ロバート・アルドリッチ『悪徳』と、その他のDVD新作について

悪徳 [DVD]



 蓮實重彦「オルドリッチを代表する1本となれば、『キッスで殺せ』や『ビッグ・ナイフ』をはじめとする初期の白黒スタンダードの硬質な作品」だと、著書の『映像の詩学』で記している。もちろんオルドリッチとはロバート・アルドリッチのことであり、『ビッグ・ナイフ』とは『悪徳』の原題である。しかし、この作品は日本では公開されず、90年代にWOWOWで放映されたことがあるだけとのこと。そんな作品がTSUTAYAでは先月からレンタルが開始となっている。

 『悪徳』はロバート・アルドリッチ監督の1955年の作品。ちょっと前に借りた『合衆国最後の日』(1977年)は、核爆弾を巡るテロリストと大統領の攻防という派手な映画だったが、この作品はまったく正反対な室内劇。
 冒頭にナレーションで簡潔に状況が語られる。「名前はチャーリー・キャッスル。職業は映画スター。悩みは地位の維持。彼は夢を売り渡したが、今も夢見る」と。ハリウッドの製作陣が本当にこんな連中だったとしたら恐ろしいと思わせるような内幕物。
 主人公は人気スターだが、会社に弱みを握られていて、つまらない映画ばかりに出ている。ハリウッドで地位を維持するのは大変だ。彼は友人の犠牲でなんとか今の地位を守っているが、そのために会社からは好きなように扱われている。妻はそんな夫を心配して、夫に会社と闘うことを求める。

 原作は戯曲で、この映画も一幕物の演劇のように、ほとんど主人公の邸宅のリビングだけで物語は進行するのだが、ラストの出来事は舞台の外部で生じる。このあたりは演劇的な手法をそのまま取り入れていて、見えない部分で起きていることを推測させるところがゾクゾクする。
 タイトルバックでは、主人公(ジャック・パランス)頭をかきむしり悩む姿がアップで映される。派手なアクションなどない心理的な葛藤劇なのだけれど、やっかいな相手を敵に回して、それでも「夢見る」ことを忘れることができずに闘い、そして敗れ去っていくジャック・パランスの顔がとてもいい。
 新作映画を観るのに映画館に通うのはもちろん好きなのだけれど、古い映画のほうが断然いいとなるとちょっと虚しくもなる。そんな気がした1本。

ある愛へと続く旅 [DVD]


 ペネロペ・クルスが老け役メイクで頑張る、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景にしたメロドラマ。矢継ぎ早に様々な出来事が起こっていく展開で、“壮大な予告編”(これは高橋源一郎がサドの小説について要約した言葉だったと思う)を観ているような気分にもなるが、ラストの意外な展開もあって楽しんだ。実話をもとにした作品が多いなか、正反対のメロドラマがかえって新鮮かも。冒頭のシーンが色彩感覚豊かでとても印象的。また、もうひとりの主役であるサーデット・アクソイの存在感もいい。


最愛の大地 [DVD]


 この映画も『ある愛へと続く旅』と同じくボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材にしている。ブラッド・ピット製作の『それでも夜は明ける』もかなり大真面目だったが、アンジェリーナ・ジョリーの初監督作品の『最愛の大地』も、戦争の悲惨さを描く大真面目な作品。女性監督らしく(?)戦争を題材としても、それにより敵と見方に引き裂かれる男女がテーマ。ドラマチックな結末だった。

フローズン・グラウンド [DVD]


 ジョン・キューザックニコラス・ケイジの対決を期待するも、ちょっとスカされた感じ。キューザックが連続猟奇殺人事件の犯人であることは明らかなのに、証拠がない故にケイジ=刑事は手を出せない。ケイジのイライラは観客のイライラでもあり、そうしているうちに証拠を握る女においしいところを持っていかれるという、スター共演にしては残念。

愛の原罪 [DVD]


 罪を犯した男と見守る女という『罪と罰』ふうのテーマ設定はいいし、サンダンス映画祭最優秀撮影賞(ミハウ・エングレルト)を受賞した撮影もいいと思う。それだけにラストがあまりに投げやりなのが惜しい。問題だけ出しておいて、解答がないクイズみたいだった(答えを推測できなくはないけれど)。主人公の若者はなかなかの二枚目。

天使の処刑人 バイオレット&デイジー [DVD]


 尼さん姿の少女がふたり、タランティーノ風の無駄口を叩きながらターゲットを暗殺する。無駄口の出来がタランティーノほどではないのは仕方ないとしても、それ以降がさっぱりだった。主役のふたり(シアーシャ・ローナンアレクシス・ブレデル)はとてもかわいらしいのだけれど、それだけでは……。
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Date: 2014.03.31 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (0)

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