『新感染 ファイナル・エクスプレス』 韓国発ゾンビ映画に震撼せん
監督のヨン・サンホはアニメ畑の人らしいのだが、今回が初の実写作品。
9月30日からはこの作品の前日譚となるアニメ作品『ソウル・ステーション パンデミック』も公開されるとのこと。
評判の悪い邦題はダジャレだが、原題は「Train to Busan(釜山行き)」というもの。
主演には『トガニ』『男と女』などのコン・ユ。共演にはやはり『トガニ』に出ていたチョン・ユミ。そのほかでは身体を張った闘いを見せることになるマ・ドンソク(『殺されたミンジュ』など)がいい味を出している。前にもプロレスラーの川田利明に似ていると書いたけれど、マ・ドンソク自身もボディビルをやっていた人らしく、道理でガタイがいいわけである。

釜山へと向かう超特急列車のなかにゾンビが入り込み、密室となる列車のなかでゾンビが増殖していくというパニックムービー。たった一人の感染者からゾンビがゾンビを生むという事態となり、密室空間である列車のなかは壮絶な様相を呈することになる。この作品のゾンビたちはスピードがあり、ほとんど人間と変わらぬ全速力で襲ってくる。人間たちも必死になって逃げようとはするものの、ほとんど逃げ場がないのが恐ろしいところ。
ただ、列車は車両ごとに区切ることができるからゾンビと人間はつかの間住み分けることができるし、トンネルに入って暗闇が支配すると、ゾンビは見えないものの存在をすっかり忘れてしまうらしく、しばらくは安全地帯となる。
同じ韓国映画の『スノーピアサー』はゾンビは出てこないけれど列車という空間を階級社会に見立てた作品となっていて、生きるために敵のなかを突き進まなければならないところが似ている。『新感染 ファイナル・エクスプレス』は列車という密室をうまく使ってハラハラドキドキを最後まで持続させていく。
しかもこの作品では銃が活躍する場面がない。昨年評判のよかった日本のゾンビ映画『アイアムアヒーロー』では、趣味が射撃という無理な設定をしてまで主人公に銃を持たせていた。というのも銃がなければゾンビを止める手段がないからだろう。『新感染』では野球部の青年はバットを使ったりもするけれど、ほとんど徒手空拳でゾンビたちを相手にしなければならないわけで絶望的な状況が続いていくことになる。

監督のヨン・サンホが「『ザ・ロード』のような、滅亡していく世界での中での親子の関係を描きたい」と語っているように、この作品はゾンビ映画でありながら父と娘の関係を描く感動作ともなっている。
主人公のファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)は生き馬の目を抜くような業界で生きているからか、自分のことだけしか考えない。密室でのゾンビ発生という極限状態のなかでも他人に気づかいを見せる娘スアン(キム・スアン)には、人を蹴落としてでも生き延びることを教えようとするソグだったのだが、ゾンビと闘ううちにソグ自身が娘のため人のために生きることを学んでいくことになる。
ラストでスアンが父のために覚えた歌を披露することになるのは、この壮絶な旅路で父親の存在をしっかりと確認することができたからだろう。まさかゾンビ映画で泣けるとは思っていなかったけれど感動的なラストだった。
町山智浩によれば、ソウルを制圧したゾンビ軍が釜山へと押し寄せていく本作は「朝鮮戦争勃発時の北朝鮮軍の侵略の悪夢をベースにして」いるとのこと。また、車両のドアひとつで人間とゾンビとに分断され、反対側に生き別れた家族の姿を見つけるという場面あたりにも、韓国の政治状況なんかが垣間見えるのかもしれない。
とはいえそんなことは考えなくても抜群のエンターテインメント作となっているのは間違いない。走り出した列車に上に架かる駅舎からゾンビたちがボロボロと落下して襲いかかってくるとか、笑ってしまうほどのゾンビの大群とか、ひたすらに憎たらしいバス会社の重役とか、描写も極端なほどに徹底している。追われる側の人間たちの絶望的状況たるも凄まじいもので、韓国映画のエネルギッシュなところがいい方に作用して見どころ満載の作品となっていたと思う。




