ロバート・アルドリッチ『悪徳』と、その他のDVD新作について
![]() |

蓮實重彦は「オルドリッチを代表する1本となれば、『キッスで殺せ』や『ビッグ・ナイフ』をはじめとする初期の白黒スタンダードの硬質な作品」だと、著書の『映像の詩学』で記している。もちろんオルドリッチとはロバート・アルドリッチのことであり、『ビッグ・ナイフ』とは『悪徳』の原題である。しかし、この作品は日本では公開されず、90年代にWOWOWで放映されたことがあるだけとのこと。そんな作品がTSUTAYAでは先月からレンタルが開始となっている。
『悪徳』はロバート・アルドリッチ監督の1955年の作品。ちょっと前に借りた『合衆国最後の日』

冒頭にナレーションで簡潔に状況が語られる。「名前はチャーリー・キャッスル。職業は映画スター。悩みは地位の維持。彼は夢を売り渡したが、今も夢見る」と。ハリウッドの製作陣が本当にこんな連中だったとしたら恐ろしいと思わせるような内幕物。
主人公は人気スターだが、会社に弱みを握られていて、つまらない映画ばかりに出ている。ハリウッドで地位を維持するのは大変だ。彼は友人の犠牲でなんとか今の地位を守っているが、そのために会社からは好きなように扱われている。妻はそんな夫を心配して、夫に会社と闘うことを求める。
原作は戯曲で、この映画も一幕物の演劇のように、ほとんど主人公の邸宅のリビングだけで物語は進行するのだが、ラストの出来事は舞台の外部で生じる。このあたりは演劇的な手法をそのまま取り入れていて、見えない部分で起きていることを推測させるところがゾクゾクする。
タイトルバックでは、主人公(ジャック・パランス)頭をかきむしり悩む姿がアップで映される。派手なアクションなどない心理的な葛藤劇なのだけれど、やっかいな相手を敵に回して、それでも「夢見る」ことを忘れることができずに闘い、そして敗れ去っていくジャック・パランスの顔がとてもいい。
新作映画を観るのに映画館に通うのはもちろん好きなのだけれど、古い映画のほうが断然いいとなるとちょっと虚しくもなる。そんな気がした1本。
![]() |

![]() |

![]() |

![]() |

![]() |

- 関連記事
-
- 『ローン・サバイバー』 “痛み”のある落下アクション
- ロバート・アルドリッチ『悪徳』と、その他のDVD新作について
- 『フルートベール駅で』 “叫ぶこと”と“悼むこと”
スポンサーサイト
この記事へのコメント: