」となっている(ウィキペディアから)。『インターステラー』の構成も、これに倣っているのだろう。ただキューブリックは説明するとチャチになると判断した部分は詩的な映像として見せているわけで、『インターステラー』はその危なっかしい領域にまで踏み込んで具体的に描いているのだ。

 最後にクーパーはブラックホールの内部へと入り込み、そこで“何か”に導かれて5次元空間へと辿り着く(ボルヘス「バベルの図書館」のイメージ)。この場所はなぜかマーフの部屋の本棚へとつながっている。そこへ導いた“何か”とは、未来における進化した人類たちだ。“彼ら”は人類の進化につながるであろう“インターステラー”を可能にするために、ワームホールを創って人類に介入してくるのだ(『2001年宇宙の旅』のモノリスと役割は同じだがより直接的)。
 クーパーはその空間からマーフに対してメッセージを発信する。つまり最初にマーフの部屋に登場した幽霊とはクーパーのことだったのだ。このあたりの伏線の回収はシャマラン的なものを感じるし、クーパーとマーフという親子が地球滅亡と向き合うというのは、セカイ系の匂いも感じられる。物理学者などのお墨付きを得ているのかもしれないけれど、荒唐無稽すれすれとも感じられなくもないわけで、そういった意味で柳下毅一郎の批判も頷ける部分もある。

 また、私は『インターステラー』が“親子愛”を描いた映画だと知って、勝手に憂慮していたことがあった。“親子愛”のようなテーマは、ノーランの苦手分野のような気がしていたのだ。蓮實重彦『ダークナイト ライジング』の際に、「そもそも、パーティーで二人がダンスをするシーンにモーリス・ラヴェルを流すような監督に、多くを期待するのが間違いなのかもしれない。」と記していた。そっち方面に疎いので、“モーリス・ラヴェル”の名前がどういう意味で担ぎ出されているのかわからないけれど、『ライジング』のダンスシーンが寒々しいものであったことは確かだと思う。この時点ではまだ腹の探り合いだったにせよ、最後は結びつくことになるふたりのシーンなのに、艶めいた部分がまったくないのだ。
 私はこのブログで『ダークナイト ライジング』について書いたとき、キャットウーマンを演じたアン・ハサウェイ(『インターステラー』ではアメリア役)に関しては遠慮して何も触れなかった。バットマンとキャットウーマンの場面、特にそれが恋愛めいたものに発展する部分がいい出来とは思えなかったからだ(もうひとりの女性キャラの恋愛に関しては貶した)。だからノーランが描く“親子愛”というのが気になっていたのだ。

 しかし結論を言えば、圧倒され、魅せられた。ここまで批判めいたことばかり取り上げたけれど、それにも関わらずよかったのだ。なぜよかったのかはいまひとつわからないのだけれど……。未来の人類が介入してくるという際どい展開と、さらにそれによって宇宙の果てと地球で親子が結びつき、人類の滅亡を救ってしまうという力技に何だかわからないながらも泣かされたのだ。
 もともとこの企画はスピルバーグが関わっていたものらしいが、そこに親と子の愛を付け加えたのは、スピルバーグではなくノーランだったようだ。そもそもノーランにとってはスペオペも本格的SFも関係なく、家族の物語をやりたかっただけなのかもしれない。そして、それは悪くなかったと思う。
 ただ、最後にクーパーとアメリアが結びつくというのは余計かとも思えた。生き残った世代という意味では結びつく必然性もあるのかもしれないけれど、やっぱりノーランは恋愛に関してはよしておいたほうがいいような……。

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クリストファー・ノーラン作品
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Date: 2014.12.16 Category: 外国映画 Comments (8) Trackbacks (12)

この記事へのコメント:

まれ

Date2020.03.14 (土) 11:20:53

SF映画はリアリティの希薄さから興味がわかず、観る予定はありませんでしたが、たまたま観ることに。話題作なだけあり良くできたストーリーでしたが、物理学者が監修しただけあり、単なるフィクションではないのが面白かったです。

ブラック・ホール経由で帰還するのかと思いきやの展開で、あそこまで科学が進歩しているのに、マーフの最期は普通過ぎて 笑 親子の年齢が逆転し、アメリア博士を救出に行くよう背中を押しての幕引きは悪くありませんけど、娘と交信してたのだから、早目に知らせて、誰かが救出に行けなかったのか?と、現実的なことを考えてしまいました 笑 クーパーが救うほうがロマンティックなんでしょうけど、前後関係から違和感ありますよね 笑 