9月30日からはこの作品の前日譚となるアニメ作品『ソウル・ステーション パンデミック』も公開されるとのこと。
評判の悪い邦題はダジャレだが、原題は「Train to Busan(釜山行き)」というもの。
主演には『トガニ』『男と女』などのコン・ユ。共演にはやはり『トガニ』に出ていたチョン・ユミ。そのほかでは身体を張った闘いを見せることになるマ・ドンソク(『殺されたミンジュ』など)がいい味を出している。前にもプロレスラーの川田利明に似ていると書いたけれど、マ・ドンソク自身もボディビルをやっていた人らしく、道理でガタイがいいわけである。

釜山へと向かう超特急列車のなかにゾンビが入り込み、密室となる列車のなかでゾンビが増殖していくというパニックムービー。たった一人の感染者からゾンビがゾンビを生むという事態となり、密室空間である列車のなかは壮絶な様相を呈することになる。この作品のゾンビたちはスピードがあり、ほとんど人間と変わらぬ全速力で襲ってくる。人間たちも必死になって逃げようとはするものの、ほとんど逃げ場がないのが恐ろしいところ。
ただ、列車は車両ごとに区切ることができるからゾンビと人間はつかの間住み分けることができるし、トンネルに入って暗闇が支配すると、ゾンビは見えないものの存在をすっかり忘れてしまうらしく、しばらくは安全地帯となる。
同じ韓国映画の『スノーピアサー』はゾンビは出てこないけれど列車という空間を階級社会に見立てた作品となっていて、生きるために敵のなかを突き進まなければならないところが似ている。『新感染 ファイナル・エクスプレス』は列車という密室をうまく使ってハラハラドキドキを最後まで持続させていく。
しかもこの作品では銃が活躍する場面がない。昨年評判のよかった日本のゾンビ映画『アイアムアヒーロー』では、趣味が射撃という無理な設定をしてまで主人公に銃を持たせていた。というのも銃がなければゾンビを止める手段がないからだろう。『新感染』では野球部の青年はバットを使ったりもするけれど、ほとんど徒手空拳でゾンビたちを相手にしなければならないわけで絶望的な状況が続いていくことになる。

監督のヨン・サンホが「『ザ・ロード』のような、滅亡していく世界での中での親子の関係を描きたい」と語っているように、この作品はゾンビ映画でありながら父と娘の関係を描く感動作ともなっている。
主人公のファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)は生き馬の目を抜くような業界で生きているからか、自分のことだけしか考えない。密室でのゾンビ発生という極限状態のなかでも他人に気づかいを見せる娘スアン(キム・スアン)には、人を蹴落としてでも生き延びることを教えようとするソグだったのだが、ゾンビと闘ううちにソグ自身が娘のため人のために生きることを学んでいくことになる。
ラストでスアンが父のために覚えた歌を披露することになるのは、この壮絶な旅路で父親の存在をしっかりと確認することができたからだろう。まさかゾンビ映画で泣けるとは思っていなかったけれど感動的なラストだった。
町山智浩によれば、ソウルを制圧したゾンビ軍が釜山へと押し寄せていく本作は「朝鮮戦争勃発時の北朝鮮軍の侵略の悪夢をベースにして」いるとのこと。また、車両のドアひとつで人間とゾンビとに分断され、反対側に生き別れた家族の姿を見つけるという場面あたりにも、韓国の政治状況なんかが垣間見えるのかもしれない。
とはいえそんなことは考えなくても抜群のエンターテインメント作となっているのは間違いない。走り出した列車に上に架かる駅舎からゾンビたちがボロボロと落下して襲いかかってくるとか、笑ってしまうほどのゾンビの大群とか、ひたすらに憎たらしいバス会社の重役とか、描写も極端なほどに徹底している。追われる側の人間たちの絶望的状況たるも凄まじいもので、韓国映画のエネルギッシュなところがいい方に作用して見どころ満載の作品となっていたと思う。
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