『スプリット』 Rejoice!

 『シックス・センス』『ヴィジット』などのM・ナイト・シャマランの最新作。
 シャマランは今回も自ら予告編に登場して「結末は絶対に内緒だよ」などと煽っているし、本編にもチョイ役で顔を出して無駄話を披露したりして、復活してシャマラン印の作品が撮れるのを楽しんでるっぽい。

M・ナイト・シャマラン 『スプリット』 ジェームズ・マカヴォイの七変化!!

 拉致された3人の女子高生と、拉致実行犯の多重人格の男との攻防戦ということで、多重人格のケビンを演じるジェームズ・マカヴォイの七変化はおもしろい。同じように多重人格を題材にした『レイジング・ケイン』(ブライアン・デ・パルマ監督)では、ジョン・リスゴーが多重人格者を演じていて、このときは人格交替の際にはブランクを挟んでいたように記憶しているのだが、『スプリット』のジェームズ・マカヴォイは人格交替の場面もワンシーンでやってみせたりもしてなかなかの見せ場をつくっている。
 それからもうひとりの主人公であるケイシーを演じるアニャ・テイラー=ジョイがまたいい。拉致されたにも関わらず妙に冷静なのは、彼女が普段から危機的状況に接していたからなのだが、どことなく猫娘チックというか人間離れ(?)した容貌がこの作品とよくマッチしている。

 ※以下、ネタバレもあり! オチを知りたくない人は要注意!!



『スプリット』 ケイシーを演じるアニャ・テイラー=ジョイ。

◆トラウマすら肯定すること

 多重人格という障害は元の人格を守るために発生する病だと言われているようだ。『スプリット』ではケビンという元の人格を守るために、23の人格が現れることになる。母親からの虐待というケビンの置かれた悲惨な状況から、元の人格を乖離させることでケビンを保護しようとする。そうした人間の防衛反応が多重人格というものを生み出すらしい。
 さらにこの作品においてはフレッチャー医師(ベティ・バックリー)が主張していたように、人格が変わると身体までが変化するという可能性が示される。そしてラストでは、ケビンの24番目の人格であるビーストが登場する。ケビンのなかの一部の人格が待ち望んでいたビーストは、壁をよじ登りショットガンで撃たれても死ぬことのない、人間を超越した存在であることが明らかになる。
 トラウマを背負って多重人格という病を抱えることになったケビンだが、それこそが人間の進化につながるものなのかもしれない。このことが本作が告げ知らせる福音ということになるのだろう。だからビーストは、叔父からの虐待を受けているケイシーの人生をも祝福せんとして「Rejoice(喜べ)」という言葉を投げかけることになる。

◆さらなるオチ……
 一応はここまでで物語は終わってもいいはずなのだが、この作品の一番のオチはそれが『アンブレイカブル』というシャマラン作品と結びつくところだろう。『スプリット』は『アンブレイカブル』と世界を共有するものであり、次回作の製作も決定しているということだ。
 ただ、それが判明するのはわざわざ『アンブレイカブル』の主人公デイヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)が登場してその関連を説明してくれるからで、それがなければその共通点を見出すことは難しい。『アンブレイカブル』を観ていない人にとっては意味不明だし、観ている人でもあまりの唐突さにちょっと唖然とするかもしれない。

 それでもあとになって『アンブレイカブル』を観直してみると、確かにつながっている部分があるということもわかる。
 『アンブレイカブル』では壊れやすい身体で“ミスター・ガラス”と呼ばれていた男が、そんな自分の人生を肯定するために自分とは正反対のアンブレイカブルなヒーローを見出すことになる。“ミスター・ガラス”はそのためにとんでもないことを仕出かすことになるわけだが、彼に見出されるダンも人生に虚しさを感じていた。“ミスター・ガラス”もダンも、自分の人生に意味を見出そうとする点では共通している。そして『スプリット』では、トラウマを抱えた人生そのものが肯定されることになるわけだ。
 “ミスター・ガラス”に見出されたダンは街の“守護者(ガーディアン)”として活動することになるのだが、一方のビーストはケビンの“守護者”である。ケビンを守るための別人格であるビーストだが、これは街に放たれれば街の人々にとっては害悪以外の何物でもないわけで、ふたりの“守護者”は対決(対立)することになるということなのだろう。
 今回はケイシーの変貌までは描かれることがなかったわけだけれど、次回作ではそのあたりも描かれるはずで、ケイシーを演じるアニャ・テイラー=ジョイがどんな変貌を見せるのかはちょっと楽しみ。結語が「次回作が楽しみ」となってしまう点では、この作品自体は壮大な予告編とも言えるわけだけれど……。

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Date: 2017.05.15 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (6)

シャマラン最新作 『ヴィジット』 今度は何が出てくるのか?

