ソダーバーグ監督 『マジック・マイク』 昼の世界と夜の世界
引退を表明したスティーブン・ソダーバーグ監督の作品。今年は、この『マジック・マイク』のほかにも『サイド・エフェクト』『恋するリベラーチェ』と、3本のソダーバーグ作品が日本で公開された。『マジック・マイク』は8月に劇場公開され、12月20日にDVDがリリースされた。
出演はチャニング・テイタム、アレックス・ペティファー、マシュー・マコノヒー、コディ・ホーンなど。

ヒッチコック流サスペンスを見せてくれた『サイド・エフェクト』。マイケル・ダグラスの熱演が見事だった『恋するリベラーチェ』は、きらびやかな芸能の世界でのゲイ・ムービー。そして、この『マジック・マイク』は男性ストリッパーの話だが、予告編にあるようなサクセスストーリーというよりは青春映画といった印象。多彩な3作だが、個人的な好みとしては『マジック・マイク』が一番よかった(特段、男性ストリップが好みなわけではないが)。
主人公マイク(チャニング・テイタム)は夜には“マジック・マイク”と呼ばれるストリッパーだが、昼には起業家としての顔を持ち、将来は手作り家具の商売を目論んでいる。ストリッパーは起業のための資金集めの手段でしかない。ある日、マイクは19歳のアダム(アレックス・ペティファー)と出会い、ストリップ・クラブの仕事を紹介する。アダムは姉ブルック(コディ・ホーン)と同居しているニートみたいなものだが、ストリップの仕事をするようになって次第にその世界にはまっていく。
“昼の世界”と“夜の世界”。マイクはその世界の違いを弁えている。というよりも30代のマイクには、ストリップで女性客を沸かせ、その後3Pを楽しむような放蕩生活には限りがあることを知ってしまっているのかも。ストリップ・クラブの経営者ダラス(マシュー・マコノヒー)には“夜の世界”で生きていくという決意があるが、マイクはそうではない。だから、朝が来れば「確かな人生がほしい」と陽の光の下を起業家として活動したりもする。どこかで真っ当な世界への憧憬を捨てきれないようなのだ。マイクがたまたまその世界に引き込むことになってしまったアダムは、もしかすると“夜の世界”から抜け出せなくなってしまう側の人間なのかもしれない(はたまた、マイクと同じような経緯を辿って“昼の世界”に回帰するのかもしれない)。

昼の場面は、フロリダの太陽で灼かれたかのような黄色い色調に統一されている。ちなみにフィルターを使ったこの撮影もソダーバーグが担当している。この手法は『トラフィック』でも3つのエピソードを区別するのにうまく活用されていた。“昼の世界”に憧れるマイクは、アダムの母代りの姉ブルックに好意を抱くが、ブルック家のシーンでは照明の影響で夜でも黄色系の暖かい印象になっている。
ソダーバーグの演出はそつがなく、様々なアクションを同時に処理して過不足がない。たとえばタンパでの最後のショーの場面。マシュー・マコノヒーが尻を丸出しで女たちに揉みくちゃにされているのと同時に、“昼の世界”への逃走を図るマイクが描かれ、マイクが明け渡した“夜の世界”のメインアクトに登りつめるアダムも姿までもしっかり押さえているのだ。
これはどちらもひとつの達成であり、それがその場限りのものに過ぎないとしても、後味は悪くない。マイクが“夜の世界”を捨て朝食愛好家のブルックのもとに走るラストは、ベタなラブシーンだけれどちょっとにんまりさせる。
主役の“マジック・マイク”を演じるのは、『サイド・エフェクト』にも出演していたチャニング・テイタム。『マジック・マイク』のアイディアは、チャニング・テイタムが若い頃の経験を基にしているのだという。『サイド・エフェクト』ではあっけなく殺される犠牲者役だったが、この作品でのストリップ=ダンスシーンでは、身体能力の高さを発揮して圧倒的なパフォーマンスを見せている。それから『ペーパーボーイ』でもびっくりさせたマシュー・マコノヒーは、この作品でもエロ担当といった感じで、女性サービスに徹している。とはいえ、ストリップシーンはなかなかどぎつい部分もあるので、微笑ましかった『フル・モンティ』なんかよりはターゲットが狭いようにも思えなくもないが、アメリカでは女性客に大人気だったらしい。
ソダーバーグの作品