マット・デイモンの悪役ぶり・・・笑 彼は一体何本話題作に出演しているのかと、その人気に驚かされました。そしてマイケル・ケイン、いいですね。『グランド・フィナーレ』で久々に見まして、素敵な俳優さんだと思っていました。ただ、登場時に既にご高齢なのに、マーフが大人になっても元気にしていたのは驚きました 笑 見た目は置いておいて、長生きできる位の進歩があったのかもしれませんね 笑 映画において、老け顔は作れても、若作りできないのが課題ですね。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のブラッド・ピットの若返りには驚きましたけれども。その内、動画の修正も可能になるかもしれず、そうなると本人に会うのが怖くなりますね。

ノーラン監督『インセプション』と同じ監督だったとは驚きました。フィルム映画にこだわり、CGを極力使わないという撮影方法も、逆にリアリティがある映画になっているような気もしまして、この監督の他の作品も観たいと思いました。なんて、映画好きの間では当たり前ですか・・・笑

Nick

Date2020.04.04 (土) 01:05:22

クリストファー・ノーランは『ダークナイト ライジング』などを観ると、ラブシーンを描かせるとまったく冴えないような気がします。もしかするとそれもあってアメリア博士をほったらかしにしておいて、これから救出というところで終わらせたのかもしれません。フィルモグラフィを振り返ってもラブシーンはほとんどないですし。
ノーランは最初に日本で紹介された『メメント』が衝撃的でした。あの時間の処理の仕方はよく考えたものだと、そのアイディアに驚きました。

マット・デイモンは『インターステラー』では悪役でしたね。それでもあまりに孤独すぎて寂しくてやってしまったという感じも出ていたようにも思えました。『オデッセイ』では火星に置き去りにされるマット・デイモンにはちょっと笑えましたが、こちらでは名誉挽回して大活躍していました。

まれ

Date2020.04.05 (日) 11:50:07

『ダークナイト ライジング』も『ジョーカー』も観ていません。『バッド・マン』シリーズを観ていないので当たり前なのですが・・・。どちらも話題作で興味はあるものの、内容が重い感じがして。『メメント』も観ていませんが、レビューにて”衝撃的”と書かれてあるので、Wikiを読むと、面白そうな映画ですね。

『ダンケルク』もオムニバスだと気付かず、少しわかりづらかったのを思い出しました。私が観た作品の印象は、時・空間を上手に操る才能のある監督のような気がします=恋愛を描くには遠いといいますか・・・笑 『インターステラー』のラスト、”同志的な”意味合いで旅立った気がしましたが、マーフに押されて・・・となると、Nickさんのレビューにも書かれていたように、恋愛感情からなんでしょうね。よく考えると、設定では、主人公には奥さんがおらず、”SFまっしぐら”作品でしたね 笑

マット・デイモンは”孤独過ぎて”という部分からの悪事を表現するのに適任でしたね。火星に置き去り・・・とんでもない役が多い 笑 

『ダークナイト ライジング』の俳優さんがアカデミー助演男優賞を受賞したのに、役から抜けれず亡くなってしまったと知り、鑑賞からより遠くなりました。『メメント』は近い内に、『ダークナイト』はいつかリストに・・・。

Nick

Date2020.04.07 (火) 20:13:17

アメコミはキャラが突飛ですし、
最初は取っつきにくいのかもしれません。
最近はそっちのほうが人気が高いみたいですが。

『メメント』はノーランのオリジナルなのですんなり入れるかもしれません。
この作品の時間の処理の仕方は見事だったしお薦めです。
ノーランの最新作『TENET』の予告編を見ると、
時間が巻き戻るみたいなシーンがあり、
最新作では時を操る何かが出てくるのかもしれません。
こちらも楽しみです。

アカデミー助演男優賞を受賞したヒース・レジャーが登場するのは『ダークナイト』のほうですね。
ヒース・レジャーのおかけもあって、多分3部作のなかで一番の出来だと思います。
3部作とはいえ物語としてはあまりつながりはありませんので、単独でも観られなくはないかもしれません。

まれ

Date2020.05.08 (金) 14:20:13

実は、『スター・ウォーズ』、『インディアナ・ジョーンズ』も観ていないので、連作、しかもアメコミに手を出すことはないですね・・・苦笑 『ジョーカー』と『ダークナイト』は賞を取っているのと、『ダークナイト ライジング』がノーラン監督というのであれば・・・見れなくもないかもしれないかも 笑 

『ダークナイト』は2つあったんですね、知らずに記載してしまい、失礼しましたm(__)m 『ジョーカー』が話題になっていた頃、町の名前と場所と内容に惹かれ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観まして、主人公の元奥さん役のミッシェル・ウィリアムズが『ダークナイト』のヒース・レジャーの内縁の妻だったのを知り、抜けられない程の演技をした『ダークナイト』も気になる作品になりました。その後、ミッシェルさんが再婚され、妊娠中という記事を偶然目にしまして、この数か月で知った女優さんですが、嬉しく感じました。

