あの傑作漫画の映画化 『寄生獣』 母なる大地と母性と

 あの傑作漫画『寄生獣』の映画化作品。
 監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『永遠の0』などで、そのVFXには定評のある山崎貴
 公開は11月29日から。今回は試写会にて鑑賞。
 作品名だけで観に行ったもので、詳細は知らなかったのだが、主催者からの上映前の説明でこの作品に続きがあることが知らされると、会場はちょっとざわついた。題名には“前編”とも“PartⅠ”とも謳っていないから、私以外にもこの作品が全2部作だと知らない人もいたようだ。今回は招待客だからまだいいのかもしれないが、知らずに劇場に観に行った客のなかには騙されたと感じる人もいるかもしれない。
 ちなみに完結編は来年4月に公開予定とのこと。

山崎貴 『寄生獣』 主役の泉新一には染谷将太。

 このブログでは漫画は一度しか取り上げていないのだが、その唯一の回には『寄生獣』の岩明均作品を扱っている。私自身は最近では漫画を頻繁に読むほうではない。それでも『寄生獣』は手元にあって何度も読み返している。そのくらい有名な漫画だし、クオリティの高い漫画だとも思う。『T2』の新型ターミネーターには『寄生獣』のアイディアが入っているという話もあるくらいだし、インパクトのある漫画であることは誰もが認めるだろう。
 今回の試写会の客層は、漫画を積極的に読んでいる層とは見えなかったのだけれど、あっけに取られるパラサイトの登場シーンや、ミギーと新一との滑稽なやりとりにも会場の反応はよかったし、漫画を知らない観客にもアピールする作品だったと思う。逆に漫画に愛着がある人ほど、漫画と違うところを発見して批判的なことをあげつらうことになるだろうが、これは人気漫画ほどそうなる傾向があるから仕方ないのかもしれない。
 題材としては、人間に寄生する生物(パラサイト)が人を乗っ取り、そのうえ餌として人を捕獲するというもののため、漫画では血生臭い場面が頻出する。しかし映画版ではそれほどグロい場面はなかった。撮影監督の阿藤正一中島哲也作品を撮っている人で、この『寄生獣』もどこか『告白』の教室の場面のようだ。画面が全体的に暗い印象で、彩度を抑えているように見える。これは血の色が鮮烈すぎないようにして、幅広い観客に受け入れやすいものにしているのかも。もしかするとミギー(声は阿部サダヲ)のノリが軽いのもそうした配慮かもしれない(批判のあるところだと思うが)。

 ※ 以下、ちょっとネタバレもあり。

『寄生獣』 パラサイトが変形する場面。

 映画独自の解釈としては、“母性”というものが大きく取り上げられている。新一(染谷将太)は母子家庭という設定になっているし、途中でパラサイトに寄生された新一の母親(余貴美子)は、新一を守るためにパラサイトの支配に抵抗しさえする。頭を切断されたはずの母親の何がそうさせたかと言えば、やはり“母性”ということになるのだろう。
 また、田宮良子(深津絵里)の役割が漫画以上に大きくなっているように感じられる。たとえば冒頭のナレーションは田宮良子の声で語られ、それは最後にも繰り返されることになるわけで、語り手が田宮良子だと思えなくもないという構造になっている。
 新一が右手をパラサイトに寄生されているのに対し、田宮良子は自分の支配している身体に別の生命(赤ん坊)を宿しているわけで、人間に寄生されているパラサイトと言えるかもしれない。新一が次第にミギーと交じり合って野生的な存在になっていくのに対し、田宮良子がどんなふうに変化していくのかというのも完結編の見どころだろう。

 パラサイトのキャラとしては、東出昌大の“笑顔”という仮面を貼り付けたような表情は、かえって不気味さを醸し出して特出していた。漫画で言えば三木というキャラがそんな笑顔だったのだが、三木は完結編でピエール瀧が演じるらしい。
 それからパラサイトたちの会合場面では、パラサイトたちがあさっての方を向きながら会話しているというのが奇妙でおもしろい。人間ならば多少は目を見て話すというのが礼儀だが、パラサイトにとっては意思の疎通ができれば問題ないわけで、会合の目的は達している。漫画にもそんな1コマはあったけれど、映像として観るとよりパラサイトと人間との感覚の違いが表れていたと思う。
 最後は大物の風格を漂わせた浅野忠信が登場し、次への期待を膨らませたところで終わる。この先がどうなるのか気になるところだし、ともかくも完結編が楽しみである。

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Date: 2014.11.27 Category: 日本映画 Comments (0) Trackbacks (4)

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