『告白小説、その結末』 ネタバレ厳禁! ふたりの関係は?
原作はデルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」。
原題「D’après Une Histoire Vraie」で、英題は「Based on a true story」。

人気作家デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)のサイン会に現れたのは、エルという美しい女性(エヴァ・グリーン)だった。デルフィーヌの気持ちがわかると言うエルは聞き上手で、次の仕事のことで悩んでいるデルフィーヌの話し相手になる。次第にデルフィーヌに近づいたエルは、一緒に生活をするまでなっていくのだが……。
エルという女がいかにもあやしい存在で、何のために近づいてきたのかというところが気になるところ。人気作家の財産目当てなのか、それともデルフィーヌのことが気に入った同性愛者なのか。
デルフィーヌは自殺した母親のことを綴った私小説でベストセラー作家の仲間入りを果たしたのだが、次の作品が未だに書けずにいる。“事実に基づいた”作品とは異なり、次回作ではフィクションに挑戦しようと考えているのだが、なぜか書き出そうとして一文字たりとも書くことができない。そんなデルフィーヌの事情を知ったエルは、フィクションではなくかつて書いた私小説(告白小説)の続きを書くべきだと助言することになる。
後半では田舎の一軒家でたまたま足にケガを負ったデルフィーヌは、エルに監禁されているかのような状態になる。狂ったファンに作家が小説を書くことを強要される『ミザリー』を思わせる展開に……。
※ 以下、ネタバレあり! 結末にも触れているので要注意!!

エルはデルフィーヌの良き理解者で、彼女のことを何でもわかっている。しかもエルの仕事はゴーストライターであり、文章を書く仕事をしている。さらにデルフィーヌを次回作に専念させるため、ほかの雑用仕事(たとえば講演会)にデルフィーヌの替玉として参加したりもする。もしかするとエルはデルフィーヌの立場そのものを奪おうとしているのか。そんなことも思いながら観ていたのだけれど、オチが明らかにされてみれば「なるほど」という感じはするものの、そのアイディアのみで突き進んでしまった感もある。多分、勘のいい観客ならば途中でオチに気がつくんじゃないだろうか。
ネタバレは厳禁という作品だと思うので、以下は要注意のこと(反転するとネタバレ)。
簡単に言ってしまえば『告白小説、その結末』は、女性版の『ファイト・クラブ』

オチを知ればデルフィーヌが異様にどん臭い女でエルの企みにまったく気づこうとしないのも理解できるし、エルのキレっぷりが非現実的なのも肯ける。エルはデルフィーヌの書けないイライラを解消するための幻だったのだろうし(ミキサーを叩き壊すエヴァ・グリーンがちょっと笑える)、デルフィーヌが本当に書かなければならないことを教えてくれる存在でもある。
ちなみにウィキペディアで「イマジナリーフレンド」の項目を参照してみると、本作のデルフィーヌとエルの関係そのものだった。イマジナリーフレンドは本人に助言を行ったり、時に自己嫌悪の具現化として自ら傷つけることもあるのだとか。まさに本作の解説のようでもあり、そこから抜け出ていないところがこの映画が物足りないところになるだろうか。
以下はあまり関係ない話だけれど、たまたま読んでいた映画の本に大林宣彦監督のインタビューがあった(『映画の言葉を聞く 早稲田大学「マスターズ・オブ・シネマ」講義録』)。そこで大林監督が語っていたのが『ふたり』についてで、『ふたり』

『ふたり』という作品は赤川次郎さんの原作で、事故死してしまったしっかり者の姉と、姉を頼ってばかりいた妹との奇妙な物語です。石田ひかりが演じた妹が主人公で、亡くなったお姉さんが幽霊みたいに出てくる。でも原作では、その幽霊は妹が自分で成長するために自分でつくりだしていた幻想だったと記されているんですね。
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