『ザ・ホスト 美しき侵略者』 ままならないわたしの身体とわたしの恋

 原作は『トワイライト』シリーズを書いたステファニー・メイヤー
 監督は『ガタカ』『TIME/タイム』などのアンドリュー・ニコル
 主演には『ラブリーボーン』『ビザンチウム』『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』のシアーシャ・ローナン
 今年6月に劇場公開され、今月DVDが発売になった。

アンドリュー・ニコル 『ザ・ホスト 美しき侵略者』 主役はシアーシャ・ローナン。寄生されると目が光る。

 人に寄生する生き物ということで『寄生獣』を思わせなくもないが、『SF/ボディ・スナッチャー』などこれまでに4回も映画化されている『盗まれた街』のような宇宙からの侵略者ものである。
 光るアメンボのようなエイリアンの形状は、あの『ヒドゥン』とか『寄生獣』のパラサイト的な代物。そんな弱々しいエイリアンに今では9割方の人間が寄生され、人間とは違う何者かになっているという世界が舞台だ。彼らは“ソウル”と呼ばれる。見た目には目が光るくらいの差しかないが、その肉体に宿っていた元の魂はどこかへ押しやられてしまい、人はまるごと乗っ取られてしまう。
 “シーカー(捜索者)”と呼ばれる一部の“ソウル”たちは、わずかに残った人間を生け捕りにして仲間を増やしている。主人公のメラニーも“ソウル”たちに捕えられ寄生させられてしまう。(*1)しかし、メラニーの強靭な意志は、彼女の肉体を完全に明け渡すことはなかった。メラニーの身体に寄生したのはワンダラー(ワンダ)という名前の“ソウル”で、メラニーの身体のなかには元のメラニーの魂とワンダの魂のふたつが共存し、どちらがその身体のホスト(宿主)になるかの闘いが生じる。

『ザ・ホスト 美しき侵略者』  シーカーたちはなぜか白い服を着ている。

 解離性同一性障害(いわゆる多重人格)では、主人格(ホスト・パーソナリティ)は交代人格のことを知らない(逆に交代人格は主人格のことを知っていることが多いらしい)。交代人格と言うように、主人格を押しのけて別の人格が現れるのであって、それぞれの人格同士が会話をしたりはしない。
 この『ザ・ホスト』では、普段は奥に眠っているメラニーの人格が時折顔を出しては、主人格であるワンダと言い争いをするという奇妙な事態が生じる。『寄生獣』では右手を乗っ取られたシンイチが、自分の右手であるミギーと語り合うことになるが、この映画ではひとつの身体の内部でメラニーとワンダが喧々諤々とやりあうのだ。ポスターにも謳ってあるように「一つの身体に二つの魂」というのがミソだが、ふたつの魂のやりとりは“実際の発話”と“心のなかの言葉”のやりとりのようにも見える。主人公は落語家の語りみたいに一人二役を演じるわけで滑稽なのだけれど、製作陣としては結構大真面目なのがかえっておかしい。
 さらにはメラニーとワンダの間で男を巡っての争いまで生じる。『トワイライト』を書いた原作者が、この作品に恋愛を絡めてきたのは、「自分の愛する人が知らない間に別の何者かになっている」という切なさを狙ったものかもしれない。これは『盗まれた街』にもある主題だ。ただこの映画では視点が異なるから別の方向へと進む。
 メラニーとワンダはどちらが身体の主導権を握り、好きな男にその身をまかせるかで揉めるのだ。ワンダが好きな男はメラニーの想い人とは違うから、元の身体の持ち主であるメラニーは、自分の肉体を別の男に委ねられるのが許せないのだ。メラニーにとっては身体だけが勝手に浮気しているみたいなものなのだろう。だからワンダが男とキスしようと近づいた次の瞬間、メラニーがその男を突き飛ばすという喜劇を演じることにもなる。内部での葛藤があるのだが、単なる情緒不安定な女にも見えてしまうという何となく笑えてしまう映画である。

 “ソウル”たちは特別な能力を持つわけではない(だからエイリアンに襲われる恐怖感はあまりない)。彼らは意外に弱いし、人間との差違はほとんどない。ただ中身が異なるだけ。彼らは人間ほどの狂暴性はないらしく、“ソウル”たちの社会は平穏無事なものらしい。地球に人間がいなくなれば平和になるというのは『寄生獣』と似ている。
 “シーカー”たちは白いスーツに身を包み、メタリックな車を操り、清潔で管理された組織を形成している。アンドリュー・ニコルらしい世界観だし、そこから弾き出された者との争いという主題もこれまでにも見られたものだ。ただ作品の出来としては『TIME/タイム』よりもさらにB級感が漂い、『ガタカ』の完成度にはほど遠い。それほど独自性のある作品ではないけれど、DVDで観るくらいなら楽しめる作品だと思う。

(*1) “ソウル”たちは外科手術で人間の首の裏を切開してボディ・スナッチするわけだが、最初の“ソウル”はどうやってボディ・スナッチしたのだろうか? 

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Date: 2014.12.11 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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