『こっぱみじん』  木っ端微塵になっても、まだ大丈夫

 監督はピンク映画出身の田尻裕司
 出演は我妻三輪子、中村無何有、小林竜樹、今村美乃など。

『こっぱみじん』  主演の我妻三輪子。

 “こっぱみじん”なんて言葉は駄洒落くらいでしか聞かないだろうけれど、なぜ木っ端微塵になってしまうのかと言えば、この映画では人を好きになってもその想いが成就することがないから。なぜ成就しないのかと言えば、自分が勝手に好きになったとしても、好きになった相手が自分のほうを向いてくれることは滅多にないことだからだ。
 ヒロインの楓は一応彼氏も出来たのだけれど、実は幼なじみの拓也のことが気になっている。しかし拓也は実はゲイであり、彼の想い人は楓の兄貴なのだ。その兄貴は彼女の有希と生活しているが、有希には別の男がいて、その男の子供を妊娠している。4人はそんな関係にある。
 楓の好きになったのは、たまたま同性愛者だったからその想いは叶わない。その拓也の想い人である兄貴は有希とのトラブルで精一杯で、有希は二股を反省してひとりで子供を産むことを決心する。楓も実は彼氏の想いを袖にしているわけで、誰の想いもこっぱみじんになる……。

『こっぱみじん』 拓也は有希に対して怒りをあらわに……。楓は拓也の想いを知ることになる。

 舞台は小高い山が周わりを囲み、川が流れ、寂れた商店街と小さな美容室といった風景。あまりにありふれた風景で何の特徴もないと思うのは、私自身が似たような土地の出身だからなのかもしれないが、とにかく退屈そうな場所なのだ(自分もそう感じていたから言うのだけれど)。そんな普通の場所で、ごく普通の男女の、ごく普通の人間模様が描かれる。
 一応ゲイの登場人物が出てくるけれど、拓也がほかの登場人物たちと比べて特に変った存在というわけではない。拓也はゲイだから兄貴に気持ち悪がられるのを恐れていたわけだが、兄貴も自らの状況(同棲している有希がほかの男の子供を妊娠していたということ)のカッコ悪さを挙げて、ゲイという存在が特別にカッコ悪いわけじゃないと慰める。もちろんそれで拓也の想いが成就するわけではないのだけれど、大切な友達としては変らないのだ。

 登場人物たちはみんなそれなりにいい人で、「好きという気持ちを伝えられただけでも満足」という謙虚さは、ストーカーなんて存在とは対極にある。そのつつましさはとても好ましい。
 音楽でごまかすことも、奇を衒った演出もなく、坦々と人間模様を綴っていく。それでも退屈することはないのだけれど、ゲイの拓也が激高するあたりのトラブルを描くとなるとちょっと空々しい感じもした(若手の俳優陣は頑張っていると思うが)。日常のなかに突然生じる特別な出来事を描くには、やはり何らかの演出の工夫があってもよかったとも思える。冒頭の子供の頃のエピソードが、音声だけで処理されるという工夫がされていたように……。ああいう場面にリアリティを持たせるのは余程の演者でなければ難しいのだから。

 主演の我妻三輪子はPFFスカラシップ作品の『恋に至る病』で主役を演じていた子。この映画ではいわゆる“おこげ”とか言われる立場で(たしかそんな題名の映画もあったが)、色恋のトラブルからも離れた位置にあるのだけれど、穏やかなラストにはちょっと心温まる気がした。表情がくるくると変るような我妻三輪子はやっぱりかわいらしい。

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Date: 2014.08.06 Category: 日本映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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