『かごの中の瞳』 あなたしか見えないって?
監督は『プーと大人になった僕』などのマーク・フォースター。
原題は「All I See Is You」。

目の見えない美しい妻ジーナ(ブレイク・ライヴリー)と、彼女を献身的に支える夫ジェームズ(ジェイソン・クラーク)。ふたりはジェームズの赴任先であるタイのバンコクで満ち足りた生活を送っていた。しかし、ジーナが角膜移植によって視力を取り戻すとちょっと事情が変わってくる。
作品内で詳細な説明はないのだが、ジーナとジェームズが出会ったのは、ジーナが交通事故によって視力を失った後のことらしい。つまりジーナはジェームズの顔を知らずに結婚したということ。だとすればジェームズは最初から角膜移植手術には慎重であってもよさそうな気もするのだが、なぜかジェームズは手術に賛成する。尤もそれはジーナの幸せを願ってのことなのかもしれない。ジェームズは彼女の世話を「自分の特権だ」と言うほど彼女のことを愛してやまないから……。
そしてジーナの手術は成功し、彼女は次第に視力を取り戻していく。これまでと世界が一変するわけだが、ジーナは様々な色に溢れる世界に驚きつつも、久しぶりに見えるようになった世界は想像していたものとは違っていてちょっと失望したりもする。初めて見るはずのジェームズの顔についても、ちょっと想像と違うというだけであまり触れることもない。ジェームズなしでは不便だった日々の生活も自由になり、着飾ってメイクもするようになったジーナは今までとは違う生活を求めていくことになる。
※ 以下、ネタバレもあり! ラストにも触れているので要注意!!

ジェームズという支えがいなければ生活もままならなかったジーナは、視力を回復したことで自由になる。自由になった若くて美しい女性が、やさしいけれど堅物で退屈なジェームズから離れていくことは予想通りの展開だろう。
ジーナはそれまで見えなかった分も楽しみたいという気持ちでいっぱい。それなのにジェームズは彼女のこれまでとは違う行動についていくことができず、彼女が誘ったダンスにも「ダンスなんてバカに見えるじゃないか」と嫌がるのだ。
その後のスペイン旅行ではジーナの姉夫婦たちと再会するが、姉の旦那はどう見ても“バカ”そのもの。この“バカ”というのは、“バカ”になって人生を楽しむことができるという意味であり、ジェームズは堅物すぎてそれができないのだ。ジーナと姉夫婦の3人が覗き部屋で楽しむとき、ジェームズはそれを断るのも“バカ”になれないジェームズの哀しい本性が出ている。
というよりはジェームズこそが真の覗き魔であり、覗きと同じように目が見えないジーナを相手にするのがよかったのであって、ジーナに見られていると萎えてしまうのだ。
そうなるとジェームズは元の状態に戻ることを求めるわけで、ジーナの使う目薬に細工を施すことになる。ラストの展開は様々な解釈があり得るように思えた。ジーナは本当に再び盲目となったのか?
本当に盲目となることを選んだのなら『春琴抄』的な愛の話ともなるのかもしれない。ジーナは原題にもあるように「あなたしか見えない」と歌っていたわけだし……。あるいは盲目のフリをしているだけだったとしたら、「あなたしか見えない」という意味は「お前を見張っているぞ」というメッセージだったのだろうか。私は前者かと思って見ていたのだけれど(ジェームズが恥じ入っているように見えたから)。どちらにしてもジェームズという男のあまりにも情けない姿には、かえってかわいそうになって同情してしまったくらいだった。


原題は「All I See Is You」。

目の見えない美しい妻ジーナ(ブレイク・ライヴリー)と、彼女を献身的に支える夫ジェームズ(ジェイソン・クラーク)。ふたりはジェームズの赴任先であるタイのバンコクで満ち足りた生活を送っていた。しかし、ジーナが角膜移植によって視力を取り戻すとちょっと事情が変わってくる。
作品内で詳細な説明はないのだが、ジーナとジェームズが出会ったのは、ジーナが交通事故によって視力を失った後のことらしい。つまりジーナはジェームズの顔を知らずに結婚したということ。だとすればジェームズは最初から角膜移植手術には慎重であってもよさそうな気もするのだが、なぜかジェームズは手術に賛成する。尤もそれはジーナの幸せを願ってのことなのかもしれない。ジェームズは彼女の世話を「自分の特権だ」と言うほど彼女のことを愛してやまないから……。
そしてジーナの手術は成功し、彼女は次第に視力を取り戻していく。これまでと世界が一変するわけだが、ジーナは様々な色に溢れる世界に驚きつつも、久しぶりに見えるようになった世界は想像していたものとは違っていてちょっと失望したりもする。初めて見るはずのジェームズの顔についても、ちょっと想像と違うというだけであまり触れることもない。ジェームズなしでは不便だった日々の生活も自由になり、着飾ってメイクもするようになったジーナは今までとは違う生活を求めていくことになる。
※ 以下、ネタバレもあり! ラストにも触れているので要注意!!

ジェームズという支えがいなければ生活もままならなかったジーナは、視力を回復したことで自由になる。自由になった若くて美しい女性が、やさしいけれど堅物で退屈なジェームズから離れていくことは予想通りの展開だろう。
ジーナはそれまで見えなかった分も楽しみたいという気持ちでいっぱい。それなのにジェームズは彼女のこれまでとは違う行動についていくことができず、彼女が誘ったダンスにも「ダンスなんてバカに見えるじゃないか」と嫌がるのだ。
その後のスペイン旅行ではジーナの姉夫婦たちと再会するが、姉の旦那はどう見ても“バカ”そのもの。この“バカ”というのは、“バカ”になって人生を楽しむことができるという意味であり、ジェームズは堅物すぎてそれができないのだ。ジーナと姉夫婦の3人が覗き部屋で楽しむとき、ジェームズはそれを断るのも“バカ”になれないジェームズの哀しい本性が出ている。
というよりはジェームズこそが真の覗き魔であり、覗きと同じように目が見えないジーナを相手にするのがよかったのであって、ジーナに見られていると萎えてしまうのだ。
そうなるとジェームズは元の状態に戻ることを求めるわけで、ジーナの使う目薬に細工を施すことになる。ラストの展開は様々な解釈があり得るように思えた。ジーナは本当に再び盲目となったのか?
本当に盲目となることを選んだのなら『春琴抄』的な愛の話ともなるのかもしれない。ジーナは原題にもあるように「あなたしか見えない」と歌っていたわけだし……。あるいは盲目のフリをしているだけだったとしたら、「あなたしか見えない」という意味は「お前を見張っているぞ」というメッセージだったのだろうか。私は前者かと思って見ていたのだけれど(ジェームズが恥じ入っているように見えたから)。どちらにしてもジェームズという男のあまりにも情けない姿には、かえってかわいそうになって同情してしまったくらいだった。
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