考えてみると『インセプション』も規格外的な映画で、津波のシーンのリアルさで上映が延期になった作品でしたね。ノーラン監督、侮れませんね 笑 概念を覆されるような映画やお話が好きなので、『メメント』、『TENET』、観ますm(__)m こういう映画は集中力が必要になるので、直ぐに観れる作品ではないのですが、多分、2度見ることになると思います。なので、新作は少し先に・・・と書きながら、映画上映が難しい今、ネット配信する新作もあるとのことなので、早目に配信されたら、高額でも(笑)観てみようと思います。

先ずは感染しないことが社会貢献ですけど、終息後は経済が回復するよう、ストレス解消も含め、”やりたい事リスト”なんかをネットや本を見ながら自分で作成するのも手ですかね 笑


『刑事コロンボ』の「秒読みの殺人」はフィルムチェンジのマークが画面に出るという印象的なエピソードで、私も覚えていました。実際の映画ではマークを観たことがないのが残念です 笑 私の印象1位はサブリミナル効果がカギとなる「意識の下の映像」です。先日、久々に観ましたが、犯人が最後に映像チェックするコンピューターの古さが笑えました。 実際、効果があり、禁止されているので、本当に効果があるとは思いますが、体験してみたいと今でも思います 笑  犯人の偉ぶり具合とコロンボの諂いながらの執拗さが半端なく、”溜飲下がる”名ドラマですね 笑 今見ると、脚本が作り込み過ぎな感じもありますが、倒叙ミステリーの先駆け・・・というか、今も、あまりないかもしれないですね。

Nick

Date2020.05.18 (月) 21:28:57

ミッシェル・ウィリアムズはアカデミー賞なんかにノミネートされることも多いみたいですし、
今後も注目株なのかもしれませんね。
私はいつもキャリー・マリガンとどっちがどっちだかわからなくなるんですが、
ネット検索すると「ふたりが瓜二つ」みたいな記事も出てきますし、
結構似てるみたいですね。

>実際の映画ではマークを観たことがない
若い人はそんなものなのかもしれません。
デジタルの今ではフィルムチェンジのマークはありませんからね。
古い映画好きでもあのマークをどれだけの人が意識していたのかはわかりませんが。
私はあのマークは何だろうと疑問に思っていたので、
「秒読みの殺人」を見たときは犯人探しだけではなく、
別の謎が解決したような気がしました。

「意識の下の映像」は観てないと思いますので、
今度機会があったら観てみたいです。
サブリミナル効果は実際に効果があるとされてますね。
映画館でコーラを買わせるくらいの効果はあるみたいですが、
殺人事件に関わるような操作ができるのだとしたら禁止も当然なのかもしれませんね。
『刑事コロンボ』のような倒叙ミステリーは、
日本では三谷幸喜脚本の『古畑任三郎』があるみたいですが、
これはコロンボのパクリみたいですね。

まれ

Date2020.05.24 (日) 22:43:44

ミッシェル・ウィリアムズは活躍されてる女優さんなんですね。キャリー・マリガンの写真を見て、キャリーの方が少し子供っぽい感じがしました。似てる女優さんといえば、ナタリー・ポートマンとキーラ・ナイトレイ、似てると思いました。被らないよう、似たような女優さんは同時に起用しないとは思いますが、同じ映画に普通の役で登場していたら、きっと、面白いででょうね。

映画のデジタル化はいつ頃からなのか定かではないですが、フィルム映画を映画館でも観てましたが、チェンジ・マークはコロンボ時代のものと思い、気にしていなかったかもしれないです。映画好きな方は、そういった部分にも目が行っていたんでしょうね。私も映画好きではありましたが、何も考えず、ただただ、物語を追っていた気がします。

『古畑任三郎』は間違いなく、コロンボのパクリだと思います!笑 三谷幸喜作品はツボが合わない作品も多いものの、俳優陣が豪華なので、ついつい観てしまいます。

Nick

Date2020.06.06 (土) 19:19:26

ナタリー・ポートマンとキーラ・ナイトレイは本当にそっくりですね。
『スター・ウォーズ』(エピソード1だったかな?)では影武者役で実際に共演しています。
それくらい似ているということなんでしょうね。
どちらもユダヤ人なのかと思っていたら、
キーラ・ナイトレイはイギリス人みたいですね。
人種とは関係なくたまたまということでしょうか。
というかユダヤ人という括りは独特だから、
あまり意味ないのかもしれませんが。

あのフィルム交換のマークは、
古い映画は保存の仕方が悪いから汚れてしまったのかとも思っていた気もします。
まさか意味があるとは知らなかったので、
コロンボを観て余計に驚きました。
私も三谷作品とは「ツボが合わない」のを感じてます、残念ながら。

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