チェン・ユーシュン 『祝宴! シェフ』 台湾製グルメコメディ
『熱帯魚』(95)『LOVE GO GO』(97)で知られる台湾のチェン・ユーシュン監督の16年ぶりの長編作品。

“神”と称された伝説の料理人・蝿師を父に持つシャオワン(キミ・シア)は、恋人の借金の連帯保証人として夜逃げする破目に陥る。シャオワンは借金を返すために母パフィー(リン・メイシウ)や、追ってきた借金取りと一緒になって料理大会に出場し、100万元の大金を獲得しようとする。
どのキャラクターも個性的で賑やかで楽しい映画だ。売れないモデルのシャオワンは料理よりオシャレに夢中(蝿のタトゥーに、蝿模様の服というのがオシャレなのかは疑問だが)で、ステージでの見映えばかりが気になるらしい。母親パフィーは料理屋をやっているくせに料理はダメで、太めの体をくねらせダンスすることが客寄せになると疑わないという勘違いだから、店は繁昌とはほど遠い。
それから“神”と呼ばれた蝿師に対して、“鬼”や“人”と呼ばれる料理人も登場して(「人にはテーマ曲がある」という“鬼”の登場シーンはおかしい)、それぞれの独創的な料理も描かれる。そのほかシャオワンといい関係になる料理ドクターや、シャオワンの追っかけみたいな召喚獣3人組なんかも登場する。(*1)
キャラが多すぎて展開にまとまりにも欠ける部分があるし、上映時間が長い(145分)のも気にかかるのだけれども、そんなことを大目に見れば楽しい映画であることも確かだろう。グルメ映画ということで、画面を彩る宴席料理は独創的だし、見た目にもおいしそう。あまりに凝りすぎていて自分で作るのは難しそうだけれど、台湾の家庭料理だという「トマトの卵炒め」なら出来そう(公式HPにはレシピも)。登場人物に悪い奴がいないのでほんわかした気分で安心して観られる作品だと思う。

チェン・ユーシュン監督と言えば、私はかなり昔に処女作の『熱帯魚』を観た(今では閉館した三百人劇場で開催された台湾映画祭のときだった)。その一度きりでソフトもあまり出回ってないようだから、内容はほとんど記憶にないのだが、とても楽しかったことは覚えている(傑作だったような気もする)。今回の新作に合わせて、レンタルDVDで初めて観た『LOVE GO GO』も素晴らしい作品だと思う(この作品もコメディだが、モテない面々に対する眼差しがどこかあたたかい)。
『熱帯魚』では、熱帯魚が空に浮かぶシーンが印象に残っているのだが、これは主人公の幻想だったのだろうか。『祝宴! シェフ』でも、シャオワンは夢見がちなところがあり、ダンボールを頭から被って外界を遮断すると、どこか別の世界へと向かう。青い海が広がる砂浜とか、ときには月の世界にまで空想は広がっていく(『LOVE GO GO』でも透明人間の描写は月面の足跡みたいだった)。日常のなかのふとした拍子に垣間見られる夢や幻想、チェン・ユーシュン映画のそんな部分がとてもいいのだ。
ただ16年ぶりの新作『祝宴! シェフ』は、それまでの2作とはかなりテイストが変わっているという気もする。というのも今回の作品は、バカ騒ぎのほうに振れすぎているからかもしれない。料理大会の審査員の大げさなリアクションは、漫画『ミスター味っ子』のそれのように誇張されている。次第にエスカレーションする表現は、ついには椅子から飛び上がって宇宙遊泳してみたりとか、もはや美味しいのかどうなのかはさっぱりわからない。とにかくバカらしさ満点で、やりすぎな気も……。
とりあえず、次は16年後とは言わずに新作を観たいものだと思う。
(*1) 召喚獣たちはヒロインのシャオワン役のキミ・シアとともに、台湾のTVCMにも出ているらしい。台湾ではみんな人気者なのだろうか?