出演はチャニング・テイタム、アレックス・ペティファー、マシュー・マコノヒー、コディ・ホーンなど。

ヒッチコック流サスペンスを見せてくれた『サイド・エフェクト』。マイケル・ダグラスの熱演が見事だった『恋するリベラーチェ』は、きらびやかな芸能の世界でのゲイ・ムービー。そして、この『マジック・マイク』は男性ストリッパーの話だが、予告編にあるようなサクセスストーリーというよりは青春映画といった印象。多彩な3作だが、個人的な好みとしては『マジック・マイク』が一番よかった(特段、男性ストリップが好みなわけではないが)。
主人公マイク(チャニング・テイタム)は夜には“マジック・マイク”と呼ばれるストリッパーだが、昼には起業家としての顔を持ち、将来は手作り家具の商売を目論んでいる。ストリッパーは起業のための資金集めの手段でしかない。ある日、マイクは19歳のアダム(アレックス・ペティファー)と出会い、ストリップ・クラブの仕事を紹介する。アダムは姉ブルック(コディ・ホーン)と同居しているニートみたいなものだが、ストリップの仕事をするようになって次第にその世界にはまっていく。
“昼の世界”と“夜の世界”。マイクはその世界の違いを弁えている。というよりも30代のマイクには、ストリップで女性客を沸かせ、その後3Pを楽しむような放蕩生活には限りがあることを知ってしまっているのかも。ストリップ・クラブの経営者ダラス(マシュー・マコノヒー)には“夜の世界”で生きていくという決意があるが、マイクはそうではない。だから、朝が来れば「確かな人生がほしい」と陽の光の下を起業家として活動したりもする。どこかで真っ当な世界への憧憬を捨てきれないようなのだ。マイクがたまたまその世界に引き込むことになってしまったアダムは、もしかすると“夜の世界”から抜け出せなくなってしまう側の人間なのかもしれない(はたまた、マイクと同じような経緯を辿って“昼の世界”に回帰するのかもしれない)。

昼の場面は、フロリダの太陽で灼かれたかのような黄色い色調に統一されている。ちなみにフィルターを使ったこの撮影もソダーバーグが担当している。この手法は『トラフィック』でも3つのエピソードを区別するのにうまく活用されていた。“昼の世界”に憧れるマイクは、アダムの母代りの姉ブルックに好意を抱くが、ブルック家のシーンでは照明の影響で夜でも黄色系の暖かい印象になっている。
ソダーバーグの演出はそつがなく、様々なアクションを同時に処理して過不足がない。たとえばタンパでの最後のショーの場面。マシュー・マコノヒーが尻を丸出しで女たちに揉みくちゃにされているのと同時に、“昼の世界”への逃走を図るマイクが描かれ、マイクが明け渡した“夜の世界”のメインアクトに登りつめるアダムも姿までもしっかり押さえているのだ。
これはどちらもひとつの達成であり、それがその場限りのものに過ぎないとしても、後味は悪くない。マイクが“夜の世界”を捨て朝食愛好家のブルックのもとに走るラストは、ベタなラブシーンだけれどちょっとにんまりさせる。
主役の“マジック・マイク”を演じるのは、『サイド・エフェクト』にも出演していたチャニング・テイタム。『マジック・マイク』のアイディアは、チャニング・テイタムが若い頃の経験を基にしているのだという。『サイド・エフェクト』ではあっけなく殺される犠牲者役だったが、この作品でのストリップ=ダンスシーンでは、身体能力の高さを発揮して圧倒的なパフォーマンスを見せている。それから『ペーパーボーイ』でもびっくりさせたマシュー・マコノヒーは、この作品でもエロ担当といった感じで、女性サービスに徹している。とはいえ、ストリップシーンはなかなかどぎつい部分もあるので、微笑ましかった『フル・モンティ』なんかよりはターゲットが狭いようにも思えなくもないが、アメリカでは女性客に大人気だったらしい。
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