『暗殺の詩』『ラムの大通り』などロベール・アンリコ作品

ロベール・アンリコ 『冒険者たち』 ジョアンナ・シムカス、リノ・ヴァンチュラ、アラン・ドロンの三人。

 ロベール・アンリコ監督は、何と言っても『冒険者たち』で有名だ。私はそれ以外の作品はまったく観たことがなかったのだが、最近『暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよ』『ラムの大通り』がレンタルとなったので、そのほかの作品もまとめてやっつけてみた。
 『冒険者たち』という映画は、ある世代にとっては多分大切な映画なんだろうと思う。私自身はその世代とはズレるけれど、少なからず思い入れがある映画ではあるし、何度も泣かされた作品でもあるのだが、今さらこれを好きだと語るのはあまりにベタすぎるような気もするので、とりあえず今回はその他のロベール・アンリコ作品について。

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  『冒険者たち』のような男ふたりと女ひとりという組み合わせだが、この映画ではそのひとりが組織に追われている。デビッド(ジャン=ルイ・トランティニャン)は牢獄のような場所から看守を殺害して逃げ出す。山上の城でデビッドを見つけたトマス(フィリップ・ノワレ)は妻と共に彼を匿うことになる。
 デビッドは何を知りすぎたのか語らないから、なぜ追われているのかの詳細はわからない。追ってくる男が待ち合わせに急いでいるだけという勘違いとか、突然隠れ家が軍隊の演習に巻き込まれるという冗談のような寸劇もあり、デビッドが追われているというのは精神的な病なのかとも思わせるのだが果たして……。

 『冒険者たち』も前半の楽しさは、レティシア(ジョアンナ・シムカス)の死で一変する。後半は、残された男ふたりがレティシアの死に報いようとする沈鬱な振舞いがあるばかりだった。また、町山智浩が著書『トラウマ映画館』で紹介している『追想』も、冒頭に描かれる自転車の疾走シーンは多幸感に溢れているが、途中からは妻子を殺された男の凄惨な復讐劇へと展開し、あまりの落差に驚かされた。
 もしかすると、こうした落差はデビュー作の短編『ふくろうの河』でもすでに垣間見られるものかもしれない。今まさに首を吊られようとする死刑囚が見た幻想と、目の前に迫る恐ろしい現実との落差だ。
 『暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよ』も、すべてがデビッドの妄想として済んでしまうようなミスリードもあって楽しい場面もあるのだが、やっぱり結末は苦かった。

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 アンリコ作品にあって『ラムの大通り』が例外なのかわからないが、とにかく馬鹿な映画で楽しかった。禁酒法時代に酒の密輸船に乗っていた船乗りたちの話で、豪快な海の男たちの馬鹿騒ぎが描かれる。ラム酒の飲み比べとか、暗闇撃ち(暗闇のなかで命を賭けて銃の前に立つ度胸試し)とか、巌流島の決闘みたいなこととか、いい歳をした大人だが子供じみたことばかりしている。彼らは「お前はいいやつだ」とか「元気か」と笑いかけながら、次の瞬間には拳を喰らわせるという奇妙なコミュニケーションをしていて、けんかすることが楽しくて仕方がなく、意味もなく殴り合っているらしい。
 そんな男である主人公コルニー(リノ・ヴァンチュラ)は、映画館で見た女優リンダ・ラルー(ブリジッド・バルドー)に憧れる。映画の途中でフィルムが燃え出すというトラブルに遭うものの、続きを観たいという一心で海を渡って別の映画館へと向かう。たまたま本物のリンダに会って夢が叶うというエピソードもあるけれど、最後はやはり映画のなかのリンダに見とれているという、『カイロの紫のバラ』みたいな映画愛を感じさせるラストだった。

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 『若草の萌えるころ』はジョアンナ・シムカスの主演作。叔母が病に倒れ、死の淵を彷徨っている。そんな叔母の介護に疲れたアニタ(シムカス)は、叔母の死から目を背けようと街を彷徨する。ほとんど一夜の出来事だけを描いているが、ジョアンナ・シムカスの存在もあって、とても魅力的な作品。
 作品の構造としては『ふくろうの河』をそのままなぞっている。死刑囚が今際の際に見たのが妻の待つ家へと辿り着くという幻想だったように、叔母の死を受け入れられないアニタは夜の彷徨を経て、かつての叔母との幸福な時代へと遡行することになる。

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 『オー!』の主人公(ジャン=ポール・ベルモンド)は、なぜか「アルセーヌ・ルパン+アル・カポネ」と評されていて、ベルモンドの飄々とした雰囲気もあって、主人公がアニメ『ルパン三世』のキャラクターに見えてくる。主人公を助ける記者役の風貌は銭形警部のようだし、乗っている車も妙に似ている。制作年代はほぼ同じだから、影響関係ということはないと思うけれど……。

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Date: 2014.05.12 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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