“神”と称された伝説の料理人・蝿師を父に持つシャオワン(キミ・シア)は、恋人の借金の連帯保証人として夜逃げする破目に陥る。シャオワンは借金を返すために母パフィー(リン・メイシウ)や、追ってきた借金取りと一緒になって料理大会に出場し、100万元の大金を獲得しようとする。
どのキャラクターも個性的で賑やかで楽しい映画だ。売れないモデルのシャオワンは料理よりオシャレに夢中(蝿のタトゥーに、蝿模様の服というのがオシャレなのかは疑問だが)で、ステージでの見映えばかりが気になるらしい。母親パフィーは料理屋をやっているくせに料理はダメで、太めの体をくねらせダンスすることが客寄せになると疑わないという勘違いだから、店は繁昌とはほど遠い。
それから“神”と呼ばれた蝿師に対して、“鬼”や“人”と呼ばれる料理人も登場して(「人にはテーマ曲がある」という“鬼”の登場シーンはおかしい)、それぞれの独創的な料理も描かれる。そのほかシャオワンといい関係になる料理ドクターや、シャオワンの追っかけみたいな召喚獣3人組なんかも登場する。(*1)
キャラが多すぎて展開にまとまりにも欠ける部分があるし、上映時間が長い(145分)のも気にかかるのだけれども、そんなことを大目に見れば楽しい映画であることも確かだろう。グルメ映画ということで、画面を彩る宴席料理は独創的だし、見た目にもおいしそう。あまりに凝りすぎていて自分で作るのは難しそうだけれど、台湾の家庭料理だという「トマトの卵炒め」なら出来そう(公式HPにはレシピも)。登場人物に悪い奴がいないのでほんわかした気分で安心して観られる作品だと思う。

チェン・ユーシュン監督と言えば、私はかなり昔に処女作の『熱帯魚』を観た(今では閉館した三百人劇場で開催された台湾映画祭のときだった)。その一度きりでソフトもあまり出回ってないようだから、内容はほとんど記憶にないのだが、とても楽しかったことは覚えている(傑作だったような気もする)。今回の新作に合わせて、レンタルDVDで初めて観た『LOVE GO GO』も素晴らしい作品だと思う(この作品もコメディだが、モテない面々に対する眼差しがどこかあたたかい)。
『熱帯魚』では、熱帯魚が空に浮かぶシーンが印象に残っているのだが、これは主人公の幻想だったのだろうか。『祝宴! シェフ』でも、シャオワンは夢見がちなところがあり、ダンボールを頭から被って外界を遮断すると、どこか別の世界へと向かう。青い海が広がる砂浜とか、ときには月の世界にまで空想は広がっていく(『LOVE GO GO』でも透明人間の描写は月面の足跡みたいだった)。日常のなかのふとした拍子に垣間見られる夢や幻想、チェン・ユーシュン映画のそんな部分がとてもいいのだ。
ただ16年ぶりの新作『祝宴! シェフ』は、それまでの2作とはかなりテイストが変わっているという気もする。というのも今回の作品は、バカ騒ぎのほうに振れすぎているからかもしれない。料理大会の審査員の大げさなリアクションは、漫画『ミスター味っ子』のそれのように誇張されている。次第にエスカレーションする表現は、ついには椅子から飛び上がって宇宙遊泳してみたりとか、もはや美味しいのかどうなのかはさっぱりわからない。とにかくバカらしさ満点で、やりすぎな気も……。
とりあえず、次は16年後とは言わずに新作を観たいものだと思う。
(*1) 召喚獣たちはヒロインのシャオワン役のキミ・シアとともに、台湾のTVCMにも出ているらしい。台湾ではみんな人気者なのだろうか?
![]() |
![]() |

![]() |

- 関連記事
-
- 『ニンフォマニアックVol. 2』 “ポルノ”は退屈?
- チェン・ユーシュン 『祝宴! シェフ』 台湾製グルメコメディ
- 『トム・アット・ザ・ファーム』 こんなふうにも撮れるんです
スポンサーサイト
トラックバック:
>>祝宴!シェフ / 總舖師:移動大厨 Zone Pro Site: The Moveable Feast from 勝手に映画評
台湾映画は、初めてかな?超単純化すれば、超一流料理人の父を持った娘が、全国宴席料理大会に出場して優勝を目指すという物語。詳しいSynopsysは、どこか他で探してみてください。
そのタイトルの通り、料理がたくさん出てくる作品です。今回は、お昼を挟んで見たんです... >READ
- プロフィール
Author:Nick
新作映画(もしくは新作DVD)を中心に、週1本ペースでレビューします。
- 最新記事
- 最新トラックバック
- 最新コメント
- 月別アーカイブ
-
07
09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03
- カテゴリ
- カウンター
- メールフォーム
- タグクラウド
-
- 検索フォーム
- RSSリンクの表示
- リンク
- このブログをリンクに追加する
- QRコード
この記事へのコメント: