『ゲティ家の身代金』 じいさんたち頑張る
『エイリアン:コヴェナント』『悪の法則』などのリドリー・スコット監督の最新作。
巷で話題になっていたのは、この作品の出演者だったケビン・スペイシーがセクハラ騒動で大問題となって出演シーンが使用できなくなり、その部分を急遽再撮影したということ。代役となったクリストファー・プラマーは、その役でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされた。

石油王の孫が誘拐されたという実話をもとにした作品。ただ、この作品では誘拐事件よりも、石油王ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)のキャラのほうが目立つ。身代金を払わないとマスコミの前で宣言して、誘拐犯どころか世間まで驚かすことになる。
とにかく世界一の金持ちとまで言われたゲティじいさんの守銭奴ぶりが見もの。ホテルではランドリー・サービスをケチって自分で下着を洗うし、屋敷にやってくる客のための電話代がかさむからと公衆電話を設置したりする。あげくの果てには身代金を値切ってみたり、身代金を利用して税金対策をしてみたりもする。そこまでやらないと世界一にはなれないということだろうか。守銭奴と資本家は似ている部分があるらしいのだが……。
そんなゲティじいさんと向かい合うことになるのが、誘拐されたジャン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)の母親ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)。ゲイルはすでに離婚していてゲティ家の人間ではないが、巨額の身代金を出すほどの金はどこにもなく、元義父であるゲティじいさんを頼るほかなく、何とか金を出させるよう奮闘することになる。
※ 以下、ネタバレもあり!

時代は1970年代だからかちょっとのんびりしている。電話を逆探知するようなこともできないし、犯人たちマフィアの人質の扱いも酷いものではないから緊迫感には欠けるのだ。不思議だったのは誘拐事件自体がマスコミにバレているというのに、マフィアは警察が動いていないと信じ込んでいるあたり。ゲティ3世を解放したあとになって慌てて捜し回るというのは間が抜けている気もする。
それでもちょっと怖かったのはそのマフィアの描き方で、彼らが町ぐるみでその仕事に取り組んでいるところ。一度は逃げ出したゲティ3世も人のいい警察官に保護されて事件解決かと思われた矢先に、どこからか情報が漏れていて連れ戻されてしまう。その地域のすべてを取り仕切っているのは警察などではなくマフィアなのだ。受け取った身代金は地域のおばさまたちが総動員されて、人力で大金を数え上げる。誰もがそれを仕事として当たり前のようにこなしていて、悪事に加担している風が一切ないのがかえって怖い。マフィアの生き方が地域に根付いているということなのだろう。
ゲティじいさんは金に関わる交渉では誰にも負けない。アラブの石油を仕切っている地元部族ともうまく交渉して権利を買い取ったのだろうし、身代金を求める犯人との交渉でもゲティじいさんのほうが上手だったと言えるかもしれない。ただ、息子を奪い返したい母親ゲイルや、ゲティの業突張りに嫌気が差したフレッチャー(マーク・ウォールバーグ)のように、金以外のものに突き動かされている人間にはその手腕も通じないらしい。
ゲティじいさんを急遽演じたクリストファー・プラマーは現在88歳だとか。主演作品『手紙は憶えている』も記憶に新しいところだが、まだまだ頑張っている。監督であるリドリー・スコットももう80歳。この作品でも人質の耳を切り取り血が噴き出してくるシーンを嬉々として描いていて、その悪趣味ぶりも健在だった。


巷で話題になっていたのは、この作品の出演者だったケビン・スペイシーがセクハラ騒動で大問題となって出演シーンが使用できなくなり、その部分を急遽再撮影したということ。代役となったクリストファー・プラマーは、その役でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされた。

石油王の孫が誘拐されたという実話をもとにした作品。ただ、この作品では誘拐事件よりも、石油王ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)のキャラのほうが目立つ。身代金を払わないとマスコミの前で宣言して、誘拐犯どころか世間まで驚かすことになる。
とにかく世界一の金持ちとまで言われたゲティじいさんの守銭奴ぶりが見もの。ホテルではランドリー・サービスをケチって自分で下着を洗うし、屋敷にやってくる客のための電話代がかさむからと公衆電話を設置したりする。あげくの果てには身代金を値切ってみたり、身代金を利用して税金対策をしてみたりもする。そこまでやらないと世界一にはなれないということだろうか。守銭奴と資本家は似ている部分があるらしいのだが……。
そんなゲティじいさんと向かい合うことになるのが、誘拐されたジャン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)の母親ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)。ゲイルはすでに離婚していてゲティ家の人間ではないが、巨額の身代金を出すほどの金はどこにもなく、元義父であるゲティじいさんを頼るほかなく、何とか金を出させるよう奮闘することになる。
※ 以下、ネタバレもあり!

時代は1970年代だからかちょっとのんびりしている。電話を逆探知するようなこともできないし、犯人たちマフィアの人質の扱いも酷いものではないから緊迫感には欠けるのだ。不思議だったのは誘拐事件自体がマスコミにバレているというのに、マフィアは警察が動いていないと信じ込んでいるあたり。ゲティ3世を解放したあとになって慌てて捜し回るというのは間が抜けている気もする。
それでもちょっと怖かったのはそのマフィアの描き方で、彼らが町ぐるみでその仕事に取り組んでいるところ。一度は逃げ出したゲティ3世も人のいい警察官に保護されて事件解決かと思われた矢先に、どこからか情報が漏れていて連れ戻されてしまう。その地域のすべてを取り仕切っているのは警察などではなくマフィアなのだ。受け取った身代金は地域のおばさまたちが総動員されて、人力で大金を数え上げる。誰もがそれを仕事として当たり前のようにこなしていて、悪事に加担している風が一切ないのがかえって怖い。マフィアの生き方が地域に根付いているということなのだろう。
ゲティじいさんは金に関わる交渉では誰にも負けない。アラブの石油を仕切っている地元部族ともうまく交渉して権利を買い取ったのだろうし、身代金を求める犯人との交渉でもゲティじいさんのほうが上手だったと言えるかもしれない。ただ、息子を奪い返したい母親ゲイルや、ゲティの業突張りに嫌気が差したフレッチャー(マーク・ウォールバーグ)のように、金以外のものに突き動かされている人間にはその手腕も通じないらしい。
ゲティじいさんを急遽演じたクリストファー・プラマーは現在88歳だとか。主演作品『手紙は憶えている』も記憶に新しいところだが、まだまだ頑張っている。監督であるリドリー・スコットももう80歳。この作品でも人質の耳を切り取り血が噴き出してくるシーンを嬉々として描いていて、その悪趣味ぶりも健在だった。
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