 『シックス・センス』『アンブレイカブル』などのM・ナイト・シャマランの最新作。
 失敗作が続いてオリジナル作品を作れなくなってしまったようで、『エアベンダー』『アフター・アース』の2作はシャマラン色が薄い作品と思えたけれど、その仕事で稼いだお金で再びシャマラン印の作品へと戻ってきたようだ。制作費が少ないことも幸いして収益の面では大成功だったらしい。

シャマラン 『ヴィジット』 おばあさんはなぜかレベッカにオーブンの掃除をさせたがる。


 ベッカ(オリヴィア・デヨング)とタイラー(エド・オクセンボウルド)のふたりは祖父母の家を初めて訪れる。父親と駆け落ち同然で家を出て以来、ふたりの母親(キャスリン・ハーン)は一度も家には帰らなかったため、ベッカとタイラーも祖父母のことをまったく知らない。母親が彼氏との旅行を楽しむ間、ふたりは初めて会う祖父母と1週間の休暇を過ごすことになる。

 シャマランは『シックス・センス』のオチがあまりに決まってしまったため、その後の作品がいまひとつというのが一般的な印象なのかもしれない。ただ『サイン』みたいな悪ノリ(?)も好きな人も多いわけで、この作品もシャマラン・ファンにはたまらない映画となっているような気もする。個人的には『サイン』の宇宙人を笑いながら楽しめるほどシャマラン・ファンではないのだけれど……。
 予告編ではシャマラン本人が出てきて「あなたはすでに騙されている」などと煽っている。騙されているのは確かで、というのも予告編では「3つの約束」などと出てくるけれど、約束は「夜9時以降は部屋から出ないこと」というものしか登場しない。夕食のシーンすらないのだから、予告編の作り方は反則すれすれとも思える。
 それはともかくとして、シャマラン作品だけに幽霊だとか宇宙人なんかが登場するんじゃないかと勝手に推測し、「THE VISIT」という題名すらも深読みしてしまう。この題名はベッカとタイラーが祖父母の家を訪問することを示しているだけ。ただ、地球を侵略に訪れた宇宙人を描いたテレビドラマ『V』は、「Visitor」の略だったわけでこの作品もそんな類いかと邪推してしまう。

 シャマラン側もそうした観客の期待はわかっているわけで、それを利用している節もある。ベッカとタイラーが駅で祖父母と出会ったときには、ぼんやりした鏡(もしかすると水?)に映る何かを捉えたカットが一瞬だけあったりして、見えない“何か”を意識させるようになっている。
 『ヴィジット』はいわゆるPOV方式で撮られている。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいに登場人物がカメラを抱えて映像を撮影しているという設定だ。だから基本的にはカメラを持つ人の姿は映らない(声は入るけれど)。ベッカが主にカメラを回して、タイラーもサブカメラを回しているのだが、カメラを撮影している人の姿が見えないのが妙に気にかかる。それを撮影している人は本当に存在するのかなんてことも疑い出すことになる。しかもベッカが鏡を見ないことがタイラーに指摘されていて、鏡に映らない存在も推測させないこともない。また、おばあさんの語るおとぎ話のなかには宇宙人が子供を誘拐して、井戸を通してどこかへ送っているといった与太話も含まれる。いったいどんなオチで驚かせてくれるのかとワクワクさせる展開となっている。

シャマラン 『ヴィジット』 鏡を見るとレベッカの後にはおばあさんが……。レベッカは幽霊ではなかったらしい。

 オチを楽しみにしている人も多いと思うのでそれには触れないとしても、かなり怖がらせてくれる作品になっていたと思う。夜9時を過ぎると階下で異様な音が響き、恐る恐るドアを開けて見てみると……。とにかく得体の知れない祖父母の奇行はそれだけで怖いし、唐突な登場の仕方で何度もビクついた。
 屋敷の縁の下でのかくれんぼの場面では、おばあさん(ディアナ・ダナガン)は貞子とか座敷女みたいだった。ゴキブリみたいに這いずり回って怖がらせたおばあさんは高笑いをして去っていくのだけれど、去っていく後姿ではなぜかお尻が丸出しになっているという……。怖いのだけれど、ところどころに笑いが忍ばせてあるのがシャマランらしいところだろう。
 一応、この映画は裏では家族の愛の物語になっている。父親が出て行ったせいでベッカは自尊心を傷つけられ、タイラーは潔癖症になってしまっている。今回の祖父母の家の訪問は、母親と祖父母の関係を探り、家族の問題を解消するためのセラピーみたいなものなのだ。それにしてもタイラーの潔癖症に対するショック療法は凄まじいもので、そっちのほうがかえってトラウマになりそう。

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Date: 2015.10.25 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (1)
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