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『ファーナス/訣別の朝』 地味だがアメリカを感じさせる作品

 監督は『クレイジー・ハート』のスコット・クーパー
 出演陣はクリスチャン・ベイル、ケイシー・アフレック、ウディ・ハレルソン、ウィレム・デフォー、フォレスト・ウィテカー、ゾーイ・サルダナ、サム・シェパードとなかなか豪華である。
 製作にはレオナルド・ディカプリオや、リドリー・スコットも名前を連ねている。

スコット・クーパー監督作 『ファーナス/訣別の朝』 主演のクリスチャン・ベイル。今回は素の感じで出ている。


 舞台は溶鉱炉(ファーナス)が立ち並ぶ田舎町。そこで働くラッセル(クリスチャン・ベイル)は、イラク戦争から帰ってきた弟ロドニー(ケイシー・アフレック)のことを心配していた。ロドニーは戦争の傷が癒えず、地元のヤクザ者(ウィレム・デフォー)と付き合い借金を負い、賭けボクシングにのめりこんでいた。

 戦争帰りの兵士が社会に融けこめないといったテーマは、これまでにも多くの映画で描かれていて、私は『ディア・ハンター』を思い出した。『ディア・ハンター』ではクリストファー・ウォーケン演じるニックが戦争の傷により破滅していくことになるわけで、『ファーナス/訣別の朝』のロドニーもそうした位置にある。
 ラッセルはファーナスでの仕事を「生きるための仕事」だと語るのだが、ロドニーにはそれが受け入れられない(彼らの父親はその仕事で身体を壊したようだ)。ロドニーは国のためと思ってイラクで身を呈して戦ってきたのだろうが、戦場で見たのは若者たちが無残に死んでいく姿ばかりで、「何のための戦いなのか」という疑問は、社会に戻ってきてもロドニーを箍が外れたような存在にしてしまうのだ。

 ※ 以下、ネタバレもあり。

『ファーナス/訣別の朝』デグロートを演じたウディ・ハレルソン

 ラッセルたちの鹿狩りのシーンと、ロドニーたちがデグロート(ウディ・ハレルソン)のもとで賭けボクシングをするシーンは、交互に編集されている。ここで重ね合わせられているのは、鹿とロドニーだろう。獲物の鹿は肉となって吊るされ、ロドニーはデグロートに始末される。同じころ、鹿を射程圏内に捉えていたラッセルはなぜか撃つのをやめてしまう。これは鹿と重ね合わせられるラッセルに対する後ろめたさからだろうと思う(後ろめたさはラッセルが戦争の犠牲者だから)。
 この映画の時代背景はオバマ政権の前で、ブッシュ政権が起こしたイラク戦争の裏には石油利権が絡んでいるという噂は『ボーリング・フォー・コロンバイン』などにもあった。戦争で傷を負った兵士を食い物にするデクロートのような人物と、それを許せない人物。そんな対立の構図が見えるのだ。
 デグロートは「金と麻薬のためなら何でもやる」ような危険人物とされていて、これはもしかするとアメリカのある側面を象徴しているのかもしれない。戦争に若者を送り込んで、銃後で肥え太っているデグロートのような存在。ラッセルはデグロートを否定するわけだが、結局はロドニーのような犠牲のもとにアメリカは成り立っているのかもしれない(そういえばイエス・キリストの犠牲の話が教会で語られている)。ラッセルはデグロートを殺し復讐を果たすものの、そこにカタルシスなどあるわけもなく、疲弊感ばかりが募る。こんなラッセルの姿もまたアメリカの一側面なのかもしれない。

 交通事故のエピソードなど腑に落ちない部分も多いが、ウディ・ハレルソンとウィレム・デフォーの絡むあたりの危険な雰囲気はよかった(ウディ・ハレルソンが薬をきめてハイになっている場面は、「これからどんな大暴れが」と期待させたけれど意外に呆気なかった)。曇天ばかりの町の風景を捉えたカメラもよかったと思う(撮影はマサノブ・タカヤナギというから日本人なのだろう)。ただ、全体的にはとても地味な映画で、思い入れたっぷりに描かれるラストも予想通りに展開するばかりで驚きがあるわけではなかった。
 ラストのパール・ジャムの曲「Release」は、ヴォーカル・パートを新しく録音し直したということで、聴き応えがあった(冒頭で使われたアルバム・ヴァージョンとの違いは、正直わからなかったけれど)。アメリカを代表するバンドがラストを飾るという意味でもアメリカを感じさせる作品である。

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Date: 2014.10.05 Category: 外国映画 Comments (0) Trackbacks (6)
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